泥棒は嘘つきで 8
王女様と言えど所詮はまだガキ、なので実はおっさんの俺はなんか教育してやらねばなんて気持ちが少し出そうになるのも無理からぬもの。
と言ってもそれは何も指導がどうとかではなく、なんていうかこういうもんだよ、っていう感じの事をやれたらなぁ、なんて思ったので
「では今回エリス様が初めて損害無くクエストを達成したお祝いで、乾杯!」
ちょっとしたお祝いの席を設けてあげたのだ。
「王都の美味しいケーキ屋さんのです。お口に合いますかね?」
「ん、悪くないわね。ありがと!」
「沢山作ったからじゃんじゃん食えよ」
「食えって、そこは王女相手なんだから食べて位にしなさいよ!全く…まあいいわ、食べ物に罪はないものね」
このガキ、俺には感謝無しか
「みーくんの唐揚げ私のと交換ね!」
「あ!?勝手に取るなよ!他の選べばいいだろ!?」
「絶対こっちの方が美味しそうだったんだから仕方ないだろぉ」
「くっ!奪い返そうにも皿にストック無しか」
クリスめ、日に日に小賢しくなってる気がするぜ
「ふふふ、そうやすやすと私のおかずを取れると思ったら大間違いさ」
「クリスもみーさんも、もうちょっとお行儀よく食べられないのですか?」
「あんたらってそういう関係なの?そういや私より率先して助けてたし」
「そう見えて困り物ですが実はみーさんは私の許嫁なのですよ」
うわっ、遂に言いやがったか!絶対面倒くさい絡みされるやつじゃねーか
「うわぁ…許嫁も居るくせにパーティーメンバーの女にもイチャついて、王女である私にまで穢らわしい目を向けて…最低ね!」
「わわ、私とみーくんはそんな関係じゃないですからね!」
「何一つ真実が無いのに最低扱いはよして貰おうか」
下手に熱く返してはいかんなんて警戒したが思ったよりうざ絡みされる事は無く済んで楽しい食事の一時を過ごしていた。
そしてタイミングを見計らってまゆも姫からサプライズが敢行されたのだ
「エリスぽんに初クエスト成功祝いの杖をプレゼントするんやでぇ」
「え、師匠?いいの!?流石師匠様だわ!分かってるわねぇ」
「一応私達パーティーからのって事でヤマト村で作られた杖ですよ。私は杖の事はよく分からないけどヤマト村のなら悪いという事は無いはずです」
「皆さんからなのね、ありがと!大事にするわ!それじゃあクリスさん、そろそろ私にもお酒貰えないかしら?」
え?
「いや、その…王女様はまだ14歳ですよね?あまりよろしくは…」
「何言ってるか分からないけど私の国では祝いの席なら12歳から飲んでも良いとされてるわよ」
「そうなのですか?それは知らなかったです」
「そ、そういう事なら…」
あんまり言いたくないけど嘘な気がする…が、この場合何とも言えないな。
俺が言うべきか?でもそもそも論この世界は16歳位からっていう曖昧さだから何とも言えん。
結局飲ませてしまった
「ほらみー!もっと酒持って来なさいよ!今日は私のお祝いなのよ?そうでなくても私は王女なんだからちゃんと言われる前に持ってくるの!分かった?」
う、うぜー…だが飲ませとくとトータルで見たら大人しくなってるからここは言うこと聞いとくか
「みーくぅん?おつまみ作ってよぉ」
「私しょっぱいの食べらいれすぅ」
「ぺぽりおーぬが小腹空いてるっぽいぞよ」
「ぴにゃー」
「ぺっぽりーちゃん超可愛いわねぇ!!ねぇねぇ、持って帰っていい?」
「駄目なのでぇす!」
どうしてこうなった
「仕方ない、作ってくるから待ってな」
避難も兼ねてつまみを作る事にしました
「良い心がけね、うちの専属料理人のお手伝いにしてやらなくもないわよ?」
「丁重にお断りします」
「皆さんもウチの国の専属冒険者になっちゃえばいいのよ!いえ、王女専属ね!」
そんなこんなでかなり出来上がった頃、怖い顔したダイスさんがやって来ました
