第10話:ミシンで正す
投稿を始めて1週間が経ちました。
この作品に出会ってくれてありがとうございます。
現状はどう届いているのか日々不安でいっぱいです。。(笑)
もしよかったら評価やコメントなど、何かのアクションをして頂けるととっても嬉しいです!!
レオンがロビーから通りへの扉を開けると、そこは凄惨な状況だった。
「役立たずどもが! 誰かこの狂った猪を止めろ!!」
高級な毛皮を着た肥満体の老人――中部物流を支配するガストン商会長が、脂汗を流しながら悲鳴を上げていた。
通りの中央では、全身が鋼鉄の剛毛で覆われた巨大な魔獣アイアンボアが、狂ったように咆哮し、建物を粉砕している。テイマーたちが必死に魔力を放っているが、ボアはいかなる精神支配も受け付けない。
レオンは静かに歩み出た。
「……あなたはかの高名なガストン商会の長、ガストン様とお見受けします。単刀直入に申し上げますと。そのボアが暴走したのは、あなたのせいです」
「なんだと、お前は……?」
「そのボアの脚を見てください。おそらく『亡霊の急斜面』あたりを過積載で走らせたのではないですか?股関節に重度の炎症が起きています」
亡霊の急斜面――それは、山脈を迂回する通常の平坦な街道に比べ、移動距離および時間を三分の一に短縮できる圧倒的なショートカットルートだ。
ガストン商会は、強力な大型魔獣のパワーを用いて、リスクを織り込み済みで常に莫大な時間的利益を得るための専用主要ルートとして使用していたのだ。
「激痛のなかでドミネイトにより無理やり走らされ続けたため、自己防衛のためパニックを起こしたに過ぎません。恐れながら、完全にあなたの運用ミスです」
レオンが指摘した瞬間、アイアンボアがレオンの存在に気づき、突進を開始した。
その巨体がドミネイトの魔力を過剰に過給させ、全身から高密度な魔力の力場を放ちながら突進する。
排した空気が超高圧の衝撃となり、すれ違うだけで建物の窓ガラスをことごとく粉砕していく。
だが、レオンは一歩も動かず、魔力による被害を防ぐために
高山病にならないよう自作した、周囲の魔力をある程度遮断し、気圧と酸素濃度を一定に保つためのマウンテンブリーザーを起動させながら、言葉を発した
「クロ。……頼めるか?」
レオンの右側に寄り添っていたクロの目が竜の縦スリットの物へと変化し、気圧さえも大きく下げてしまう黒竜の覇気を、ボアめがけて照射した。
――ドブシャァァァァッ!!!
突進していたアイアンボアの巨体は、地面に激しく卒倒した。
「クロ、ステイ」
クロが指示に従い覇気を収めると同時にラブラドールレトリバーの愛くるしい潤んだ瞳に戻り無力化されたアイアンボアは、恐怖から解放されたことに深く安堵していた。
――パチリ!
空間にクリッカーの澄んだ金属音が響き。レオンの手からクロとアイアンボアのそれぞれに特製おやつが放たれる。
それを本能的に咀嚼したアイアンボアは
野生の猛獣としての威厳を保とうとしているように
「グルル…」と喉を鳴らし、レオンに対して敬意を表するように一歩下がって静かに佇んだ。
「ガストン商会長。あなたが恐怖で縛り付け、壊しかけていたこの物流インフラを……これより、私のミシンで正して差し上げましょう」大きいカバンが静かに開かれた。
補足情報
・ アイアンボア
容姿: 全身が鋼鉄の剛毛で覆われた巨大な猪。
生態: 気性が荒くドミネイトをするのが難しい。悪路も高速で駆け抜けるガストンの物流の要。
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