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無能と蔑まれた装備職人、実は【動物行動心理学】の天才でした〜天災と呼ばれるドラゴンを現代知識でしつけたら、ただの角が生えた犬になりました〜  作者: マーゴン
第1章 物流革命

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第26話:雪山で泣く勇者パーティ

一方、レオンたちが平原で穏やかな時間を過ごしていた頃。

場面は一転して、極寒の地――ガラルド帝国最北端の大断絶山脈の深部。

猛吹雪が吹き荒れる白魔の世界で、勇者アルベール率いる『白銀の獅子』のパーティは、早くも重大な危機に直面していた。

「使えないトカゲめ! 立て! 命令を聞けと言っているだろうが!!」

アルベールは激昂し、腰の聖剣の鞘で、うずくまるアースドラゴンの硬い鱗を何度も殴りつけていた。

本来であれば奇跡の魔獣と呼ばれる誇り高きアースドラゴンだが、今の姿にその威厳は欠片もない。

レオンという「完璧な防具・魔獣のメンテナンス要員」を失ったことで、魔獣の心と体は急速に崩壊していたのだ。

レオンが日々行なっていた、骨格の歪みを正すマッサージも、精神の摩耗を癒やす特製おやつもない。

ただアルベールの強引なドミネイトの魔力を浴びせられ、低体温症のまま強行軍を強いられた結果、アースドラゴンは限界を超えたストレスによる「学習性無力感」に陥っていた。

立ち上がることを完全に放棄し、狂ったように自身の尾の先端をガリガリと噛みちぎろうとする凄惨な自傷行為を繰り返している。

「アルベール、もう無理よ! 私の防魔結界も、この極寒と猛吹雪の前では魔力消費が激しすぎるわ!」

宮廷魔術師のルクレツィアが、紫のローブをかき合わせながら悲鳴のような声を上げた。

彼女の手には、ボロボロになった布の切れ端が握られていた。

それは、かつてレオンが山を降りる際にテントに残していった、防寒外套の『端切れ』だった。

ルクレツィアは、凍える指先でその端切れの繊維構造を解析し、絶望に顔を歪めていた。

(嘘よ……。極寒蜘蛛の糸を、ただ編んでいるだけじゃない。魔力も使わずに、熱の対流を完全に遮断し、物理的な衝撃を分散させる絶対的な計算式ロジックで編み込まれている……! 私の国宝級の防魔結界すら凌駕するほどの強度が、ただの裁縫で実現されているなんて……!)

自分たちが「無能」と見下し、雪山に捨てた男が、どれほど異常な技術を持っていたか。

それに今更気づき、ルクレツィアの背筋に極寒の風とは違う冷たいものが走った。

その後方で、聖女エレノアは純白の法衣を風に靡かせながら、冷ややかな瞳でその惨状を静かに観察していた。

(……愚かね。アースドラゴンの精神が崩壊していることすら気づかず、力でねじ伏せようとするなんて)

エレノアは、他者への憐れみを装うのが得意だったが、その本質は極めて利己的で聡明だった。

彼女は、レオンがいかに完璧に魔獣の精神と肉体をメンテナンスし、このパーティを裏で支えていたかを完全に理解していた。

(この勇者は、レオンという絶対的な土台がなければ何もできない、ただの無能だわ。このままでは全滅する)

エレノアは唇の端をわずかに吊り上げると、吹雪の音に紛れさせて、アルベールやルクレツィアに向けていた治癒・支援魔法の出力を、気づかれないレベルまでスッと下げた。

(ごめんなさいね、勇者様。私は自分の命が一番惜しいの。せいぜい、その狂ったトカゲの盾になってちょうだい)

自身の生存を最優先とするエレノアは、密かに魔力と体力を温存し始めた。

勇者パーティの崩壊は、もはや誰の目にも決定的なものとなっていた。


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