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無能と蔑まれた装備職人、実は【動物行動心理学】の天才でした〜天災と呼ばれるドラゴンを現代知識でしつけたら、ただの角が生えた犬になりました〜  作者: マーゴン
第1章 物流革命

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第19話:奇跡の装具

そして12日目、約束通りレオンの工房へ、行商人のトトが、老いたアースミュールを連れて訪問してきた。

長年の無理がたたって、アースミュールの背中は無残に湾曲していた。

「トトさん、少しその子を見せてもらってもいいですか」

声をかけたのは、クロを連れたレオンだった。

「レオンさん……。でも、この子はもう荷物を運べねえんだ」

「大丈夫です。これを試させてください」

レオンが取り出したのは、オルセンの工房で完成したばかりの『マルチフィットサスペンションキャリア』の試作品だった。

アースミュールの体に優しく乗せ、首、胸、胴のスライドアジャスターを合わせる。

そして、レースアップシステムの紐を、レオンがキュッと引き絞った。

レオンが優しくアースミュールの脇腹を叩く。

その瞬間、アースミュールは驚いたように両耳をピンと立てた。

湾曲していた背骨が、ベースキャリアの絶妙な締結圧によって最適な位置まで補正され、身体にかかる負荷が分散されたのだ。

アースミュールは、信じられないほど軽い足取りで、トントンと地面を蹴って歩き出した。

「お、おい……嘘だろ? お前、痛くないのか!?」

トトが目を見開く。アースミュールは嬉そうにブヒヒィンと鳴いた。

「……こんなことが!これなら明日からまた働ける……!お前のためにお金を用意してやれるよ……!」

トトは涙を流してレオンの手を握りしめた。

レオンは更にトトに対してドミネイトなしでの意思疎通の方法を手ほどきし、特製のおやつと痛み止めの軟膏を分け与えた。

この後しばらくして、行商人たちの間で、「レオンの仕立てる装着具は奇跡を起こす」という口コミが、じわじわと広がっていった。

この町に来て14日目の夕方、ついに通達を受け臨検を翌日に控えたレオンの元へ、ルカが再び走ってきた。

「おっさん! ガストンの旦那の商会が、おっさんの作った装着具をつけた魔獣で今までより沢山の荷物を運んで大儲けしてるって、大通りの商人たちが悔しそうに噂してたぞ! おっさん、有名人だな!」

「あとさ、昨日、シルヴィアの姉ちゃんがおっさんの工房の裏で、ビジョンクォーツで撮ったクロの写真を隠れて見つめながら、鼻血出しそうな顔してニヤニヤしてたぜ。あの魔道具って高くて普通の人は買えないからきっと監査局の備品だろ?通報した方がいいんじゃねえか?」

ルカはひとしきり息を弾ませて話すと、バディのおやつと自分の分の芋をもらい、またすぐに目を輝かせた。

「で、おっさん、次の教えをくれ! バディと『ヒール』の練習をしてるんだけど、どうしてもバディが前に飛び出しちゃうんだ!」

レオンはルカの持つ手作りのリードの握り方から見直し、優しく手首を返してみせた。

「リードを力で引っ張って従わせようとするのは、ドミネイトと同じだよ。バディが前に出そうになったら、一瞬だけ手首を返して軽いショックの合図を送り、正しい位置に戻ったらすぐに褒めてあげるんだ。バディに、君の隣が一番安全で、心地いい場所なんだと教えてあげるんだよ」

「力じゃなくて、心地よさ……。分かった、やってみる!」

ルカはバディに優しく語りかけながら、一歩一歩、歩調を合わせる練習を繰り返した。

その姿は、かつて孤独に傷ついていた孤児と魔獣ではなく、確かな絆で結ばれた「小さな家族」そのものだった。

しかし、その平穏を切り裂くように、三週目、ついに『その時』が訪れる。


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