「エ・リ・ス・さ・ま!!」
「うわぁ!?き、今日は帰って来ないんじゃなかったのぉ!?……違うの!これには深い訳があるの!!」
案の定というか、王女様はまだお酒を飲めるお歳ではありませんでした。
ダイスさんはこのお姫様の性格をかなり熟知しているようで飲ませた側の俺達には何一つ文句を言っては来ないどころか嘘付いてた事までお見通しでエリスは部屋に連れてかれた。
因みに俺の部屋はダイスさんに貸していて俺はまだ実践されていなかった多数来客が来た際のフォーメーションCという名の広間で寝ている。
最低限カーテンで仕切る形ではあるが結界を使える俺には遮音なんかも出来るし、言うなれば部屋が一気にデカくなったってだけの話なので傍から見ても部屋を出されたなんて感覚にはならない仕様だ
日に日にエリス様と皆の距離がどんどん縮んでいった気がしていたがこのお祝いの日以降はそれがかなり顕著になった気がするな。
元から割と馴染んでたから気のせいかも知れないけど
「なんか様付けされてるとネタにされてるみたいね。良いわ、気軽にエリスって呼んでちょーだい」
「それはそれでまだ言い辛い気もするが…」
「アンタは駄目よ!他の皆と違って無礼者にタメ口は許可されないのよ」
俺以外呼び捨てを許されるようになった。皆馴染んで良かったねぇ。
基本老若男女問わずある程度敬語で喋る俺としてはむしろ敬語寄りの方が楽なのでその方が良いです。
ってそういや俺割と敬語だったんだけど気付いたらパーティーメンバーとは敬語じゃなくなったな
そしてクエスト成功祝いパーティー以来、冒険者として何かが変わったかと言うと…
僕等はなにも変わりませんでした
「うぎゃぁぁ!?みー!!みーさん!!早く、早く来てぇぇ!魔法躱されちゃったよぉぉ!!」
てか魔法使いが特攻すんなし
「きゃぁぁ!!みーくぅーん!!」
安定のクリス様ですね
「おい、今私の事バカにしませんでしたか?みーさんこのオーガ私をバカにしましたよ!?スルーですよ、スルー!許せません!やっちゃって下さい」
メロニィが戦えるタイプじゃなくて良かったよ。戦えてたらただの狂犬だもの
「ぐらびとぅーん!!」
くっ!エリス様で忘れてたけどこの子もそうだった…簡易とは言え小屋っぽいのがぶっ壊れちまった
一昨日、ギルド姉さんから少しアドバイスを貰いました。
冬真っ只中のこの時期はあまり冒険者は活動しておらず、出されてるクエストは厄介なものだったり敬遠されてた物が多いらしい。
とは言え魔王軍将軍を討ち取ったりしてる俺達には問題無いと思ったらしく特に気にしてなかったそうだが破壊を繰り返したり、疲れ果てて戻ってくる姿を見て改めてアドバイスしてくれました
そもそも俺達ってこんな毎日のようにクエストを受けてなかったからそこまで気付いてなかったけど…冒険者としては本当に未熟というか、かなり危なっかしいんだなと分からせられました。
何かしらトラブルっぽい事を引き起こすクリス、知ってはいたけど本当こんなリスクもあるかもってのをかなりの確率で引き起こすんです。ちょくちょく訳わからない事も引き起こします。
最も、良い方にも働く事もあるから幾分マシではあるし、適度に臆病なおかげで大惨事になるような事にこそならんけど。
そしてメロにゃんは仕事モードで頭が切れるのは疑う余地もないんですが何故こんな狂犬染みているのか…自分は戦わないってだけで言動は猪突猛進そのものです。勇猛果敢とも言えますかね…クリスとまゆもも何かが同じ波長だから余計なんです。
まゆもっこちゃんはもうアレだしな、独自のルールというか気分でぶっ放すから所々の破壊は…ってこれでも大分気を使ってるのはなんとなく分かるだけあって何とも言えんのです。
初めて会った時なんか公園で平然とぶっ放してたりした事を考えると成長したんだと思うよ?
