雨の午後はヤバくて 1
「で?コケッコを無理矢理詰め込んで運営されないように手っ取り早く養鶏場まで破壊した、という訳だな?バカなのか?」
どうしてこうなった…確かに良くない、良くないけどそこまで理にかなってない話では無いはず。
それともあれか?俺の感覚が狂ってるのか?確かに建造物を気軽に破壊するのはやり過ぎたかも知れんがあのスタンピードは本当にヤバかったんだよ
「だからそうするのが手っ取り早い程ヤバかったんだって言ってるじゃないすか!」
「お前な…もう少し考えて物言え。確か転生者とか言う話だったな?俺も警察だから多少はその辺の話も知ってるが…お前の世界でどうだったかは知らん、だが少なくともこの世界じゃ何の裏取りも無く一方的に尋問なんてしないんだよ」
「は?裏取りって…誰か何か言ったのか?」
驚愕な事を聞いてしまった、誰か何か言ったのか?
だとするならむしろ正当性が分かりそうなものけど…裏取り者とか俺をハメようとしてる奴でも居るのか?どうしよ…なんか怖くなってきた。
連行される時冒険者達は勿論、意外にもカリーネさんも熱く抵抗してくれた訳だけど、むしろ話が早くなると思った俺は余裕綽々で率先して連行されたんだけどこうなるとちょっと怖いですよ
「コチラにも守秘義務はある。あくまで双方の意見の食い違いがあるので決定的な事は言えんがお前の建造物破壊は明らかに度し難いんだよ。報告では無茶な運営なんて上がって無いしな」
クッソー、コイツら無駄にちゃんとしてやがる。あの牧場的な所の崩壊には言及して来ない所がちゃんと法的な物を守ってる感があるな。
その気になったら逃げるけど一気に生き辛くなるで出来ればちゃんとカタをつけたい
「あんたら俺の事は知ってるのか?あの魔王軍の将軍を蹴散らした男だぜ?そんな俺があんな選択肢を選ぶ程には危険だったからやった判断だぞ。小言を言われるのは仕方ないにしても逮捕されるのはおかしな話だろ?」
「貴様の事は分かってる。レベル3なんだってな?でも主戦力だって話でチグハグではあるが大事なのはそこではない。目撃者の話では貴様が魔物化したコケッコを千切っては投げみたいな感じで無双してたと聞いている。本当にそんな脅威だったのか?冒険者歴の長さと実績で信頼ある2パーティーも同じ様に脅威と報告は上げてるから牧場の崩壊迄は納得するしか無いがその後の破壊は既に事後での行動だそうじゃないか?そんなのが許される訳ないだろ」
うわぁ…目撃者さんは随分詳しく見てるんすね、何処のどいつだ!?
「弁護士呼べ!そしてちゃんと調査して貰おう!褒められた事ではないかもだけど決して的外れな破壊ではなかったと証明してやる!」
「おい、アレ持って来い」
「は!」
アレ?アレってなんすか?なんか怖いよ?
「これを見たことあるか?」
そうか、警察なんだから嘘ぴょん君は持ってるか
「嘘ぴょん君だろ?使うがいいさ」
「では改めて聞く。コケッコの魔物化は本当は大して脅威ではなかった?」
「いや、アレはヤバかった」
ぴょん
は?
「ちょっと待て!! 嘘は言ってねーぞ!!」
「では次!養鶏場を破壊した理由は正直言って正当性は無いな?」
「んな訳あるか!百歩譲って悪手だったとしても少なくとも的外れでは」
ぴょん
「ふざけんなよ!!!絶対おかしいから!!!こんなの不正だ!!」
絶対おかしいだろ?まさかこの流れで中世みたいな理不尽な取り調べになるとは思わなかった
「コレよりこの男を重要参考人から容疑者に変更する。手錠して檻にぶち込め!!」
その手錠はまさかの魔法を封じる高級な手錠でした。どうしよ…超必殺ルピン脱獄が使えないではにゃいか…いや、やれない事もないけど。
これまでなんやかんやと上手い事異世界生活を過ごせてたのにこんな落とし穴があるとは…まあ不幸中の幸いなのがそこまでショックを受けない事かな。
生前、かなり若い頃はヤンチャしてて実際捕まって檻にブチ込まれた事ある経験を既にしてるから割と冷静で居られます。
ただ…やっぱこの辺の事は日本より進んでないのか、とても寒いです。
こんな藁とボロ布で過ごさなきゃなのか、トイレってまさかその穴にしなきゃいけないの?尊厳0じゃないすか
「ほら、飯だ!魔王軍将軍をやっただかなんだか知らねーが落ちぶれたもんだな。まあ死罪になる程の事は無いだろうからこれからは大人しく生きるんだな」
うわぁ…パン一個かよ、しかも唾吐きやがった。許せん!が、なんかもう色々疲れたから今日はもう寝よう
翌朝、寝心地最悪で寒いせいか寝ては起きてを繰り返してようやく熟睡出来そうになった所で聞き覚えのある声がした
「よっ、前科者!調子はどうだ?」
やって来たのはせいらさんだった。なんだろう、この安心感は…流石姐御たぜ!むしろ女神様!!って前科者は酷い
「前科者は酷いっすよ!それより聞いて下さいよ、なんかもう色々」
「冗談だよ。ホレ、帰るぞ」
「え?」
何この人…マジで女神様だったのか?
