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第54話 聖職者の才能がベビーシッターなら、もっと拍手されるべきじゃない?

「一つ聞きたいことがあるの。

私の仲間二人、間抜けな蛟人族と、

虎の魔獣はどうしたの?」


私はとても冷静な声で言う。

手の中の法杖を振ると、低く震える音がした。


「無事だ。

蛟人族は魔力を吸いすぎると、体が耐えきれず眠る。

魔獣は逆だ。

周囲の気功を遮れば、すぐ素直に夢の中だ。」


白爪の体が、ずっと震えている。

黒牙は何度も、それをなだめていた。


私はすぐに、蓄気石を数個取り出す。

鎖で束ねて、二人の前に見せつけた。


これで脅せるかも。

数値改変を解かなくても、

長松のものを、取り返せる?


「蓄気石を食らえば、傷つくのはわかってる。

そんなに慌ててるなら、なおさらでしょ。


大怪我したくないなら、長松のものを返して、

そのまま消えて。」


「大怪我?

せいぜい少し、具合が悪くなる程度だ。」


黒牙は、見くびるなと言いたげな、

呆れた顔をした。


それでも手を伸ばし、隣の白爪の背を、

撫で続けている。


「お前、臣の子に何をした?

こいつ、お前を、

ものすごく怖がってる……。」


黒牙は呆れた顔をした。

見くびられて困る、そんな顔だった。


けれど彼は手を伸ばし、隣の白爪の背を、

何度も撫でていた。


でも白爪の体は、どうしてあんなに震えてるの?


「お前、臣の子に何をした?

こいつ、お前を、ものすごく怖がってる。」


怖がってる?

私を?


私は戸惑いながら、蓄気石を一つ投げた。


黒牙は避けなかった。

代わりにギターみたいな、

魔武器を取り出し、一瞬で横へ弾いた。


「子?」


「そうだ。

臣が益公の身分だった時、前ギルド長のバツ狩犁と、

魔力を交えて生まれた。


臣もこんなに怯える姿は、初めて見た。」


黒牙はそのまま、白爪の頭を撫で続ける。

私はその言葉に、内心かなり動揺した。


でも今はまず、目の前の危機を、

処理しないといけない。


「だから臣は、親の立場で、

子の成長を見ている。

特に長松は、まだあまりに幼い。」


「嘘つかないでよ。

前ギルド長のバツ狩犁と、子供を作ったって?

でもあなた、見た目は完全に、オジサンじゃない。


前会長、

変だと思わなかったの?」


最悪だ。

どうして私は、こんな場面で、

そんなことを聞くの?


でも黒牙は、ただ静かに、

少し笑った。




「愛は偉大なのだ!」





だめだ。

変な好奇心のせいで、頭が痛い。

これでちゃんと戦えるか、自信がなくなってきた。


「お前たちの子供なら、

傷つけるのもよくないでしょ?

あなたが傷つけば、その子も悲しむし……。」


私は黒牙の手にある、ギターの魔道具を見た。


もし音を操るなら、

音波でも、催眠の法陣でもありえる。


この環境なら、風の精霊を動かしやすい。


音の伝達を遮るのも、そこまで難しくない。


だけど黒牙の顔は、明らかに余裕だった。

さっきもあいつは、あのギターで、

蓄気石を叩き落とした。


まさか。

戦い方の理屈まで、


私と同じで、常識外れなの?


見た目は賢者なのに、法杖で魔獣を殴る。

そういう意表を突く型。

黒牙も、そういうタイプ?


私は警戒して、距離を保った。

でも黒牙は、その場から動かず、

だらだら雑談するだけ。


正直、すごく苛立つ。


「だから私も、あなたと争いたくない。

私たち、同じギルドの、仲間でもあるでしょ。

長松を返して。

それに、その顔は怖すぎる。

白爪がここまで怯えるなら、

長松が離れられない理由も、やっとわかった。」


黒牙は白爪の顔に、耳を寄せた。

それから険しい顔で、私を見た。


顔が怖い?


私は慌てて、さっきのことを思い返す。


長松を取り戻すため、私はさっき、

数値調整を使った。


相手の感情を読む数値を、一時的に上げたはず。

そうすれば一瞬で、細かな動きが見える。

相手の行動も、予測しやすくなる。


私は面板を開き、もう一度数値を見た。



他人の感情感知   32

恐怖を与える    28

強く好かれる    20

……


その瞬間、困った顔の私の前に、

太清君の姿が浮かぶ。


聖職者って、優しくあるべきでは?

人を怖がらせる訓練って、だいぶおかしくない?


そんな私に太清君は、真面目な顔で、

戦い方を教えてくれた。


「玉秀よ。

威厳ある顔も必要だ。

お前はもう、強化術で相手を打つ術を、

覚えておる。


だが戦わずに屈服させれば、魔力を温存できる。


そのほうが継戦能力も、上がるのだ。」


まさか。

威厳ある人って、普通は五十くらい?

私は恐怖を与える数値を、百に戻した。


そのまま二人を見ると、

黒牙は手のギターを、握ったまま、ふらついた。


「わ、うわっ、うぅ!」


白爪は悲鳴を上げた。

黒牙を振りほどき、一番近い海梅樹の後ろへ、

猛然と走って隠れた。


「黑幕森林から来た雷獸牙め。

臣が必ず討伐して、長松と皆に自由を返す!」


黒牙は震える声を抑え、ギターの魔道具の先を、

私へ向けた。


雷獣牙は、黒幕の森にいる、

凶悪な魔獣だと。

たしか伝承で、そう語られていた。


正直に言うと。


聖職者として、私の心はもう傷つきすぎて、

逆にすごく静かだった。


でもこんな厄介ごとを、ちゃんと鎮圧できたなら。

私、かなり拍手を、もらえていいよね?


「長松の身分を、返してください。」


「来るな、雷獸牙!」


私はまだ一歩も、踏み出していない。

それなのに黒牙は、完全に取り乱していて、

話が通じる状態じゃない。


これじゃ、何も処理できない。


私は急いで、

数値を元の三十へ戻した。


「今のは何だ……?

臣、悪夢でも見たのか……。」


黒牙の表情は、ようやく元に戻った。

けれど警戒は解かず、ギターを私へ向けていた。


「もう話すことはない。

さっき臣に、幻覚まで使ったな。

臣はお前なら......、


話が通じると思っていた!」


黒牙は真剣な顔をした。

考えは私と同じだ。

相手を倒して、欲しいものを吐かせる。


それを聞いた私は、すぐ魔力を巡らせる。

そして風の加護を、自分にかけた。


「ガン!」


「ガン! ガン!」


黒牙は歯を食いしばる。

ギターと私の法杖が、

高速でぶつかり合った。


私は素早く詠唱し、次の瞬間。

法杖に力の加護を、重ねて乗せる。


「ガン!」


私は黒牙のギターを、大きく弾き飛ばした。

その隙に小さな蓄気石を、一つ投げつける。


そしてすぐ後ろへ下がる。

蓄気石は青く光り、小さな爆発を起こした。


光が消えた時には、

私も黒牙も、爆発地点から離れていた。


でも黒牙は息をつき、肩には黒い痕が残る。


どうやら蓄気石は、起爆して使っても、

かなり有効みたいだ。

作者コメント:私も気になる。

あの、ものすごく恐ろしい感じって、実際どんなものなんだろう?


そりゃ泰勇も、玉秀の言うことを、

びくびくしながら、素直に聞くわけだ。

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