秘奥義は最強で 9
「行くわよ、マーロ」
「は、準備万端です」
「「大溶解」」
しまった、つい口論を聞き入ってて準備万端にさせちまってた。
これはヤバいヤツだ、結界も効かないだろうからコッチも撃つしか
「みーさん、なんか撃って下さい!私が解離させます。そうすればマシにはなるはずです」
いや本当、あんな馬鹿げた口論してた人とは思えない変わりっぷりで。
咄嗟に出した天帝波では抑えるのがやっとで徐々に侵食されてるように見えたがメロニィの魔力解離が効いてくると何とか相殺出来たが、押し切るとかの概念ではなく文字通り相殺して吹き飛びそうになったのでメロニィを抱えてクリス達の居る方に飛んでいった。
クリス達もコチラに向かってたけど今の技をクリス達の方向に放たれてたらちょっとヤバかったな。
やはり魔王軍将軍は侮れん、しかし向こうも悔しそうにしてる所を見るとかなりな大技だったんだというのが分かる、手の内が見えてくれば対処も出来るってもんだ。
なんて思っていたがどうしよ、今飛んだので魔力切れの感覚がまたして来たよ。
そろそろ撤退の決定打になる何かをせねばヤバい…なんて思ってたら
「アチキの出番のようだねぇ」
まゆもさんの御言葉が聞こえました。
何故だろう、その異様さというか異質な感じについ注目してしまうというかなんというか、そして案の定べっぴん将軍様も同じようなもでまゆもを注視していた。
「はなちょんぱ」
トントントン、トントトトン、トン、トン、トトト
どこからともなく聞こえて来るこの滑稽な太鼓?何らかの打楽器の音と共に棒人間の顔がヒマワリのような花を模した蠢く者が沢山放たれたと思ったらとても素早い動きで魔物の身体の中に浸透?してくと、中に入られた魔物は太鼓の音に合わせて踊りというかその都度ポーズを決めてるという動きをする様になった。
何とも滑稽で何処か陽気な感じはするものの割と近くにいたゴツくて強そうな魔物がコレをくらって舞ってる姿の異様さに陽気なんて感じられなくなった。
だってこいつら笑顔だけど泣いてるよ、てかボロ泣きじゃねーか。
まゆもさん、なんでこの怖そうな子達がこんな満遍の笑みを浮かべてボロ泣きしてるのですか?
「キメなのでぇぇぇす!!ぽぅっ!!!」
「「ポゥッ!!」」
「「ぎゃぁぁぁぉぁぁぁぁ!!!」」
「「ひ、ひぃぃ!!」」
この場にいる生命ある者たち全員が悲鳴をあげたと思う。
驚愕な事が起きました、まゆも姫がキメなのでぇす、と仰られると操られてたであろう魔物さん達は皆立ってる状態で右足は前、そして笑顔で両手を上に、V字にキレ良く上げたと同時に……
首が真上に飛びました
パッと見3m位は飛んでたんじゃないかなぁ〜……いやぁ、あはは、アレですね、オーソドックスに頭と首がある生き物ならではなのかも知れないけど、生首が上に飛ぶって…無いわ、無理だわ。
戦闘中だから1個や2個ならそれどころじゃねーってなるかもだけどこんな一気に……大量に一斉に首が飛ぶシーン見掛けたらドン引きですよ。
だがこのまゆも姫様が作ってくれたチャンスを活かさねばならぬ
「み、見たかぁ!!これが我等がまゆも姫様のお力だぜ!!お、お前等調子こいてんじゃねーぞ!!あは、あははは」
情けない話だが生き物の本能として膝がまだカクカクしてる俺…マジでビビってるというか引いております。
でも周りも似たようなモノだから良しとしよう
「そ、そそそ、そうだよ!まゆも姫の力は凄いんだからね!」
「わ、わわ、我々を怒らせるとこのようになるのですよ!」
クリスとメロニィも乗ってくれたようだ。魔物達はオロオロしてる感じがあるな
「ぴっ…ぴっきょっきょっ!ま、まだまだ足りぬぅぅぅ!!」
若干ビビリつつもまゆも姫の所に行った俺はまゆもの膝がカクカクしてるのを見て少し安堵した。
最低限、人の心はあるのだと
てかフラフラだな、決して支えてるようには見えない感じで支えつつ、一か八かやってみるか
「ふむふむ、なるほど!かしこまりました。おい魔物共!我等がまゆも姫はお腹空いたのとちょっと飽きたからそろそろ解散、と仰られている。この意見に不服な者は居るか?」
まゆも本人が若干ビックリしてるけどここは合わせてくれと言いたい
「ふ、ふふふ、そ…そうね。わた、私達もそんな暇じゃないしお戯れはこの辺にしようかしらね…お、おお、お前達!帰るわよ」
ディザベロちゃんはチョロかった
「いやぁ~まゆもっこちゃん助かったよ…って腰抜かしちゃったか。ほれ、立てるかえ?」
「うーにゅ……立てぬぞよ。みーくんおんぶまゆもなのでぇす」
普段はまゆもに過度なスキンシップをすると色々言われるのだが身体能力が高くタフなまゆもが立てないからおんぶと所望して来るというレアな案件だと2人ともケチは付けて来なかった
「流石まゆもです、助かりましたよ。私の中では過去一ピンチだと思ってましたから」
「まゆも姫様々だね!みーくん、ちゃんとまゆも姫ちゃんを丁重に扱うのだよ」
「あの魔法は……今後禁じ手とするぼぅん」
その場を後にしてゆっくりと戻る俺達は少し進むと疲れがどっと押し寄せて来たので休憩してると転身が有効になったっぽいので即座に養鶏場に戻った。
すると既に戻ってたランスさん達パーティーが従業員数人と村人っぽい人達と何やら話をしてるので合流して話を聞く事にした
