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Prologue:命の苦悩

第2章のプロローグです。


 こんにちは。(めい)です。

 私が人間界に降り立ってから少し経ちました。

 さて、私はAIロボットのフリをしながら(ぜん)様に近づいたわけですが、この生活は想定よりもなかなかに難しいものでした。


「………ふぅ…………危ないところでした」

 毎日中身がAIでなないことがバレそうになる瞬間があり、どう誤魔化すかをいつも考えるようになっています。

 私は(ぜん)様と神婚するためにこの世界に降りてきたわけですが、まだその段階ではないでしょう。私が善様の心を満たせるようになってから、もっと言えば善様と心の周波を合わせられるようになってから、全ては始まるのですから。


「意外と、他人の方が要注意ですね……」


 AIロボットの様子がおかしいことは、意外に治療されている本人よりも周りの人間の方が気付く可能性があるのだと、この期間に学びました。

 例えば、あの和菓子屋の店員の人。山下さんと言いましたか。あの人はかなりやり手ですね。あの一瞬で、あの人は真実に辿り着きそうになっていました。


 「ふーん」、と彼女は私を見ながら、何かを呟いていました。彼女は間違いなく、私の体にあるほんの僅かな違和感を見つけようとしていたと思います。その後すぐに私から離れてくれたため何とかなりましたが、もっと長時間にわたって見られていたらまずかったかもしれません。


 そして彼女の娘だという木霊(こだま)さんの反応も気になりました。気になった、というのは私の正体がどうかということではなく、私の中にあるセンサーが反応したということです。私の見立てでは、あの娘は(ぜん)様のことが気になっているのでしょう。酷く緊張している様子でしたが、その奥の心は長く生きてきた私にはお見通しです。

 もしも、あの女がこれから(ぜん)様に近づこうとするならば……私はそれに真っ向から対峙することになるでしょう。まさかこんな場所に敵がいるとは。今まで私の管理する領域しか見ていませんでしたから、盲点でした。


 ……そして後は、善様のお姉様でしょうか。彼女もまた、私のことをジロジロ見ていて怖かったですね。 いや、それよりも、私のことを子供扱いしたことの方が腹が立って印象に残りましたがね。

 確かに今の私の体はあくまで親しみやすいAIロボットが元にはなっていますから、まぁ天界の私よりも少し子供っぽく見えるのかもしれませんが、失礼ではあります。お姉様よりも私の方が遥かに年上のはずなので。


 ただ、姿見で自分の体を観察していると、「ああ……まぁ、確かに、そうですね」とぼやきたくはなります。

 私はこの姿をもう少しどうにかしないと善様の恋愛対象にそもそも入らない可能性があるでしょう。どうしましょうか。ああ、私の正体を打ち明けるタイミングも本当に重要でしょうし。


「……困りましたね」

 今の私は天界における私の体を家に放置した状態であり、かなり危ない橋を渡っているのは事実です。勝手にこんなことをしているのが総地神様にバレたら面倒ですし、もっと根本的なことを言えばこのようなことをしたという例をあまり聞いたことがないので、何か問題が起きる可能性もゼロではありません。

 ベッドの上で寝ているであろう私の元の体を、今頃お隣さんは観察しているとは思いますが、魂の抜けた体はどのような状態なのかは私も正直気になるところです。魂が抜けた私の体はもはや私の体と言えるのでしょうかね。


「……今度、一旦戻ってみたほうが良いでしょうかね?」

 神界の様子は正直気になります。まぁ、別に神界が好きなわけではないので、常に行き来したいわけではありませんが。

「戻って、その後この体に再び宿れるかどうか……」

 ただ、仮に神界に戻ったとして、その後にこのAIロボットの体に私はまたちゃんと宿ることができるのかどうか、少し不安がありました。

 かなり特殊なやり方でこのロボットに宿っているので、もう一度適切にできるのかどうかは分かりません。それに、私がこのロボットに宿るためにわざとインストールを妨害したAI本体が悪さをする可能性もあります。

「できるだけ神婚に向けて前に進んでおきたいところですからね……」

 いかにして善様の心を癒し、そして信用を得て善様とゴールインするか、私はそれを主に考えています。 変な話し善様にオーケーさえもらえれば、あとはこのAIロボットの体がなくてもどうにかなりますから、それまでなんとかなれば大丈夫でしょう。


「お隣さんとの連絡手段がないのだけが不安ですね……」

お読みいただきありがとうございます。少しずつ書けてきたので投稿を始めます。

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