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第二十四話 色々再会

閲覧ありがとうございます!

また、ブクマ等々嬉しいです~;;

励みになります!!

 

 なぜロメオが半年前の依頼書を持っていたのか。

 それは、破棄しにきたからだそう。


 半年前、ロメオはあのクエストを受注していた。

 何となく、というのが彼の言い分だ。

 あの時は私が半年間も眠り姫になるなんて思っていなかったそうで。


 昨日、依頼書が部屋の隅でひょっこり見つかったらしい。

 ずっと持っているのは嫌なので、渋々依頼を破棄しに来たという。

 ロメオは何てことない風を装っていたが、根が真面目な彼は図書館から借りた本を必ず返すタイプなので、さぞ慌てた事だろう。


 そんなこんなで、今に至る。


「オマエ、本当に戻ったのか?」

「そんなに信用ならないなら何か質問してみなよ。猫舌穴掘りワンコ」

「穴掘り……? ちっ。失せろ」


 悲しいかな。

 彼は今日一番の嫌悪を示していた。


「とにかく、これでこの屋敷で失踪したローザの手がかりを集められるかもしれないね」

「おい、ローザって誰だ?」

「あ」


 彼も共犯者にしてしまおう。

 私はヘルバートとアイコンタクトを交わし、ことの経緯を彼に話した。

 案外、彼はこの突拍子もない話をすんなりと受け入れてくれた。


「なるほどなァ。オレも聞いたことがあるぜ。黒魔法ってやつだな。……じゃあ、簡単じゃねぇか。シャイラに……」


 何やら解決方法がありそう、と思った矢先。

 ヘルバートが彼の言葉を遮った。


「ロメオ」

「…………そーかよ。ヘルバートさんが良いなら、オレは何も言わねぇぜ」

「何? ヘルバートは何を良しとしてるの?」

「俺は何も言わねぇよ。……ヘルバートさんは自分の手で犯人をとっ捕まえて、魔法を解かせたいんだとよ。シャイラが解呪したら、オマエとローザの繋がりが失われ、そいつを捕まえる手がかりが減る。ヘルバートさんは相当、ローザって奴に恨みを持ってんだなァ」

「あ、待って。言ってる言ってる」

「やべ」


 私は背後のヘルバートを振り返れない。

 ロメオの顔が徐々に青ざめるが、彼が盛大にまいた種だ。

 農作業が得意な彼こそ、ローザのいた屋敷に潜入するのに向いているだろう。


「す、すんません」

「ヘルバート? どうしてなんか色々隠すの?」


 私はロメオを庇うようにしてヘルバートに詰め寄った。

 ヘルバートはあろうことか、あからさまにそっぽを向いている。


「俺が……」

「俺が」

「自分だけで解決をしたかった」

「自分だけで解決をしたかった」

「復唱しないで下さい」

「馬鹿! 厄介事なんてみんな巻き込んで解決する方が楽に決まってるでしょ! 第一、どうして当事者の私に何も言わないの! 一人でカッコつけて、私に『キャー! ヘルバート大好き~』って言って欲しかった!? ……え、嘘でしょ」


