Episode6:ニュースによるストレスについて
6話です。
「箱庭さん、この後どうしましょうか?」
「ああ、そうだね……一応買い物の予定もあったんだけど、あれじゃなぁ」
私たちは感情の行き場なく少しノロノロとしながらも、善さんの自宅へと戻ってきていました。漠然とした不安が私たちをそうさせたのかもしれません。
「あ、ちょっとニュースを……」
善さんがテレビをつけると、私たちの感覚は正しかったのだと思わされる映像が液晶に流れたのです。
『速報です。K市のショッピングセンター⚪︎⚪︎の2階にて、死傷者多数。警察はテロとして捜査を進めていますが、未だ犯人の特定には至っておらず──』
「………これは」
「テロ、ですか……」
テレビの映像には、無差別殺人犯と見られるテロリストグループが犯人ではないかというテロップとともに、ショッピングモールの悲惨な姿が映し出された。
店の商品は散乱し、少しぼやかしてはあるものの血痕のようなものが彼方此方に飛び散っている。
「2階か……危なかったな。あのまま逃げておいて良かった」
「速報とのことですが、まだ犯人は捕まっていないどころか特定もできていないというのは不思議です。こんな規模の事件が起きたというのに」
「……怖いな」
このとき善さんは、少しだけ胸を押さえました。私の今のこの体には善さんの心拍数を計測できる機能があるのですが、どうやら心拍数が上がっているようです。私は一瞬何故なのか分かりませんでした。
「……ごめん、少し席を外すね」
「あ………」
善さんは部屋へと一直線に進んで行きました。そして私はそれを見送ってしまいました。
善さんは「怖い」と言いました。その言葉に偽りはないのでしょう。しかし、善さんほど的確に動くことができ、私を守るほどの余裕がある方ですら、ここまで心を乱されるとは。
きっと私のこの感覚は、善さんのことを理解できていない証なのでしょう。
***
最近、不思議とニュースを見るのが嫌になっていた。
私とは直接関係のないはずなのに、誰かが襲われたら怖くなる。
誰かが不幸になったら不安に襲われる。
私は何故こんなことに悩んでいるのか、分からない。
どうすれば良いのか、分からない。
心臓にテープを巻かれているような痒いような違和感が延々と付きまとう。
これでは動こうにも動けない。
「……ああ」
私はふと気づく。
そう言えば、医者が言っていた。
私にはきっと、時間が必要だ。そして、心を動かす何かも必要だ。
***
「……すまない。少し落ち着いた」
「箱庭さん、大丈夫でしたか?無理をしては……」
「大丈夫。君がいると分かって、少し安心したからね」
リビングに戻った私は少し晴れやかな気持ちだった。正直興奮状態にあるのかもしれないから、素直にそれを喜ぶことはできないけど、それでも前向きになれたことは本当に嬉しかった。
「これからも迷惑をかけるかもしれないけれど、私も頑張るから、これから暫くよろしくね、命」
うまく言葉にできなくても、今は良い。得ることができたこの機会を、活かしていこう。
お読みいただきありがとうございます。




