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第38話 天国と小さな天使の長松

ご覧いただき、本当にありがとうございます。

予約時間を間違えて設定してしまい、急きょ変更しました。

今後はだいたい1日に1~2話のペースで投稿します。申し訳ありません。

ブックマークに入れてくださった読者の皆さんも、ありがとうございます。

さらに私を苛立たせたのは、泰勇の隣に、見慣れすぎた奴が立っていた。

目をきらきらさせて、私を見ている。


「天国って、なに?」


頭巾を巻いた黒い跳ねた短髪。

二十代くらいで、顔つきは凶悪で高慢そう。

でも左手は陶器みたいに白くて、その手で口元を隠しながら、子どもみたいな声で聞いてくる。


泰勇はからっと笑って、輪郭のはっきりした胸筋を叩いた。

灰色の鱗がきらりと光る。


「長松、『天国』は最高の場所だぞ!

四季はずっと春みたいで、土は肥えてて、海は透き通る青だ!

そこで安心して暮らせるし、危険もない!

会いたい人にも会えるんだ!

心が善ければ行けるし、食われても向こうで生き返れるぞ!」


「じゃあ、長松が食べられても行ける?」


「長松、そんな話を信じないで!」


私は思わず声を上げた。


私は、泰勇は思っていたよりずっと長く生きているのかもしれない、と感じた。

あの出来事は、もう「歴史資料」になっている。


蛟人が狩られていた記録を調べても、百年前にはそういう言い伝えは途絶えている。


それなのに。


私を一番頭痛くさせているのは、

その隣に立つ夢魅族の長松が、期待に満ちた顔で私を見ていることだ。


まるでそこに、幸せへ続く入口が本当にあると信じているみたいに。


「でも主人、俺たち一族の血肉に『回春』の効果はないぞ。

あの秘方は間違いだ。泰勇は嘘が嫌いだ!

でも味が悪くないのは本当だ!」


泰勇は自信満々に胸を張る。


……全裸で桶のそばに立っていなければ、まだ良かったのに。


どう見ても怪しいおじさんだ。

しかも発言が全部物騒。


私の聖職者イメージが音を立てて崩れていく。

本気で風の精霊に命じて、口を閉じさせようかと思った。


光の精霊で姿ごと隠してしまえば、

声が出ないことに気づいて余計なことをする前に済むのに……。


「どうしてみんなここにいるの?」


複数の精霊を同時に維持するのは面倒だ。


私はにこやかに笑って、展開していた精霊を回収した。


「お腹すいたから!

泰勇は自分を食べてもいいって言ったけど、

長松は玉秀が“正体の分からないものは食べるな”って言ってたの覚えてる。

だから玉秀の魔力の痕跡を追ってきた」


……そこで、


私はようやく気づいた。

昨日、長松が“十四日だよ”って言った意味を。


もう月の半ば。

私は食材を新鮮に保つため、定期的に在庫を全部処分している。


つまり今、うちの食糧庫は

空だ。


でも、少し困惑している。


私は野外では必ず魔力の痕跡を消すようにしている。

位置を特定されないための基本だ。

ヘフィスに教わった方法で、きちんと消しているはず。


それなのに、長松は追ってこられた。


……夢魅族だから?


抹消した痕跡でも見抜けるのかもしれない。

前に、長松は玉秀を尾行したことがある。


私は少し考え込む。


……別の方法を考えないと。


幸い、長松は素直だ。


もし私の借家で事件なんて起きて、

蛟人族に殺人犯扱いされて追われることになったら。




たとえ泰勇が天国に行ったとしても、私が引きずり戻してきっちり「教育」する。




私は多義をちらっと見た。

彼は目を見開いて、ぼうっと私を見ている。

さっきの会話、全部きっちり聞いていた顔だ。

……まずい。


聖職者のイメージが崩壊した。


「安心して、多義、私は……」


私は必死に、慈愛と温柔を込めた笑顔を作る。

今の私はきっと、背後に聖光が差す天使みたいな姿のはず。


「今はまだ無理!」


ああ、やっぱり誤解してる!

でも、その一言で胸の重石がすっと軽くなった。

多義はまだ若い。


あの恐ろしい蛟人の歴史に染まっていない。

それだけで、十分救いだと思った。


「多義兄さん、天国に行きたくないの?」


泰勇は、営業に失敗した人みたいな顔をしている。

私はすぐに泰勇の腕をつかんで、横へ引っ張った。


多義と長松に背を向ける。


「玉秀主人、本個体を呼んだということはまさか……

うぅ! 本個体は何も言わない! うぅ!」


泰勇は小さく甘い声を出して、素直に口を押さえた。


「まずは太清君主人のことを終わらせないと。

それが終わらないと天国には行けないよ。

玉秀大人はすごいから、その時はまたお願いします!」


振り向くと、多義は無邪気に笑っていた。


脱皮したばかりの柔らかい若い手で、そっと私の手を握る。


……何も言えない。


私はただ、横目で「にこやかに」泰勇を見る。

泰勇は口を押さえたまま、こくこくとうなずいた。


でも、ひとつ違和感に気づいた。

泰勇が多義を「兄さん」と呼んだ?

蛟人族は、たしか上下関係をかなり重んじる種族だ。


年長者への呼び方を、適当にするはずがない。

私は多義の顔を見る。

青年らしい整った顔立ち。


脱皮したばかりの肌は張りがあって、目も澄んでいる。

この種族がとても好きです。

純真で率直で、少しだけ抜けているところもあります。

読者の皆さんにも気に入ってもらえたら嬉しいです。

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