泥棒は嘘つきで 11
決行当日
「皆様、本日はお集まり頂き、誠にありがとう御座います。本日は長年苦楽を共に歩んで参りました世界最古の由緒正しい国、偉大なるイスト王国と、その兄弟国とも言える世界屈指の大国であるトルクスメシア両国が大きく歩み寄る事になる記念すべき日となります。歴史に残るこの日を皆様と共に分かち合いたく思う所存で御座います。皆様盛大な拍手をお願いします」
「ではこれよりトルクスメシア王の御言葉になります」
「本日は、この記念すべき日にお集まり頂き、誠にありがとう御座います。ご紹介に預かったトルクスメシア王国、国王のメキロである。我々トルクスメシアとイストは決して順風満帆な関係ではなかった。たが!そんな苦難も乗り越え、本日は我が国、我が息子である第1王子、ジャスと、イスト王国の現王女、エリス王女の婚約を…なんだ!!?」
「今の爆発音はなんだ!?」
「どうなってる!?場所は何処だ!?」
「ま、まさか」
「ジェノサイダーズか!!?」
面倒な挨拶は最低限聞いてやったから最低限のマナーは守ったとしておく。
さて、始めますかな
「ぬふふふふ、皆々様お集まりの様で!各国の…それなりに、お偉い方々が来てる様ですね〜、まあ婚約の発表じゃトップ迄は来ないよねぇ!余計なお世話かも知れないけどこういうのは結婚式とかで呼んでおやりよ。皆忙しいんだからさぁ、万事上手く言って嬉しいのは分かるけどね?まあ各国トップの御方が来てないのは今日はラッキーだったかも知れないなぁ」
「何処だ!?何処に居る!?」
「ジェノサイダーズなのか!?」
「ジェノサイダーズなら待ってくれ!話を聞いてくれ!ここはまだ記念で建てたばかりでこれといった宝なんかは無いぞ!?各国要人もいるんだ、頼むか自重してくれまいか?」
やっぱりただの破壊の権化みたいに思われてんな。今日で少しは見直されるといいけど
「両国の城に送った予告状にはおっきな宝を頂くと書いた訳だが…城の物とは一言も書いてなかっただろ?」
「やはりジェノサイダーズか!…なら目的はなんだ!?」
「お前達の噂は兼ねてより聞いている!だが先程話にあったようにここにはお宝になるような物は無いぞ?……この様な席だ、穏便に済ませると約束するなら今日は我々からは手出しはせん!欲しい物があるというのなら特別に検討する。なので破壊するのは待っては貰えないか?」
俺が思った以上に恐れられてるようです。まあ無理もないか。問答無用でぶっ放されるよりマシだろうし、不審者への警戒こそしているがこの国境付近っていう場所もそうだがこの催しの内容的に見ても最上級の警戒や準備をしてる訳では無いっぽいもんな。
イスト側はそれを見越して今日宣戦布告して先手をブチかまそうと判断した訳だし
「お宝ならあるんだなぁ〜これが。って事で」
「上からだと!?」
「空への転身が出来るのか!?神業だぞ!?」
結界でこのステージっぽい所の上空に結界を作って内部から側面は鏡張りにして、下だけ青くして待機してたんすよ。
夜ならいざ知らず昼間だとちゃんと見りゃバレそうなもんだけど大丈夫でした
「はじめまして、そしてとりあえず盗ませてもらおうか」
「え!?もしかしておっきな宝って…ワシ!?」
「照れた感じで言うなやデブジジイ!!それと見目麗しゅうお姫様、しばしお付き合いをお願いいたします」
よし、頷いてくれた。警戒こそしてるっぽいけど意外と素直じゃないか。って今は虚を突いてるから大丈夫だけどこのステージの上ではすぐに囲まれるのでちょっとあっちの建物の屋根に移動するか
「お姫様、お身体に少し触れますがご容赦下さい。オッサン、ちょっと拘束させてもらう」
姫を抱きかかえつつこのデブを手で雑に持って屋根まで飛びました。2人抱えるの結構大変なんです
「き、貴様…ワシをぞんざいに扱いおって!も、目的は何だ!?金か?今なら手持ちをくれてやるからさっさと消えい!!」
「お集まりの皆様、改めましてジェノサイダーズであります。本日我々が頂くお宝は……歴史、で御座います!
とても大きい代物ですが頑張って盗んでみたく存じ上げますので温かい拍手を頂けたらなんて思いますが…まあそうでしょうな、あるわけ無いですね。
警備の者や兵の者達よ、今から面白い茶番劇が始まるから任務上止まる訳にはいかないのは理解出来るが暫しお付き合い願うぜ。代わりにこの茶番劇が終わるまでは全ての安全を保証しよう。断ったら…」
「うわっ!?」
「また爆発だ!?」
「くっ、くそー!!」
遊び感覚でやってるけどこれ大犯罪なんだよな、ちょっと怖くなって来ました
「くくく、ではこれより余興を始めたいと思いますので皆様お静かに聞いて頂けたらと思います。むしろ音大きい気がするのでお詫びしたいんだがこの拡声器の調整を間違ったのは御愛嬌という事で」
本当御愛嬌だよ、クソうるさいわ!しかしこればかりは仕方ないのです。
てか取りこぼしは…うん、無さそうだ。当然忍びっぽい奴らが潜んでる訳だけどちゃんとみーサーチで把握済みなので結界で閉じ込めてますが…たまたま物陰に居た何でもない人とかだったらゴメンよ、むしろその中の方が安全だと思うから勘弁な
「くっ!何がしたいんだ貴様は!」
「メキロ王よ、この茶番劇をやるにあたってアンタには質問がある。最短で3つで終わると思うがそれはアンタ次第だ。まず…基本的な話をしよう。これ…なんだか分かりますかな?あ、これは質問じゃなくて確認だから誤解無きよう」
「…嘘ぴょん君だろ?それくらい知ってるわ」
「そうだな、当然か。では質問その1、アンタはこの嘘ぴょん君の攻略法は御存知か?対策と言い換えてもいい」
「ふん……嘘でもつくと思うたか?ワシ…のみならずある程度立場ある者なら基本中の基本じゃ。やましい意味ではなくそれを知らんと尋問にも差し支えるでな」
「うむ、まあ当然だろうな。世の中綺麗事ばかりも言ってられん、中にはそういう事が必要になる場合もあるだろう」
「そんな分かりきった事をいちいち聞くな!本題は何だ!?」
「いやぁ、大事だったんで確認さ。この道具は本当に優秀で、本当の意味での攻略は実質不可とも言える代物ですからねぇ。良くも悪くも絶対的なので使用者の手腕次第ではって条件にはなりますが」
「くどい!話すならさっさとせい」
「おやおやこれは申し訳ない、では本題。アンタはここにおわす見目麗しいお姫様のご両親と兄…先代の王達だな、それらの暗殺疑惑は御存知か?」
「ふん、何かと思えばそんな話か、そんなもん…」
「メ、メキロ王ー!!!」
気付いたヤツがいたか!
