泥棒は嘘つきで 4
冒険者に憧れが強いというそのお姫様は、宿か俺達の家を拠点にしてみたいという事でこれまた満場一致で家に招待する事にしました。
姐御やリリィさんには秘密案件と伝えただけで察してくれて2月までは顔出さないと言ってました。それはそれで寂しいですぅ。
そしてお姫様は本日やって来ます!手筈ではギルド姉さんが連れてくる流れになっているます!
俺達は片付けや茶菓子等色々やってバタバタしてたので時間はあっという間に過ぎて行き…
そして遂にやって参りました
「はじめまして、私はイシスの王女、エリスと申します。この度は私のわがままを聞いてくださり誠にありがとうございます」
おお!?偉い美人というかこれぞお姫様って感じだな!!金髪のロングヘアに青い瞳、クリスより身長は低めで小柄ではあるが14歳って言ったらこんなもんだろうし、むしろそれがいい!
「お、おお、お姫様!?頭をお上げ下さい!!こ、コチラこそよろしくお願いいたします!わた、私はこのパーティーのリーダーをやってますクリスと申します」
「ご丁寧にありがとうございます。あ、それとコチラは私の付き人のダイスといいます。ダイス、挨拶を」
「ご紹介に預かりましたダイスと申します。王女の付き人とでも思って頂ければよろしいかと。歳は経てますが万が一の事があっても時間稼ぎ位は出来ると思いますので皆様の迷惑にならぬ様務めさせて頂きます」
うん。見るからに分かるよ、腕が立ちそうだ。立ち振舞がもうヤマト村の方々と被るもの
そんなこんなで自己紹介も程々に早速ギルドへ行き、依頼を探す事にした。
由緒正しいお国の王女がお忍びとはいえ来てる事をギルドは把握してるので今回はかなり協力的にしてくれているようだ。
周りの冒険者がほぼ居ない、コチラにケチつけて来そうな所には金を渡してまで休養を与えたとかなんとか…そういう事じゃねーよって言いたい所だがこの際何でも良いです。
強いて気になるとすればこれがギルド主導ではなくこの方々がそう手配したのだとしたら実はかなり面倒くさい事に巻き込まれるなんて事も…一応警戒しておこうか
「王女様…じゃなくてエリス様、この依頼なんかはどうすか?」
「畑を荒らす赤犬と一角ボアですか…良いですね!庶民の生活を守る為に頑張りましょう」
「「おおーー!!」」
多分初ですよ、こんな冒険者っぽいノリで行くの
お姫様の御御足を考慮して徒歩1時間位の場所を選んだ訳だけど思ったより歩くの平気そうだな
「ところでお姫様…ではなくエリス様、実際の所魔物との戦いの経験なんかはおありですか?」
メロニィも間違えた、やっぱりお姫様って言っちゃうよな。
身分がモロバレするから名前で呼ぶ様にしようと我々は努めております
「いえ、初めてですが一応魔法を少々」
「良かったら見せて貰ってもいいっすか?」
「そうだね!どれくらいやれるか見ておいた方がいいよね」
さてお手並み拝見
「では行きます!ギガフレイム!」
うおぉぉう!?なんかスゲー炎が出たぞ?単発火力ならトウ君にも劣らん。
いつか聞いた事あったけど王族って普通に強いんだとかなんとか…伊達じゃないって事だな
「エリス様すごーぼぅん!アチキもお見せするぞよ!ぐらびとぅーーん!!」
これまたとんでもないです。ここは流石に格の違いを見せつけましたなまゆも姫!まあこの子2発でガス欠だけど
「す、素晴らしいです!!流石ヤマトの民!!私も魔法には少し自信がありましたがここ迄とは…では私の特技をお見せします。こんな感じですかね……てい!」
驚愕な事が起きた!威力は大した事ないが、まゆものぐらびとぅーんをやって退けたのだ。
この子天才型か!?
「す、凄い!まゆもちゃんの魔法を再現する人初めて見たよ」
「とんでもない才能ですよこれは」
「素晴らしいぞよ!!それならこれも是非真似るのでぇぇす!水龍しゃぁぁん!!」
これまた立派な水龍さんをお出しになられた。お次のまゆもさんは15分後でお願いします
「す、す、素晴らしいです!先程のぐらびとぅーんもそうですが、私……魔法で完敗と感じたのはこれが生まれて初めてです!ま、まゆも様!!私を弟子にして下さい!!」
あらやだ、まゆもさんのお弟子さんになっちゃいました
「うにゅ、アチキの修業は…厳しいぽん?」
そう、僕等と違ってまゆもさんはあまり王族にも気を使わない。
でもなんか満更でもなさそうだから良しとするか、お姫様も目をキラキラさせてるし
そうこうしている内に依頼場所の畑に辿り着きました。
みーサーチだと……既に居やがるな、まだ雪の溶け切ってない状態でも来るなんて迷惑な野郎だぜ。
って事で作物に被害が無いようスムーズに
「乾坤一擲、ぐらびとぅーん!!」
おぉーーい!!?何してんのこのお姫様??
