第13話 『壁の偽ヒーロー』①
俺がアトリエから帰ってきて2日経った。
あれから特に何も無く、俺は貰った作品の性能を確かめたり武器を扱う練習をしていた。
さすがに切ったり汚したりはしなかったがたまたま付いた泥が自然に落ちたり、物に引っかかっても傷1つついてなかったりしたから性能に偽りがないとわかった。
そしてフェドラハットの方がかなりやばい。
『空間拡張』とかでそこそこ物が入ると言っていたがそれどころじゃない。持ってた武器3つとナップサックの物、それらを入れてもまだ入りそうだからって面白半分で椅子を近づけてみた、そしたら入っちゃったのだ。
ちょっと怖くなっちゃったからそれ以上は確かめてないけどこれはやばい、取られたりしないように気をつけなければ……
ちなみに武器の方はちょっと才能があったようでかなりスムーズに扱えた。ブラベさんも「種1級にしては上出来すぎる。素人がそこまで扱えるだけ凄い」との事だ。褒められてる……よな?
そんなこんなで今俺はとある場所に向かって歩いている。ブラベさんが用意してくれた物件に向かっているのだ。
書類情報と地図の2つから選んだもので実物を見るのは初めてなためちょっとワクワクして。
協会のある大通りから大きめの交差点を曲がって少し離れた通り、そこにある花屋さんの二階が俺が選んだ物件だ。
道を覚えるためと寝具を買うため、辺りを見渡しながら歩いているとふと裏路地に目が行き、薄暗い裏路地に似合わない少し汚れた撫子色が目に入った。
薄汚れた服、撫子色のボサボサの髪、何かに怯えるような、それでいて飢えている瞳をした少女がたっていた。
この2日間の間にここが日本と違い浮浪者やスラム、認めたくないが奴隷が居ることを知った。だからその辺の類だと思っていたが何か違う気がする…
そんなふうに考えてると少女は裏路地の奥に消えていった。その時に気づいた。
「角が生えてた…」
あの少女はいったい……
そんな風に考えながら俺は選んだ物件に向かった。
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あの少女を見たところから5分ほど歩いたところ、目印となっている花屋さんが見えてきた。
レンガ造りでなかなかに良い雰囲気を纏っている。
事前にブラベさんからどんな人か聞いており、ムクさんとバネさんの新婚夫婦が営んでおり、付近での評判は良いらしい。
まぁ挨拶に行こうとしたら定休日で出かけてたのか居なかったんだけどね。
花屋さんの右横にある階段を登った二階、貰った鍵で扉を開ける。
「いや広ッ!!」
扉の奥にはかなり広めの部屋と扉が1つ、間取りでは確かこの物件の3分の1、いやもうちょっと広いくらいがひとつの部屋になっている。玄関のある方を前とするならこの物件は縦に長いのだ。
あ、靴脱ぐスペースが無い、今度適当な棚でも買ってくるか。
手前の部屋も程々に奥の扉を開ける。するとそこにはそこそこの広さのキッチンがあった。
この物件、さっきの広い部屋を除くとあとはふつうの2LDKである。
扉から左の壁にさらに2つの扉、その2つが個室になっていて、扉の右側がトイレと風呂、もちろん別室である。
ていうか今更だけどこの国、上下水道はしっかりしてるのに電気は無くガスはランタンくらい、なんともチグハグだな。
「よし、これくらいでいいだろう」
元々荷物はほとんど無く、せいぜい来る際に買った机と椅子、それと布団程度だ。持ち運びにこのハット様々である。
中世の雰囲気のあるこの国で敷布団は場違い感半端ないけどベッドを帰るほど余裕が無いのだ。
あと荷物を出してる時に気づいたのだが俺はこの世界に来てから食事はしても排泄というものをしていない。なんでだ?食ってるから絶対あるはずなのに……
考えても分からん、今はトイレが完全に置物になった事だけで十分だろう。
とりあえずもうやる事も無いしこれからの目標についてを考えよう。
まず第1に俺は日本に帰る。
第2にこの体を元の持ち主に返す、それか人形だからこの人形の持ち主に返す。
第3、とりあえず今はなんのしがらみもないこの世界を楽しむ。この3つを目標にしよう。
1と2は分かりやすくそのまんま、3はせっかくだから楽しもうくらいのイメージだ。
日本にいた時みたいに勉強、学力、偏差値、嫌気のさす見えない重りが全部外れ完全に自由なのだ。
まだ何も無い状態だから我武者羅に進むしか無いけどきっと日本にいた時とは違う刺激があるはず!!
「やってやる!!この自由をめいっぱい謳歌してやる!!」
ぐ〜ぅ…
「……」
まずはご飯だな。
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1週間経過
あれから1週間、たくさんの依頼をこなして破竹の勢いで階級をあげて【葉】に!!とは行かなかった。
あれから1週間たしかに依頼はこなした。だが種1級が受けれる依頼が少なすぎる!!
1週間で受けれた依頼の数なんとたったの2!!今日受けたのを合わせると3!!しかも2つの内容はどっちも猫探し。
広い部屋は手に入れたけど冒険者として事務所を設立した訳じゃないから協会の掲示板からしか依頼を受けれない、それでいて低階級の冒険者は多いから一瞬で依頼が無くなる。
事務所を設立したくても種3級以上の冒険者が2人以上居ないと設立できない。
「やばいな…八方塞がりだ……」
ちなみに今回の依頼は近くの川の生物調査、最低20種の水生生物の採取である。だが意外と楽しい。
26種見つけ、依頼人に提出した。いくつかいる魚の中にスズキのような物がいて名前を聞いたらササキだった。鈴木が佐々木になった……
「アウルくん、ちょっといいかな?」
そんなしょうもない事を考えながら依頼達成の手続きを協会で済ませ、協会を出ようとした時に声をかけられた。
「ブラベさん!あ、ブラベ協会長」
「いつも通りでいいよ。それより少し話があってね、着いてきてくれ」
ブラベさんについて行き、協会長室の中に入る。
ブラベさんは引き出しから1つの書類を取り出し机の上に置いた。
「ブラベさん、なんで俺を呼んだんですか?」
「そうだね、今回アウル君を呼んだのは君を指名した依頼が来たからだ。」
「依頼主は下巣南部商業街の財務担当と治安維持担当から。依頼内容は『壁の偽ヒーロー』の撃退、または捕縛だ」
「!?」
目標に向かう為の歯車が少し、動いた感覚がした。
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ステータス
名前:アウル ■■ ■■■
種族:ヒューマノイド
属性:水
称号:【巡る者】【第1の■】【閲覧不可】
所属:森林協会所属冒険者[種 1級]
魔法:低級
固有能力:耐性【完全防腐】
創出【素敵な糸】
能力:熱耐性IV
冷耐性Ⅲ
打撃抵抗Ⅱ
撥水Ⅰ
今更ながら1章はこの『壁の偽ヒーロー』と次の話で終わります。
追記 明日より更新頻度が下がります。