「しかし姐御がどうして?」
「皆から聞いたぜ。安心しろ、とりあえず身柄は私が預かることにしといたからよ」
「あ、あ、姐御ぉぉぉ〜!!ありがとうございますぅ!!今度姐御の喜びそうなにゅぐりもんを考えておきます」
「お、落ち着け!てかお前の事だ、実際の所そんな絶望してた訳でもないだろ?」
むしろ意外と心細かったんだけど、それよりせいらさんに纏わりついてる事にツッコミがないのは気を付けないとだな、クセになってしまいそうだし。
そんなやりとりをしていると昨日取り調べをしてた人がやって来た
「くっ…ヤマト村の大物に頼れたからと言って調子に乗るなよ。貴様のやったことは立派な犯罪なんだからな」
どっちかなとは思ってたけどこの人はただの生真面目なちゃんとした刑事さんっぽいな。
パンに唾吐いて来た奴とは違うっぽい、多分ヤマト村の大物の前でこんな事を普通は言わないというか言えない思うのよ、普通は
「んん、ちょっと待て?なんか違和感あるな。さっきはネタで言ったがここまで言われる程犯罪者でもないだろ?」
「俺にもよく分からないんすけど嘘ぴょん君が反応したせいでコケッコが脅威だったって話すら嘘扱いされてるっぽいんすよね」
俺はありのままを気軽に言っただけだったのだが…
「は?」
なんか空気が一変しました。そんな要素ある?
「どうしました?」
「そこのお前、今外にいる私達の仲間をここに連れてこい」
「え?ええっと…」
「すっとろいわ!とっとと行け!みーの面会とか言えばいいだろうが!」
「おい待て、いくらヤマト村の人だからって部外者を勝手にここに」
「少し黙れ」
おおぅ、姐御がなんか激オコですよ。俺はとりあえず大人しくしておこう
せいらさんが署内に皆を呼んでからこの刑事さんや署長さん、それから幾人かの偉い人や関与した人を集めて緊急会議が始まったのだ、内容は嘘ぴょん君改造の疑いだ
よく考えれば確かにそうなんだけどこんな凄い魔道具を悪用されたら色々アカンという事で嘘ぴょん君の管理というのはかなり厳重かつ使用者の資格や研修、技量なんかもキチンと精査するくらい厳重な扱いらしい。
嘘は全て見抜ける反面、嘘と自覚が無い事は反応しなかったりもするので尋問の技量なんかも問われたりする代物で使用時のデータも記録してる程だったりするそうな。
そしてこれを悪用するのは大罪であり、これを卸してるヤマト村に牙を剥いてると思われても仕方ないとの事。
早速昨日使用された嘘ぴょん君の調査をしてみた所案の定弄られていた。
というより番号がふってある訳だけどそこからもう小細工されていて、その嘘ぴょん君が予備に置いてあったのだ。
そういう事も見越してか、嘘ぴょん君を全部自ら回収しに行って、複数個の嘘ぴょん君で昨日と同じ取り調べを同じ人物にやらせてまず無罪と嘘ぴょん君の昨日が正常である事を確認してからみたいな流れを即座に行える姐御は本当に凄いお方だと思う。
そして明らかに隠蔽しようとしてたので偶然では済まされずその場でどんどん調べて行き、すぐさま犯人に辿り着いた。
それをやった犯人はと言うと…俺のパンにつばを吐いて、嘘ぴょん君を持ってくるよう頼まれた警官が犯人だった
「まことに申し訳ありませんでした」
やはりこの刑事さんは悪い人という訳ではなさそうだ
「貴方はまあ、ちゃんと職務を真っ当しようとしただけでしょうからお気になさらず。あの男は駄目だけどな。俺としてはなんでやったのか気になる所だが」
「それなんですがみーさん、実は……この領地を治めてる貴族というのがボルドー伯爵といいまして……あのシオーニの親なんです」
何かが繋がって来た気がしますぞ




