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人形に転生したので自由を謳歌しにいざゆかん!!  作者: NAGI提督
第1章 夢を見つけた人形編
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第19話 『壁の偽ヒーロー』⑦

『壁の偽ヒーロー』⑤で次回か次次回に終わらせると言ったな?あれ嘘になった。書きたい内容が増えちゃったので。

『壁の偽ヒーロー』の口調を少し変更しました。

 普段あまり人が歩いているのを見ることの無い裏路地の夜。トットッとアウルのブーツが石畳を叩く音と腰に下げたグラディウスが揺れる音だけが耳を通る。


「人の気配がまるでしない…こっちはハズレだったか?」


 夜の影の中、暗い服の彼はよく溶け込んでいて、人形故に彼の気配に気づける者も少ないであろう。

 散策開始から2時間以上経っているが進展なし、精々浮浪者に絡まれたくらいである。


「ん?あれは…」


 アウルの視界に見覚えのある者が歩いているのが映る。

 ささっと建物の影に隠れ様子を伺う。

 撫子色のボサボサな髪、頭に生えた節のある2本の黒い角、あの時見た少女であり『壁の偽ヒーロー』の特徴と一致している。

 よく見ると獣耳もある。あの時は気づかなかった。


(…あんなにボロボロだったか?)


 ボロ雑巾を着ている。そう言えるほどにボロボロの服、いや服と言うにはただの布すぎる。

 隠れて見ているためよくは見えないが靴も履いていない。

 角度的に顔は全部は見えないが見えてるところだけでもまともな食事ができていないことが分かる。


 オーウェンに合図を送ってみるが振動が帰ってこない。オーウェンはアウルの出せる範囲外にいるようだ。

 一応既にオーウェンに出してもらった携帯眷属(サモンスター)を帽子の中に2つ格納しているのでそれを取り出す。


「彼女に気づかれないくらいの距離で尾行してくれ。起動(ブート)蝙蝠型携帯眷属(バット・サモンスター)


 黒色に塗装した携帯眷属が少女から少し離れた所にから追跡する。

 アウルは少女がどこかに向かって歩いていくのを付かず離れずの距離で尾行する。

 二重の追跡、やっと見つけたのだから見失わぬように。


 少女が道角を曲がりそれについて行く。

 曲がり角から顔を覗かせると少女の向かう道に一つだけ明かりの着いている裏口が見える。


(あの場所はたしか…そう精肉店だ)


 さすがにどこがバックに居るかは覚えていない。

 少女が扉を叩き扉が開くと中からアロハシャツを着たタトゥーまみれのマッチョマンが出てくる。


(アロハシャツ!?この世界にアロハシャツあんの!?)


 アロハシャツの男が少女に一言二言話したあと投げつけるように紙を渡しその後少女の顔を殴る。

 何を言っていたかは聞き取れなかったがあのアロハシャツの男はおそらく共犯者。何故殴ったのかは分からないがそこは間違いないと思う。

 赤色のアロハシャツ、それとあれは錠前?の形をしたタトゥー。覚えておこう。


 少女が紙を読んでいる間に男は店の中に戻って行った。

 オーウェンに合図は送り続けているが未だに振動は帰ってこない。

 しばらくした後、読み終わったのか突然紙を食べ始めたのだ。


(!?紙を食ってる。証拠隠滅か!)


 少女は紙を食べきり突然辺りを見渡す。

 そしてなにかに気づいたのかアウルの方に向かってゆっくりと歩き始めた。


(気づかれた?いやあの感じまだ疑ってるだけ、幸い携帯眷属には気づいてなさそうだな)


 そこに何かいる。少女そんな感覚がしているのかゆっくり警戒しながら近づいてくる。


(ただどうする?正直このまま逃げるのが1番得策だろうけどあの警戒の仕方からして多分携帯眷属にもすぐ気づく、それだけはまずい。かといって戦おうにも戦闘力が分からない)


 ヒタ、ヒタと足音が近づいてくる。

 曲がり角に近づくにつれて足取りが遅くなっているのが幸いしてまだ少しだけ距離はある。


(時間が無い…えぇい一か八かだ!!)


 あと2mくらいのところで飛び出す。

 警戒していたがいきなり飛び出してくるとは思っていなかったのか少女はその場に立ち止まってしまった。

 誰にでもわかる圧倒的隙、アウルは左手を取り外し少女に向ける。


「"糸状濁流(ハヴァル・シェテフ)"!!」


ヴァサァッ!!


 音を立ててアウルの左腕から大量の糸が放出される。

 いつぞや山賊に使った糸の波、捕縛では無く目くらましのために範囲を広げた妨害技。名前はモカちゃんがつけてくれた。


「ッ!?」


 咄嗟のことで反応しきれなかったのか少女は糸の波に押し飛ばされる。


「今だ!!」


 アウルが全力で来た道を走る。

 糸の波をその場で暴れさせてるため追ってこれないのか足音は聞こえない。


ピチャ…ピチャ…


「…なんの音だ?」


ペチャ…ビチャチャ……バシャッ!!


