20話:静寂
はいはいはーい!みなさんおはよう。
今日も今日とて筋トレ。正直、もうちょっと筋肉ついてきていてもいいんですけど…まあご愛嬌かな?
それは別によくて……ウィンドバースト移動法が実用的かテストしていきますよー!
さあセナちゃん。起きて。朝ですよ!
「よーし!やってみるか。ちゃんと背中につかまってるか?心の準備はOK?」
「大丈夫だよ。」
そこはOKで返してよー……
「―ウィンドバースト!」
45度の角度でジャーンプ!
fo!風が気持ちいいよ!
「―ウィンドバースト!」
横方向に加速!速いね。
前方に馬車を発見!追い抜いていきます!
「―ウィンドバースト!」
これは最高!
……とすぐに隣町・ザバナビアについた。
40分くらいかな?だから……時速120kmくらいかな?
速いなー……え?120km/h!?
グライダーあったらすごいんじゃない?
「でも魔力がもうすぐ無くなるな……」
「休憩しよっか」
そうじゃな。ちと休憩するかのう……
「あー!見つけました!やはり私が見た未来の通り!運命なのです!」
なんかやばい人がいる。目を合わせちゃいけない。理由は狙われるから。
「そこのあなたです!運命の方なのです!私の未来に選ばれてしまった以上、私からは逃げられないのです!!!」
顔を近づけないでください。人違いだと思います。そうじゃなかったら本当に頭がおかしい……
「お、俺ですか?……」
「そうだと何度も言っているじゃないですか!あー…あなたは今から……ふふふ……」
気持ち悪い笑顔だ。生理的に受け付けられない。
「……ねえツム、知り合い?」
「いや全然……怖いよ……」
「私はあなたを知っている!だから私たちは知り合いなのです!」
それはね、知り合いじゃなくて一方的な思い違いだよ。
「その顔......私の未来をお告げになる絶対神を否定するのか!?醜いやつめ......しかし、やはり運命なのか...私がお前を殺すのは!」
はい……?
……?
?
脳をフル回転してもわからない。こいつが言っていることは支離滅裂だ。
「我が絶対神よ!制裁の力を!」
なるほど。これはそうだな……命の脅威だ。しかしまだ人を殺したことはないんだ。しかし……こいつが本気なら正当防衛だ……くっ……
そう悩んでいたら殺される。決意を固めろ、ツムエール。
「ふむ……こないのですか?ならばしかたない。ぐふふふ……ああ!感じます。神の力を!」
よし、俺はやる。
「―エレクトリック!」
電流を流した……だが吸収された。黒いもやに。
「無駄なあがきはしないほうがいいかもしれませんよ?ぎゅふふふ…」
なんかな……だんだんこいつの笑い方きもくなってないか?
「はっ!」
くる!もやが俺を包む……
「―ウィンドバースト!」
「―アイシクルブレード!」
一気に詰める。こういうやつは距離を取らせたら負けだ。
「私が闇だけを使うと思ったのですか?」
あいつの手に短剣がある......このまま行けば絶対に切られる。
しかし止まれない……
「ぐ……ああ!」
脇腹ザクっと。痛い。
「これが……俺の日本刀だ!」
肩から入って……入りませんでした。
カウンターのパンチ。腹にくらいました。
「ぐはっ……―ウィンドバースト!」
とにかく距離を取ってリセットしなければ。
「―ヒーリング」
死ぬ!ほんまに。危なかった。
「―ライトニング!」
頼む!……マジでさ……めんどくさこいつ。
「―アイシクルスプリッター!」
またさあ、もやにはじかれてるよ……しかし足が凍った。チャンス……!
その時、透き通った氷の槍が飛んで行った。そのままあいつの腹に……
「セナ!」
うちで唯一の無詠唱魔術師さん!助けてくれるんですか!
「ぬふふふ……そこの女は見逃してあげようと思ってましたが……にゅふふふふふふ」
「危ない!」
セナを突き飛ばした。そして黒いもやが俺を貫いて……
「掴んだ!ああ!神よ!あなたのお告げの通りにやればすべてがうまくいく……」
心臓が掴まれている気がする。くそ……
しかし透き通った氷剣が闇を切る。
氷は光を反射し、闇が消える。
同時に、貫かれた体は光と共に回復していく……
しかしわかった。こいつは氷が弱点だ。ということは昨日練習した魔術の出番だな。
「くらえ!」
強烈な氷弾の嵐。どんなやつでも耐えられないだろう。
「なぜだ!我が神はこんな魔術のことを教えてくれなかった!私は神のご加護があるというのに!なぜだなぜだなぜだなぜだ!」
頭を掻きむしっている。それとぐちょぐちょと肉に何かが刺さる音がしている。
周囲に血が飛び散って……
「ああ神よ、なぜ私を見放したのだ……忠誠を誓ってきたではないか!ああ……せめて…!」
―その瞬間、爆発が起きた。気づく間もなく街を飲み込む。視界が白くなった……しかしそれでもセナだけは……
最後に見えたのは、空よりもずっと淡い水色の髪だった。
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あーあ。せっかく楽しい異世界だったのにな。
せめて20歳までは生きさせてくれてもよかったじゃん。
さてと、ここはどこなんだろうな。
白いタイルの床が果てしなく続く。
静寂の世界。
しかし空はどこよりも澄んでいた。
にしても……俺の体はどこに行ったのやら。
しかし三途の川も無いとは随分と質素な場所だな。
あれ……?だんだんと白い光に体が取り込まれて―
「……ねえ…はやく起きてよ……起きてよ!ねえ!」
随分と騒がしいな。死に際くらい静かにしてくれないか。
「なんで……!どうして!はやく起きてよ……お願いだから……」
起きるも何も死んでるからな。俺には何もできないさ。
「まだ気持ちも伝えれてないのに……ねえ起きて!……うう……」
泣くのは見過ごせないな。このままタイルで寝るつもりだったが仕方あるまい。目を開けてみるか……
「ん……?ここは……」
あれ?俺死んでない?じゃああそこはどこなの?
「!…よかった……」
飛び乗ってきた。死にかけてたやつにそれはひどいが気持ちはわからんでもない。
「セナ……」
「私の前からいなくなっちゃうんじゃないかって……置いて行かれるんじゃないかって……」
泣くなよ。確かに俺がいなくなったら1人旅になってしまうけどな。
正直、俺は1人じゃここまで来れてないかもしれない。セナのおかげだな。
「ところで……セナは……大丈夫か?」
「私は大丈夫。守ってくれたから……」
俺の肉壁は機能したのか。よかったよかった。
「それよりすこしは自分のことも気にかけて?命は1つしかないんだよ?」
「それもそうだな。ごめん」
すこし自分のことをないがしろにしていたかもな。
しかしあの場所、なんか見覚えがあるような……
まあいい。生きていたことにありがたみを持っていよう。
明日からはいい日になりますように。




