↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
17/51

17 夢の終わり 1

いつもありがとうございます!


今回は、事件の合間、二人の関係に変化が?!


お楽しみください!

事件の騒動も落ち着いた、舞踏会の翌日。


事件の手がかりや調香師の資料を整理するため、アリスはノアの事務所兼自宅の執務室を訪れていた。

ノアが所用で席を外している間、ふとアリスはデスクの端に置かれた「異物」に目を留めた。


それは、厚みのある高級な紙に挟まれた何枚もの肖像写真。執事のバロウズがそっと置いて行ったであろう、名門貴族の令嬢たちの『お見合い写真』と身元調書の山だった。


「……そっか…」


写真に写る、気品あふれる美しい貴族のお嬢様たち。普段は目の下にクマを作り、平民の自分にも分け隔てなく接してくれるが、ノアは歴史あるカーライル侯爵家の人間だ。


正装した舞踏会での姿も、所作も、堂々としていて美しかった。下町で泥に塗れて働く平民の花屋が、いつまでも彼の隣にいていいはずがない。いつかは、この写真の中にいる本物のお姫様と結婚して、綺麗なお屋敷で暮らすのだ。


わかっていた。最初から、住む世界が違いすぎるのだと。


でも——昨日の舞踏会でも、ノアは私の靴擦れに誰よりも早く気づいて手当てをしてくれた。普段は余計な運動なんて一切しないインドア派なのに、私を探すために息を乱して爆速で地下まで追いかけてきてくれた。


相棒として過ごした、夢のような時間。


パニックの渦中でも決して私を放っておかず、私をお姫様みたいに特別扱いして、誰よりも大切にしてくれた。自分に対する特別な優しさがひしひしと伝わっていたからこそ、目の前にある現実が、刃物のように胸に刺さる。


(もう、十分だよね……。これ以上望んだら、神様に怒られちゃう)


溢れそうになる涙をグッと堪え、アリスは深く息を吸い込んだ。この温かい思い出を、熱い想いを抱え込んでいるのはもう限界だった。


お側にいたいなんて我が儘は言わない。貴族の奥様になれるなんて思っていない。ただ、自分の気持ちを伝えたい。ノアがくれたたくさんの優しさに、自分の本当の気持ちを添えてお礼が言いたかったのだ。アリスは、実に度胸のある下町の淑女だった。


廊下から静かな足音が聞こえ、ノアが書斎に戻ってきた。


「……アリス? 資料の整理は終わったのか」


「ノア」


アリスがいつにない真面目な声で名前を呼ぶと、ノアは不思議そうに眼鏡の位置を直した。


「ノア、あのね、聞いてほしい事があって…」


「? なんだ?」


アリスは至極不思議そうに自分を見るノアの前に歩み寄り、逃げずにその真っ直ぐで澄んだ青い瞳を見つめた。エプロンをギュッと掴み、意を決して言葉を紡ぐ。


「あのね、私ね……自分が貴族と結婚できるなんて、これっぽっちも思ってないよ。ノアがカーライル侯爵家のお方で、いつか素敵なお姫様と結婚するんだってことも、ちゃんと分かってる」


「……何の話をしている。論理性を欠いている」


話が見えないノアは首を傾げる。


「うまく言えなくてごめん……。その、ノアはいつも私のこと『構造体』とか『相棒』って言うけど、本当は誰よりも優しくて。昨日の舞踏会だって、私の靴擦れに気づいてくれて……運動が苦手なのに、私を追って必死で走ってきてくれて、私をお姫様みたいに大切にしてくれた」


少し言葉が震えてしまう。でも口元には精一杯の感謝を込めた、一番の笑顔を浮かべる。


「私を大切にしてくれて、本当にありがとう。……私ね、ノアのことが好きなの。ずっと、ずっと大好きだったよ」


静まり返る書斎。


ついに口から飛び出した、最初で最後の一世一代の告白。


届いてほしい。私を『特別』にしてくれた、大好きな人へ——。



最後までお読みいただきありがとうございました。


続きが気になる!と思ってくださったら、評価やブクマで応援していただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。