第20話 『壁の偽ヒーロー』⑧
とあるゲームのとあるMODパックを遊んでいたら投稿遅れました。
おのれGreg
オーウェンに救い出され家に戻り、コートを脱いでソファにドサッと座り込む。
「目撃情報通りの見た目だったね。」
「アウル、逃げる時にあんな捨て台詞言ってたけどあれ演技でしょ?」
「ん?まぁ演技って言われたらそうだな、半分くらい本心だけど
最後に俺が言ったあの台詞、カルマーからすればただの負け惜しみにしか聞こえないだろう。実際負け惜しみだし。
「まず俺はカルマー、あぁ『壁の偽ヒーロー』の名前ね?に3つ、ブラフを仕込んだ」
「1つは能力。俺の固有能力は糸を出して操る事だけど今回俺はほぼ質量ブッパしかしてない。細かく操れることは分からないはずだ。」
「2つ目は能力の出力。1回のブッパ以降俺は能力を小出しにしてた。多分向こうからは能力の出力はそう多くないと判断できる。」
「なるほど…であと1つは?」
「3つ目、これは上手くいってるか分からないけど魔力。あの追い込まれてる状況で魔法を使わない事、そこに違和感を感じてくれたら多分携帯眷属は気づかれてない、と思う。」
正直最後のは不安だ。思ったより余裕がなかったからその辺の演技はあまりできてない。
こんな事初めてで割とガタガタだがブラフにはなってると思う。というかなっててくれないと困る。
そんな曖昧なブラフに若干不安を感じているとオーウェンはメモを取り出していた。
「上手くいってるといいけど…それとなにか収穫はあったらしいけど何があったの?ブラべ協会長に伝えるためにメモするから」
「そうだね、まずは共犯者の確認が出来た。アロハシャツを着たマッチョマン、タトゥーまみれだったけど目立つところに錠前型のタトゥーが見えた。そのマッチョマンは精肉店から出てきた」
「アロハシャツに錠前のタトゥー、それが精肉店から出てきたと…それ以外にもある?」
「うん、まずカルマーは能力発動時に頭の角が光る。光った後に血が動いてた。」
「あと血を固めて剣を作った後ちょっとだけ角の大きさが小さくなってた。多分あの角は血のストックか何かだと思う。」
「血を操る、血のストック…とよし。すごいね、よくあの短時間で手がかりになりそうなものをこんなにも持ってこれたよ」
「そう思う?正直俺もすごいと思ってる」
あの短時間で結構核心に近付けそうな情報を持って帰れたのは自慢できる、と思う。
ダメだ、慣れない戦闘で疲れたせいでテンションがおかしな事になってる。冷静になろう。
「うんすごいよ、本当に……他にもある?」
「う〜んブラベさんに伝えれる内容はこれくらいかな。あと収穫と言うか気づいたことだけどカルマーは不意打ちに弱いのか、俺がやった不意打ちは全部受けてた。ただ正面攻撃は全部防ぐか避けられた」
1番最初の糸状濁流と糸状濁流の後にやったメイスの一撃、それにオーウェンの放った石砲魔法、どれもカルマーはまともな防御の体制を取れてなかった。
糸で視界が塞がれてたのもあるだろうがあそこまで防戦一方になるような相手が反応できないとは思えない。
「戦闘力は圧倒的、でもその情報が間違いないなら色々と対策できそうだね。僕はこのまま協会が開いたらブラベ協会長に伝えに行くけどアウルはどうする?」
「俺は行かない。ちょっと疲れすぎた」
正直めちゃくちゃ疲れた。想像していた倍くらい強かったからか人形の体もずっとギシギシ音がなってる。
でも今回の戦闘で次戦う時の俺がどんな風に戦えばいいかはわかった。
「わかったよ。疲れただろうしゆっくりしてね」
オーウェンはそう言って帰って行った。
とりあえず今は寝よう。疲れた。
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ゆっくりと視界が広がってゆく。
外を見ると太陽が頂点を少し過ぎた辺り、帰ってきた時間からしてだいたい6、7時間は寝てたのだろうか?
ソファから起き上がり。
ぐぅ〜…
「…ご飯食べよ」
ふと思ったけど人形なのになんで腹の音が鳴るんだ?
…ダメだお腹すいてて何も思いつかない。そういえば夜から何も食べてなかったな、なにか食べ物あったっけ?