「魔王軍の大群が居たんですか!?いや、確かにあり得る…魔王軍からしてもコケッコの魔物化スタンピードは手に負えないというのは魔物を食い散らかしてるのを目の当たりにした今なら当然とも言えますし…こういう事例での正確な情報はとても貴重です、お手柄ですよこれは!流石です!」
そういうもんなのか、だが悪い気はしないな。
なんて思ってたら従業員や村人っぽい人達が食い入るように話しかけてきた
「お願いです、皆様はさぞや高名な冒険者と見受けられます。何卒現所長の無茶な運営を止めて貰えませんか?俺達は…ずっとこの養鶏場でやって来たんですが無茶な運営に文句言って追い出されたんだ!あんな劣悪な環境でコケッコを押し込めるなんて見てらんなかったんだよ」
「俺達はコケッコと共に生きてきたんだ、本来なら殴ってでも止めたかったんだが…所長はここらを治めてる貴族と結託してて逆らえなかったんだ」
なるほど、そういう事か
「みーさん、なんとかならないっすかね?私達はA級って言っても所詮はただの冒険者、このレベルの案件で貴族に口出しする程の力は無いんすよ」
だからそんなよそよそしくしないで欲しいなぁ、でもカリーネさんだけでなく他の3人も歯痒そうにしてる所を見るに抗えないんだろうな
「メロニィ、今回の件はどう?貴族に申し立て出来る気するかい?」
「そうですね、今回の件は相当危険でしたので魔王軍の話も含めて王の命令でここら一帯の貴族に色々改善させる事自体は難しく無いとは思いますよ?でも、かなり時間がかかると思います。
まずはこの崩壊した牧場的な場所とかの整備とそうなった経緯がやむを得ない事なので手厚い補償をしてもらうというのが第一なのですが、それは迅速にやれると思います、コレだけの情報がありますのでね。
ただそこに力が入れられるのでその後の運営にまでは簡単にメスが入れられないと思われますよ。むしろ取り返したいという考えでまた無茶な運営をやり出しかねないまであると思われます」
皆黙ってしまった、気持ちは分かる。まずここの整備が第一なのは言うまでもないがそれをやるのはここらを治めてる貴族の懐という事なのだろう。
となるとその分を取り返したくなると言うのは当然なので多少強引に儲けに走るのは目に見える。
止めたい気持ちは山々だし今回の件もそれが原因だから駄目とも言いたいが…領地の運営ってか経済ってそんな単純ではないからねぇ、この話を聞いて気軽に整備してコケッコ減らして平和に、って理想論を誰も口に出さないのはその辺を理解してるからなのだろう。
領主がこの件を目の当たりにしたとかならそんな話も出来るだろうがお偉いさんはあの惨状を目の当たりにしてない訳だから無理があるどころかあんまり言うと大袈裟だなんだとすら言われかねない。
いや待てよ、誰も見てない…養鶏場自体は無事…コケッコ詰め込み過ぎが問題…これはもしかすると手があるかも知れぬ
「皆ちょっと聞いてくれ!いい事思いついちゃったかも知れない私がいるよ」
メロニィの見解から察するに時間はかかるけど無茶な運営そのものにも歯止めをかける事自体は出来るんだと思われる。
要は養鶏場が無茶な運営を出来なくなればいい訳だから今回の騒動を解決した所まで所長なんかは目撃して無いんだったらついでに養鶏場を破壊してしまえば良いと言う考えを提示してみたらビックリするほど快く了承を得られてしまった。
流石に歴史もあるだろうから僅かに残った若いコケッコや卵と一緒に古い所は残して破壊する事にした。
思い入れが無い訳では無さそうだけどそれより新品になる方が嬉しいのか、俺達よりノリノリになってた村人と従業員にはちょっと複雑な想いを禁じ得ない。
だが後から聞くとどちらかと言うと事務所のあるこの建物の方が彼等にとっては思い入れがあるそうなのでそういうものなんだろうと納得しておこう
「創造の前に破壊あり」
等とそれっぽく言いはしたが砦破壊のトラウマがある俺はちょっとビビッて見た目酷く見せる様に屋根や床…というより大元の基礎となりそうな所はあまり壊さず見た目だけの破壊に留めておいた。
あんまり簡単に直るのも本末転倒だから階層に関わりそうな所は筒抜け状態にしたけど
「何その台詞?なんかかっこいいじゃん」
クリス様はこの台詞をお気に召してくれました
「うわぁ…理屈は分かるけどいざ目の当たりにするとドン引きだわぁ。明日師匠達が戻って来たらどう思うんだろ」
「何を言うんだカリーネ、とても合理的な作戦じゃないか」
「一応、専門的な事は分からんですけど基礎になってそうな所は殆ど破壊してないから見た目以上に直しやすいとは思いますぜ。もし予想だにしない全然違う問題が出て来たとしても致命傷にならんようにね」
カリーネさんは俺の事すっかり危険人物扱いしているご様子。ちょっぴり悲しいです。
そんなこんなで実はかなり疲れてた俺達はこの日は打ち上げする事もなく各自泥のように寝てました。
そして翌日、ベルーガさん達も帰って来て事情を説明しつつ改めて打ち上げパーティーをして大騒ぎしました。
これにて一件落着、という訳には行かず翌朝……
俺は逮捕されました
壊して建て直し、なんて簡単なお話じゃなかった様です