コイツらだけなら、狂人という訳では無いので余程テンションが上がって無い限りは話も出来るし、まあ問題なくやってけるんですよ。
ただここにこれら全部足して、無遠慮かつ頭の悪いプリンセスが加入すると…
「あ、壁壊れちゃったわ。てへっ!」
この破壊活動が進んでく訳ですね〜
遂に堪忍袋の緒が切れた俺は
「お・ま・えなぁ!!いい加減破壊すんなよ!!ちったぁ学べや!!このポンコツプリンセスが!!」
「や、やめなはい!!ふりんへふの頬を気軽にひっはるんひゃないふぁよーー!!」
「み、みーくん落ち着いて!!王女のほぺはまずいって!!」
「遂に姫ほぺをやってしまいましたね」
「みーくん落ち着くのじゃ、我が弟子の不始末…アチキは関係ないぽん」
「そ、そんなぁ!?師匠〜!!?」
「みーさん……」
お?流石にダイスはこれを許さないか
「止めても無駄ですよ!誰かが言わなきゃ」
「もっと遠慮なく懲らしめてあげて下さい」
「ちょっと!?ダイスまで何言ってるのよぉ!!痛っ!?ごめん、ごめんて!謝るからぁ〜!!」
こんな感じで気付くと王女である事を忘れてるかのようなレベルまで馴染んだ俺達。
そんな中、月末まで日程が近付くにつれダイスさんはコチラを空ける事が増えて来てたが俺達は特に気にする事なく過ごしていた。
そして依頼完了迄残り4日と迫ったある日、夕食を終えていつもの様に寛いでたらダイスさんがエリス様を呼んで部屋に入って行き、出て来ると2人はちょっと神妙な顔になってるなと感じたがすぐさまいつもの様にバカ騒ぎしました。
因みに皆呼び捨てになってからはバカにされてるみたいだからって事で俺も呼び捨てにしていいという許可を得たけどあえてエリス様呼びしてからかったりしてます。
この日の夜、前日に結構雪が降ったのもあって月明かりが反射して夜なのに明るい感じが良い景観と思った俺は夜な夜な外へ出て夜空を堪能していた。
見事な満月ですなぁ。この世界にも月があるんだけどこっちでは月は兎ではなくカエルなんだとか。
それにしても綺麗だ、ちょっと上空からの景色も見てみようかな、なんて考えてたら
「ちょっと、寒いんだけど!ちゃんと閉めてくれないかしら?」
あら、お姫様がやって来ました
「開いちゃってたか、ごめんね。ってどうした?」
このお姫さんは夜更かし耐性が無いようで11時には確実に寝てる良い子ちゃんなのだ、そこだけはね
「ちょっと寝付けないのよ」
ここで一緒に上空へ…なんて事は出来ません。何言われるか分かったもんじゃないし、秘密にしてくれる可愛げなんか無いだろうから色々言われる未来しか見えん。
何より結婚前の王女様って訳だからウチのパーティーは女だらけなので問題になってないけど実際問題、異性である俺は距離感間違えるのとマズイと思うのよ。
俺とこのお姫様が恋仲なんて事は全くもってありえないのは双方、クリス達だって察せるとは思うが内情を知らないとどんな誤解されるか分からんからね
「珍しい事もあるもんだ?って普段を知らないからそんな事は言えないけど…なんだ?もうすぐ俺達とお別れだから寂しくなったのか?」
「バカ言うんじゃないわよ!!まあアンタと違ってガキじゃない私はそりゃあ、アンタを除いた皆とのお別れは寂しくないと言えば嘘になるのは認める所だけど……それを言うならこんな高貴で尊き美しい姫と、もう戯れる事が出来ないアンタ達の方が寂しくて枕を濡らすんでしょ?」
「はいはい、枕濡らしときますよ」
ガキじゃないのでこんな夜中に言い合いはしませんよ
「いい心掛けね。それにしても…綺麗ね。雪を見るのは実は生まれて初めてだったのよ。この寒さは許せないけど綺麗さは見事なものね。雪ではしゃぐって話自体は聞いた事あったけどその気持ちも分からなくはないわね」
こうして見るとすんごい美人なんだけどなぁ
「砂漠って雪降らないのか。でもアレだろ?エリスの城がある首都って国境付近で山岳地帯に近いとかそんなだから自然も割と豊かだという話じゃないか」
「ふふん、そうよ!イストもこことは違う綺麗さなんだから!いつか…いえ、そういえばちょっと気になってたんだけどアンタの居た世界って魔法は無いくせにこの世界より色々便利だったんでしょ!?少し聞かせなさいよ」
その後他愛の無い話をしてた俺達、寒いので結界で寒さを和らげながら小一時間ほど話していた。
この時点で俺は少し引っかかっていた。
この女、こんな寒いのを耐えてまで外でお喋りするタイプでは無い。何やかんやと俺と気兼ねなく喋れるので小一時間話してた事自体は不思議では無いが暖炉付けろとか、気が利かないとか言って来るタイプだ。
それと、これもなんだけどいつかイストに来い、みたいな事を言おうとしたのを止めたのに違和感があった。
もう既に専属で来いとか色々言ってた癖にここへ来て止めるのはちょっと引っかかったが、真夜中に異性と2人だから変な発言に気を付けたのかな?なんて思ったりもしてこの時はまだ深くは考えて無かった