「知らんわ!!」
嘘ぴょん君に反応は無かった
「くくくっ!ははは、あーっはっはっはっ!!」
「何だ!?気でも狂ったか!?早く話を終わらせんか!!」
「お、おい、ジェノサイダーズ!もういいだろ!!金ならやる!!追いかけたりはせん!!だからとっとと帰れ!!」
酷い慌てようだな、気付いたヤツはまだコイツだけかな?
「もうこれで充分な気もするが…特別に解説してやろう!ここに居る各国の皆もそうだろうがこの両国の国民の殆どが噂してたであろう、イスト王の暗殺疑惑。これを知らない…それが真実であるという意味が分かるか!?」
「何の話だ?」
「何言ってるんだ?」
「分からん」
「……あ!?」
「チラホラ気付いた者も居るようだな!おいデブ王よ、アンタは今半分くらい関与してると自白したようなもんなんだぞ?」
「……は!?な、何を言っている?」
「話を最初に戻そう。嘘ぴょん君の攻略法、それは嘘だと気付かない事とか思わない事、自覚がない事、忘れる事、それを知らない事等……これらは細心の注意と日々の努力で培う事が可能だ。
王デブちゃんも良く知ってるよな?ここからが本題だ。
去年、稀にあるとは言え早々起こり得ない致死率の高い感染症を王宮という衛生環境の整った場所で、王の家族全員が感染して王女を残して3名が亡くなるなんて事態、陰謀論や暗殺疑惑が出て当然なんだ。
無関係だとしても、真っ先に疑われそうな不仲であった隣国の王なんかがこの疑惑そのものを知らない訳がないんだよ!にも関わらずそれを知らないと来たもんだ。…………アンタはこの件に対して嘘ぴょん君対策をしていると証明されたんだよぉぉぉ!くぅーっくくく!!あーっはっはっは!!まさかこんな見事にハマるとはなぁ!」
いやまさかここまで狙い通りに行くとは思わなかった。だがまだ本番はここからだ
「そ、そんなもん!なんの証拠にもなりゃしないわ!!ワシは知らんかった!それだけだ!」
まあそう来るよな
「話の続きだ、アンタはある意味確かに知らんのだろうな!直接指示も出したりはしていない…だが!嘘ぴょん君なんて優秀な代物があるおかげか、王族や大貴族なんかには…話の流れを呼んでお察しして勝手に色々やってくれちゃう影の者みたいな連中を抱えて居るだろ?それが政治にも精通してたら尚更だ。
指示を出したり名指しで呼ぶのもするのは危なそうだからな、何らかのお察ししうるルーティンがあるのかも知れん。
今回のこの致死率50%は上手いもんだ、2分の1じゃあ余計に不透明になりやすいもんなぁ?この赤熱を選んだのは流石大国の暗部だけはある。今、その辺の壁とか見えない場所で何故か俺に手を出せなくて歯痒い思いしてるんじゃねーかな?」
「くだらん、くだらんわ!!全部貴様の妄想でしかないわ!!」
「いやぁ、流石王様。知識としてはよく理解してるだろうが実際に使われる経験なんて殆ど無いのだろうよ。それが裏目に出たな。では3つ目の質問、イスト王家暗殺の話から今の話まで…的を得てるのは分かるとしてだ、それを嘘ぴょん君で聞かれたら困るか?」
「くっ……」
「さあ、さあ、さあさあさあさあ?」
メキロ王は顔をしかめながら悔しそうに黙っていた
「これで終わりだ。私はアルバス王とエルミア王妃にちょっと恩があってな、ここでお返ししに来たって訳さ」
そう、この沈黙が手の打ちどころだった。
この世界には、というか日本でもそうだった気がするけど殺人教唆的な部分に関する法整備は薄いというかその辺は貴族の都合が混じってたりするので実際の所これでどうなるかというルートは不明なんです。
まあ80点て所かな。先代の名前を出した事で今回のやり取りに重みを与える事は出来たし、本当はこの流れでさっきこの王が喋るのを止めようとした色々分かってそうな側近的な奴とか、その物陰にいる忍びっぽいヤツを引っ張り出して嘘ぴょん君と言いたい所だけど…僕達私達が勝手にやりました、という道が結局残されてしまう。
それも上手い事言いくるめたい気持ちはあるけどここは裁判所では無いし俺達は犯罪者、そろそろこの茶番劇にお付き合いしてくれる時間は終わるだろから俺達も締めに入りますか




