第22話:シルヴィアの旅立ち?
避難が終わり魔術師達が水魔法による消化をおこなって行く。
すべてが収まったとき、時計台広場には、地鳴りのような歓声と称賛が巻き起こっていた。
「す、すげえ……! 人も、魔獣も、みんな無事だ!」
「あの黒い犬、子供を助けてくれたぞ!」
「あのおっさんの指示のおかげだ!」
「可愛いワンちゃーん!ありがとう!」
それは圧倒的な結果であった。
レオンとクロの行動と町民たちの声を目の前で見たルバート次長は、ついに観念したように、口を開いた。
「……見事だ。ドミネイトなきテイム、その安全性。これ以上ない形で証明してみせた」
ルバート次長は沈黙を破り、煙の燻る広場の中でレオンへと歩み寄った。
「認めざるを得まい。レオン、お前への感謝状と謝礼金、およびその魔獣――『クロ』への、大型犬としての国家公認『従魔登録証』の発行を、ここに認可する」
「ありがとうございます、ルバート次長」
レオンはいつも通りの物静かな敬語で、深く頭を下げた。
翌日、認可証が手渡された直後、シルヴィアがルバート次長の前に一歩進み出た。
「ルバート次長! 私は……私は今後も、国家監査局の『天災級魔獣の継続監視員』として、レオンさんとクロちゃんに同行することを志願します!」
ルバート次長は露骨に顔をしかめ、盛大な溜息をついた。
「シルヴィア。お前は我が局でも極めて優秀な人材だ。ガラルド帝都での重要な任務が山積みだというのに、事実上の長期離脱など、私としては認める事などできんのだが?」
「これは国家の未来のためです! ドミネイトに代わる新しい使役システムの推移を現場で見届け、報告を続けることは、何よりも優先されるべき任務です!」
シルヴィアの目は、本人が恋心に気づいていないがゆえに、半ば無理やりな要求を通そうとする子供の癇癪のような盲目的な熱意に満ちていた。
ルバート次長は、彼女がすでにレオンとクロに心底惚れ込んでおり、何を言っても聞かない状態であることを察した。
「……フン、勝手にするがいい。ただし、どこにいても出来る仕事はやる事。そして定期的な報告書の手を抜くことは許さんぞ」
「はいっ! ありがとうございます!」
嬉しそうに胸を張るシルヴィアの横で、レオンは少し困ったように眼鏡の位置を直し、クロは新調された『お散歩レトロドットのフード付きセーラーベスト』の心地よさに身を委ねながら、レオンのクリッカー音とともに、いつもより少し多めの特製おやつを貰い。
「ハフッ!」と至福の表情で尻尾を振るのだった。
職人の叩きつける圧倒的な正の強化のロジックが、中部の中心都市グランバザールにおいて、確実に、そして優しく世界を変える基盤を確立した三週間であった。
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