「まゆも師匠!どうでしたか!?」
「う、うにゅぅ…さっきより威力は増しておって悪くはにゃいの。でも……」
「でも……?」
「あの…エリス様、作物ごと潰してしまうのはちょっと」
「へ?」
その後、ギルドに説明して依頼主に直接俺とクリスで謝りに行き、作物代や生活の補償金等を払ってなんとか丸く収めました
「も、申し訳ありません!!私ったらつい…」
「い、いいんですよ。最初は誰でもミスはするもんですから」
「そうですよエリス様、俺達も大概何かしらやらかしてますからこのくらいじゃ問題無いですぜ」
「ありがとうございます…少し風に当たって来ますね」
1人になりたい時もあるだろうからね、ひっそりと大きめの結界を張っておこう
「皆様、誠に申し訳ありませんでした。どうか大目に見てもらいたい所存です」
「大丈夫っすよ、本当に俺達って結構やらかしてる時あるからちょっとのミスで人に言えるような立場じゃないんですよ」
「ありがとうございます……よろしければ少し我が国の現実を話してもよろしいですか?モリウス殿もある程度は知ってると思いますが流石に他所の深い話まではして無いと思いますがゆえ」
「なんでしょうかね?よろしければお聞かせ下さい」
メロにゃんは気になったのか真っ先にお聞きになるモードへ
そしてそれは思ったよりしんどい話だった。それとこの話断らなくて良かったなってちょっと思える話でもあった。
この既に決められた政略結婚、実のところあまりハッピーな流れではないっぽい。唯一の救いは向こうの王子個人に対しては特に思う所なんかがある訳では無いという点だそうだ。
まず去年の王様達の死亡は流行りの病を拗らせたとあるが未だ懐疑的な部分もあるそう。
これだけでも悩ましいのに事態は更に面倒な事に、それはトルクスメシアとイストの国境付近にある魔王軍の拠点が数年前から徐々に弱体化していて、ついに半年前位前に完全に撤退したというのだ。
だからなんだという話だと俺やクリスとまゆもも思ってたと思う、メロニィは何か察してたっぽいけど。
ここで問題なのなトルクスメシアとイストの関係だ。
隣国とは何処も一緒なのか基本的に仲は悪いもので、どうやらここも例外では無いらしい。
ざっくりいうと大昔は権威が強かったイストの機嫌を伺ってたトルクス、しかし単純な資源等の差でどんどん強国になるトルクスと、砂漠という厳しい国で貧弱になってくイスト、立場は逆転したがトルクスがグラン帝国やソウセンと肩を並べるレベルだった頃は強者ゆえの余裕や、かつては支援されてた事もあり仲は良好だったようだが魔王軍の台頭や、内地の半端な平和による怠惰で国力は下がり、まだかろうじて大国としての面子はあれど今ではかなり落ちぶれてしまってるのがトルクスなんだそうで、その落ちてくのと比例するように関係は悪化していったらしい。
ここで近年、実際には大昔からイストの王家は周知してた話ではあるがこの国の命とも言えるアスラ川という大きな川の上流、トルクスとの国境付近も被る山脈で実は黒鋼鉄と呼ばれる鉄が大量にあるとの事。
この鉄は魔力に強く武器を筆頭にあらゆる物に役立つ鉄とされている物だ。だがこの鉄を採取、錬成等をする時大きな問題がある。それは環境破壊。
歴史上、実体験による失敗もあってか欲深そうな国や完全独裁国家をして、この鉄の採取に関しては決して無茶をしない程この鉄の採取は環境によろしくないのである。
世界全体で見ても採取場所は例外なく人里離れ、水源が、無い、極力不毛な地でしか採取が行われていないらしい。
不毛な地……落ちぶれたとはいえ大国であるトルクスにとってイストという国…砂漠の国は、不毛な地みたいなものでありトルクス側がこの黒鋼鉄の採取に着手しないかと何年か前に交渉しだした事で関係が著しく悪化したんだそうだ。
その山脈付近では小競り合いも起きてたりするほど過熱してたりもしたとか。
イスト側は当然自国の土地というか生命線である川の水を汚染されるのを許可する訳が無いというのと、そもそも国家機密だった黒鋼鉄の存在をトルクスに知られたという事で完全にトルクスを敵視していた。
対するトルクスはというと、かつてはバチバチだった筈の、イストとは反対側で陸つながりであるソウセンとの関係が年々かなり深くなってたり、持ち前の軍事力で魔王軍の砦を攻めたり、軍事演習でその力を見せつけたり、トルクスでは土地が充分あるからわざわざ砂漠で苦しい生活する必要もない、等の噂をイストに流したりと…戦前みたいな状態だったのだ。
このトルクス側の話に惹かれたイスト国民は一定数以上居たり、国家機密で守られてた弊害からか国民や下手するとトルクスのお偉いさんもこの鉄の採取による環境破壊の影響を軽視してる部分があるとかなんとかで黒鋼鉄採取にそこまで否定的ではなく、イストの国民が今の王女に期待してるのはむしろトルクスとの融合、とまでは言わないまでもその資源で豊かにして欲しいのだろう、との事。
「王女が結婚を決意する一番の理由はこの黒鋼鉄の開発阻止です。古より続く由緒正しい我が国を乗っ取るなんて話になれば世界も流石に黙ってないでしょうから少なくとも結婚してすぐ属国のようになる事は無いと思われます。その間にこの黒鋼鉄の開発だけでも阻止する流れに持ち込む事こそが王女が心に決めた事なのです。黒鋼鉄という資源さえ使えなければこんな砂漠の貧困国は汚名を被ってまで欲しがらない筈ですから」
なんて健気な、素晴らしいお姫様なのでしょう…アカン、ちょっと涙腺が
「ア〜スラ〜の恵みよ〜イ〜ストのた〜みよ〜♪」
「お、お姫様の歌声が聴こえるよ?とても綺麗な歌声だね」
「アチキの弟子のお姫様は素晴らしい姫だったんやでぇ」
「最初見た時はまたみーさんが別の女に…なんて思ってましたが失礼な事を思ってしまいましたね」
そんな事思ってたのか!?それは流石に俺にも失礼だろ!まあ、王女様なんて属性さして興味なかった筈だけど悪くないかなぁとか思ったりしたんですけどね




