28 アーチボルト・サマセット子爵令息事件 6
いつもありがとうございます!
今回はこの時代だからこそのドキドキを感じて頂ければと思います!
お楽しみ下さい!
「アリス……アリス。行かないでくれ。ずっと、僕のそばに……」
熱にうなされた掠れ声でそう呟くと、ノアはアリスの手を愛おしそうに両手で包み込んだ。
そして——彼女の白い手の甲に、そっと熱い唇を寄せた。一度だけではない。愛おしさを噛みしめるように何度も、何度も。
「……っ!?」
それだけでもアリスの息が止まりかけたというのに、ノアの行いはそこで終わらなかった。
ノアはアリスの手をゆっくりと返し、無防備に晒された手のひらの中心に、深く熱い口づけを落としたのだ。さらには、熱い息を吐き出しながら脈打つ手首にまで、すがるように何度も唇を押し当てていく。
「ん……っ、ノ、ノア……っ!?」
(こ、これって……っ!!?)
アリスの全身が雷に打たれたように硬直した。
言葉が出ない。喉が引きつり、口をパクパクと開閉させることしかできない。顔中に一気に血が上り、髪の生え際から耳の先まで、火がついたように真っ赤に染まっていく。
淑女の素手に、ましてや手のひらや手首にまで何度も唇を重ねる行為が何を意味するか——それが「ただのビジネスパートナー」に対するものでないことくらい、世情に疎いアリスでも火を見るより明らかだった。
(ノア……あなた……っ!?)
アリスのパニックを余所に、ノアはアリスの手に額を押し当てると、彼女の匂いと体温に心から安心したように、長いつむじ風のような吐息を漏らした。
「……アリス……」
最後にもう一度、彼女の手のひらに愛おしそうに唇を寄せると、ノアは彼女の手をしっかりと自分の胸元で抱きしめたまま、すーすーと静かな寝息を立て始めたのだった。
「……っ、……っ」
手を引き抜くこともできず、真っ赤な顔のままベッドの脇で石のように固まるアリス。
(……ズ、ズルい。ズルすぎるわ、ノア……!)
熱に浮かされた彼の無防備な寝顔と、自分の手首に残る熱い感触を見つめながら、アリスは激しく打ち鳴る胸を押さえることしかできなかった。
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