染みる赤、零れそうな青
聞こえた銃声。顔を、体を上げなくちゃならないのにどうも怠くて動けない。
銃声、もしかしたら白州が来てくれたんじゃないだろうか。ぼんやりと靄がかかった様な希望だが、捨ててしまうほど現実主義になれない。痛くて堪らないのだ。頭も、傷も。
「…その程度か、newface」
眉根を寄せ、睨み付けるようにゆっくりと顔を上げた。私の事をニューフェイスだなんて呼ぶのは一人しかいない。
「何故睨む。と言うか血だらけだな」
「うるせぇ死ね」
「newfaceの方が死にそうだが」
クソ、ムカつく。
舌打ちでもしてやろうと思ったが、口まで痺れてきた。
「…、…高みの見物はどうしたの。…そもそも、来るタイミングおかしいだろ…!」
「何故だ、bestだろう?」
「本当に死にかけだよ…!」
ぼたぼたと額からの血がいつの間にか血だまりを作っている。顎まで伝っていて気持ちが悪い。瞳だって、大きく開けられない。
「newfaceに電話した後、うっかり外に出たままだった。newfaceが中にいるのは知っていたが中に入れなかったんだ。言い訳か?」
「長々と話やがって、言い訳以外にないでしょ…」
ありがとうとは流石に言えない。
あんまり事情も頭に入って来ないし、とにかく早く休みたい。
「あのさあ、お二人さん。仲が悪いのは分かったから、そっちの男。僕らの仲間に入るよね?」
「腕だけはまあまあ有るみたいだからね、根性とかは皆無みたいだけど」
今まで黙っていた理由はこれか。双子が怠そうに問いかけてきた。
「そしたらいたのは黄色とお姉さんだし、どっちもボロボロにしちゃったけどね」
「そうそう、おばさんに一発喰らっちゃったけどね」
そう言い終わるや否や、ティナが私の腹を蹴り上げてきた。いきなりの事過ぎて何の反応も出来ない。腹を押さえてうずくまる事しか出来なかった。
「ぐぇ、っぐ…!」
「その力、僕らの為に使えよ。救済措置だよ?お姉さんがいるグズ集団じゃ死ぬだけでしょ?」
「良かったね、中の下で。ちなみにグズ集団は下の下。…それに、もっとおばさんを苦しめてあげる事になっちゃうよ?」
典型的な卑怯者だが、まさか私が引き合いに出されるとは。これ以上の仕事は出来ません。
「勿論、断る。」
「私の意味が…。せめて少しは悩めよ…!」
「newfaceがこれ以上傷付く事はない。」
すると片手に持っていた銃を放り投げ、その間にしゃがんでバングルを嵌め込む。一瞬光ったかと思うと黒のマントをはためかせ、私と同じような騎士の格好に変身した。
「…私のにマントなんてないんだけど」
と言うか、黒を基調とした格好だ。格好良いが、私の言うのもアレだがあまりヒーローっぽくない。
「“漆黒のjudgeman、ナイトブラック”…!」
ポーズまで決めていたが、衝撃が強すぎて口が閉じられない。何から突っ込めば良いんだろうか。
「…アンタは、…いくつなの。」
「魔界年齢で良いか」
「何でもないよ、もう煩いな」
頷くとホルダーから拳銃を取り出し、慣れた様に双子に銃口を向けた。先程まで持っていたのは玩具か何かだろう。これが、コイツの武器。
「…良いか、どんな卑劣な手で攻めて来ようと決して屈しない。それがjudgemanだ」
「めんどくせーの来ちゃったね」
「言っとくけど、僕らは上の上だからね」
双子が同時に手のひらを向けた瞬間、銃声が二発鳴り響いた。
何が起こったのかと思って双子の方を見やると、大きな爆発音と共に土煙を起こしていた。
「…慢心が酷いな。」
「何、今の…」
「改良されている。一般的な拳銃じゃないからな。…今日はfinishだ、彼奴等も戻っては来ないだろう」
一瞬にして追っ払ってしまった。ようやっと開いた口を閉じる。双子が立っていた辺りには血飛沫が床に見える。逃げたんだか当たったんだかよく分からない。
「遠距離の範囲が使える彼奴等と、剣一本のnewfaceは相性が悪い。」
「…でも早いし、強いじゃん」
「近距離でやられたら、オレは満足に打ち込めない」
「まあ頑張れよ」
「いや、…そうじゃない。ちょっと待て、waitだ。そこはnewfaceがやると、そう言いたかったんだが。
」
黒澤が何やら言っていたが、双子が居なくなってどうやら気が抜けた様だ。座り込んでいたが、ゆっくりと床に背を倒した。
「……疲れた」
「だろうな」
「こんな怪我、初めてした。」
「勲章だ」
「だからただの傷だよ」
腹を押さえたまま、ぼんやりと黒澤を見上げる。
「黄川、多分ここにいると思うから…」
「分かった、見て来よう」
言い終わる前に黒澤はステージのある前方まで歩いていった。
そりゃ新参者で強かったら化け物だ。けれど、偉そうに言うならそれなりに強くなくちゃ、せめて自分は守れる様にならなくちゃ。
…そんな事を考えてしまう時点で、毒されている。