 石畳の隙間からなにか液体のようなものが吹き出し道を塞ぐように固まる。

 まるで壁、『壁の偽ヒーロー』の由来はここからか。


「赤黒い塊、それにこの鉄のような匂い」


「血、あなた誰?」


 後ろから声が聞こえる。

 振り向くとさっき押し飛ばしたはずの少女が立っていた。


「名前を聞くならまず自分からじゃないか?」


「カルマー。あなたは?」


「俺はアウル、種2級冒険者だ。『壁の偽ヒーロー』である君を捕縛する依頼を受けている。大人しく捕縛されてくれるか?」


「拒否」


「だよねッ!!」


 その言葉と共に壁のない路地に走り出す。

 さっきオーウェンに合図を送ったら振動が帰ってきた。あとはオーウェンが来るまで凌ぐ。

 そしてなるべく気を引いて携帯眷属について気づかせない。


「逃がさない」


 カルマーが定期的に立ち止まり、さっきの壁程ではないが血の塊が地面からドゴッと生えてくる。

 ただそこまで威力は無さそうであり障害物になる程度である。


(ただこのままだとジリ貧、なんとか時間を稼がないと)


 曲がり角を何度も曲がり、視界を移動させるように動き回る。

 適度に糸状濁流をカルマーに放ち時間を稼ぎながら目的地に走る。


「鬱陶しい、大人しくして」


バシャッ!!


 また大きな音を立てて壁が現れる。

 その壁を迂回した路地の先、そこには


「ッ!!行き止まり!!」


「これで逃げれない。大人しく、捕縛されて」


「断る!!"糸状濁流"ッ!!」


 ヴァサァッ!!と音を立て糸の波がまたカルマーを襲う。


「その技は何度も見、ッ!?」


「ウォラァッ!!」  ドゴッ!!


 糸状濁流で視界を遮った間にメイスを取り出して波による死角から思いっきり振り抜く。

 避けれるはずもなく思いっきりぶん殴られたカルマーは路地の石畳に転がる。


「ッ!!許さない」


 転がった勢いをそのまま起き上がる力に変えて立ち上がり

 カルマーの角のサイズが少し小さくなったかと思うと血がカルマーの手に棒状に凝固する。

 アウルの持つグラディウスよりも少し大きい血の剣、刃はほぼないが表面の凹凸がヤスリのようになり人形の体には大きなダメージになり得る。


「殴る」


「ッ!!危なッ!!」


 ガギンッ!!


 振り下げられた血の剣を咄嗟の判断でグラディウスを振り上げて止める。


「重い…!!」


「隙」


 アウルの足を蹴り、意識を足に向かせた所で一度剣が溶かし、グラディウスを巻き込んでまた凝固、そのままグラディウスごと振り下げ返しで顎下から殴り上げられ吹っ飛ばされる。

 何とかグラディウスは吹っ飛ばされた時に血の剣から引き抜くことには成功したが不利なことには変わらない。

 そのあとも近接戦は続くが防戦一方、血を巧みに操り素早い動きで隙をついて殴られる。


(クソッ!!あまりにも戦い慣れている!!こっちの攻撃がまるで当たらないッ!!)

(まるで捕食者と被食者、打撃抵抗を持ってなかったら今頃体にヒビが入っていただろう。クッ!まだなのか!!)


ドゴッ!!


「カハッ!!」


 血の剣の突きが腹辺りを直撃して地面に叩きつけられる。

 たとえ打撃抵抗を持っていようとも何度も打ち付けられたため体からミシミシと音が鳴っている。


「そろそろ諦めて?」


「諦めても逃がしてくれないだろ?」


 戦力差は絶望的、勝てる見込みはほぼない。

 そんな中アウルは屋根の上に人影を見る。


「はは、ナイスタイミングだよオーウェン!」


石砲魔法(ストーンバレット)!!」


「ッ!?新手!」


 屋根上から無数の石の弾がカルマーに向かって飛んでゆきカルマーは後ろに後退する。

 屋根上からオーウェンが降りてきて肩を貸してくれる。


「こっぴどくやられたみたいだね。今は逃げるよ、煙幕魔法広域化スモークスクリーン・ラレゴ!!」


 オーウェンの持つタクトの様な杖が振られ辺りに煙幕が展開される。


「携帯眷属はちゃんとついてるね、なにか他にわかったことはあるかい?」


「あぁ…それもいっぱいな」


 屋根上に避難し急いでその場を離れる。


「カルマー…次会った時に必ず……」


 負け犬の遠吠え、そう言える言葉を残しアウルはオーウェンに担がれて裏路地を後にするのだった。


――――――――――――――――――――――――


ステータス

名前:アウル    ■■ ■■■

種族:ヒューマノイド

属性:水

称号:【巡る者】【第1の■】【閲覧不可】

所属:森林協会所属冒険者[種 2級]

魔法:低級

固有能力:耐性【完全防腐】

     創出【素敵な糸】

能力:熱耐性IV

   冷耐性Ⅲ

   打撃抵抗Ⅲ

   精神疲労抵抗Ⅰ

   撥水Ⅰ

戦闘描写難しい

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