「えーとチーズと干し肉、じゃがいも……あれ?これだけ?」
そういえばココ最近買い出しに行ってなかった。
「買い出し行くか……」
机の上に置いてた帽子とかけてたコートを羽織って家を出た。
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様々な店が立ち並び賑わいを見せる商業街。ファンタジー物でよくある出店タイプのものではなくどっちかと言うと商店街のような1階に店、2階に住居のような建物が立ち並んでいる。
「えーとあと人参と玉ねぎ……うわこっちの店の方が卵が1爪安い、こっちにしとけばよかった…」
店頭に並んでる食品を吟味しながら買っていく。
冒険者はほぼ自営業みたいなもの。
それにまだ底辺の俺はそこまで収入も貯金もない。だから自炊するしかないのだ。
「うーんやっぱり出費かさむな〜でも食料はどうしようもないし…」
出費にちょっと愚痴を零しながら家に向かって歩く。1回で結構買い込むタイプなため財布の中身はかなり軽い。
お腹も空いてるため近道しようと裏路地を通ると建物の間にとても見覚えのある撫子色が視界の端に写った。
「…!?」
気になって覗き込むとそこには体育座りをして微動だにしないカルマーはそこに居た。
ついでに携帯眷属の有無も探すが気づきにくいところにちゃんと居た。あくまでパスが繋がってるのはオーウェンだから俺は目視で確認するしかないのだ。
「……カルマー」
「……」
沈黙の中、カルマーが顔を上げて俺の無い目と目が合う。
昨日は暗かったせいで分からなかったが今見えるカルマーの目は前に見たものと違っていた。
前は飢えとなにかに怯えるような瞳をしていたが今は違う。
光がほとんどない目でこちらを見る。
役割を与えられず電源だけ入れられてそこにいて、自己判断をせず指示を待つロボット。
その目から伝わってくるのは孤独と不安の感情だけだった。
顔も痩せており昨日殴られていたあとがくっきりと顔に残っていた。
「……俺を攻撃しないのか?」
「今は撃退の命令を受けていませんので。」
「そうか。俺も君を今捕まえるつもりはないからな」
「了解しました。」
圧はないが重みのある沈黙の中、俺はカルマーに声をかけてみたらカルマーから返答が帰ってきた。
撃退の命令、きっとあのアロハシャツだろう。俺の存在に気づいてたのか。
「いくつか君に質問するけどいいか?」
「今命令に関係すること以外なら問題ありません。」
まじか。正直できたらいいなくらいで聞いてみたから本人に質問できると思ってなかった。
「じゃあまず1つ。君はなんで店を襲うんだ?」
「命令とだけ答えさせてもらいます。」
「誰の命令かは流石に答えてくれないか?」
「はい。」
「2つ。そこに君の自由意志はあるか?」
「いえ、私は命令を遂行するだけですので。」
「3つ。君の命令主からのバックアップは何がある?」
「店舗の位置情報、1日1食の提供。以上です。」
「4つ。あのアロハシャツの男は君の命令主か?」
「いいえ、ただ命令主の部下とだけ答えます。」
その後も少しづつ質問を重ね情報を束ねていく。
命令にしっかり従事しているのかボロのひとつも出さない。4つ目以外出てくる情報は既に知っているもの、調べればすぐ分かりそうな物が多かった。
「ふむ…じゃあ君はなんで壁の偽ヒーローをしている?聞いている限り完全に命令主の操り人形だが」
「……説明のためには私について話さなければなりません。よろしいですか?」
「あぁ問題ない。頼むよ」
「はい 。私はあなたの言う命令主に拾われました。なので命令を完遂するために動いているだけです。」
色のない目と再度目が合う。
何を考えているか測りきれないけどこれだけは分かる。
今のは本当であり嘘である。
「カルマー。今の本当では無いだろう?」
「……」
またしても沈黙が流れる。
ぐきゅー…
そんな沈黙を破るように俺のものでは無い腹の音が鳴る。
「……食うか?」
俺は買い出しで買ったパンをカルマーに差し出す。
なんで差し出したか、この感情を言葉にするのは難しいがあえて言葉にするなら親近感である。
カルマーの目から伝わってるく孤独は数週間前に俺も感じたから。
「……貰います。」
カルマーはパンを受け取り1口、また1口と食べ進めていく。
パンを受け取った瞬間のカルマーの目は孤独と不安の感情が薄れて見えた。
「……私はこの国に来た記憶はありません。それどころか自分の名前すら分からなかったんです。」
パンを食べ終わったカルマーがポツポツと話し始める。
俺はそれを静かに聴き始めた。
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ステータス
名前:アウル ■■ ■■■
種族:ヒューマノイド
属性:水
称号:【巡る者】【第1の■】【閲覧不可】
所属:森林協会所属冒険者[種 2級]
魔法:低級
固有能力:耐性【完全防腐】
創出【素敵な糸】
能力:熱耐性IV
冷耐性Ⅲ
打撃抵抗Ⅱ
精神疲労抵抗Ⅰ
撥水Ⅰ