 なんと彼は拗ねた幼子のように口を閉じてしまった。


「だから、ずっと言ってるじゃないですか! 俺はお嬢を好いているんですってば!」

「ぎゃー! 逆ギレしないでよ!」

「どうでも良いけど、アンタら、ちょっとうっさいっすよ」


 常識人ロメオが耳糞をほじりながら、まるで興味が無さそうに私達を窘めた。

 周囲がしんと静まり返る。

 私は恥ずかしさも相まって、ロメオにふつふつと怒りを感じ始めた。

 九割九分八つ当たりだが。


「元はと言えば、ロメオが悪いんでしょ! ヘルバートが言うなって言ったこと、ペラペラ喋るから!」

「はぁ? ヘルバートさんには悪いと思ってるが、オマエには一切謝る必要はねぇよ!」

「ちょっと! ヘルバートも何とか言って……。どうしたの」


 いつの間にか静かになったヘルバートを、この騒動に引きずり込もうとしたが、彼の視線はある一点に釘づけになっていた。


「……今、出口に誰かいましたね」

「え?」

「ギルドではなかなか見かけない女性なので、目に付きました」

「野次馬かな?」

「それにしてはすぐに立ち去ったようです。野次馬なら今が一番の盛り上がりどころでしょう」

「いや、別に私達の喧嘩は見世物じゃないけど。……え。まさか、ローザ?」

「どうでしょう。先ほどの彼女、フードを被っていたのですが身長はお嬢より低く、瘦せ型でした」


 ローザ候補の容姿だ。覚えておこう。



 +*+



 青空の下で、私はうんと背伸びをした。

 目の前には経営が傾きがちだという貴族のお屋敷があった。

 奥に茂る森の奥には、おそらく使用人の屋敷があるのだろう。


「ロメオ。まだクエスト有効かな?」

「依頼書に有効期限を記載してねぇ方が悪い。ごねればいけんだろ」

「あら野蛮」

「『ダメだったら森に隠れて不法侵入しちゃおっか!』ってアホ面で言った奴が何言ってんだ」

「二人とももう少し緊張感を持ってください。特にお嬢はあまり顔を上げないように」

「大丈夫!」

「どこからくんだよ、その自信……」


 私はクライス王子から伝授された変装を施していた。

 と言っても、服装を地味にし、髪を乱雑に結い、日焼けを気にする風にしてフードを被る程度だ。


「まぁ、あのトリーゼ・ファルシカが働くなんて考える人間は少ないでしょう。クエスト受注者もロメオの名前ですから。とにかくお嬢は、勝手に喋るな行動するな」

「でもあまり長居は出来そうにないね。依頼書の裏面にも『日雇い』ってデカデカと書いてあるし」


 きな臭い場所だからこそ、働き手はその場限りの人間が良いのだろう。

 ますます匂う。


 ロメオが門扉を叩いた。

 暫し間があり、「は~い」と間延びした明るい女性の声が向こうから聞こえた。

 ドアはまだ開かない。


「ロメオと申します。『従業員の失踪により急募・楽ちんお手軽な農作業』をしに来ました」


「ロメオってば一言一句言ったね」

「ああいう所、真面目なんですよ」


 私達のコソコソ話は筒抜けだ。

 ロメオが後ろ手で、良くないジェスチャーをした。

 扉の向こうで驚く声が響く。


「えぇ~! イタズラと思われて捨てられたと思っていました! よく来てくださいましたねぇ」

「まだ、有効ですか?」

「多分……? お嬢様に聞いてきますね!」


 ドタドタと足音が去る。

 応対したのはメイドさんか。

 それからずいぶん待ち、彼女は戻ってきた。


「大丈夫だそうです。今、開けますね」


 ギギギと重々しい両扉が開き、そこには――。


(低身長痩身!)


 ヘルバートを見ると、彼は剣呑な表情で彼女を睨んでいた。

 視線に気が付いた女性がやや怯える。


「え? もしかして、おまわりさん……?」


 大変!

 ここは私の出番だ……と言いたいところだが、私は前に出てはいけない。

 するとなんとロメオが口を開いた。


「いやこの人、こう見えて小さい女性が大好きなんすよ。だから、アンタを見て驚いたんじゃないすかね。隣の女はこの人の……召使いです。ほら、身なりもみすぼらしいでしょ。実はこの人もクエストを受注してたみたいで。……で、三人で農作業をしたいんすけど、大丈夫ですか?」


 なっんてことを言うんだロメオ。

 ヘルバートの雰囲気が別の意味で怖くなった。

 しかし、ちょっと話をすり替えてくれたおかげで小さな女性はヘルバートの性癖を忘れたようだ。


「はい、三人でも大丈夫ですよ。と言っても、もう畑は荒れ果てているんですけどね……。少しずつ、人が減っちゃうんです」

「従業員が失踪したって本当なんですか」

「はい……。この依頼書を出した数か月前……?にも、女の人が消えちゃったんです」

「大変ですね」

「元々ちょっとヤバそうな人だったんですよ。お仕事を休みがちで……。って、居なくなった人の事を噂するのは良くないですね! 案内します」


 女性に着いて行くと、見事に荒れた畑があった。

 彼女が何とか頑張って手入れをするそうだが、体が弱い彼女には限界があるらしい。


「とりあえず、種をまいてお水を上げたいんです。もう育たないかもしれませんが、寒さに強い植物なら育つかもしれません……」


 と、彼女が畑の中をよろよろと歩く。

 遠くで見ていた私たちはヒソヒソ声で話した。


「危なくない?」

「体幹がまるでねぇな」

「危なっかしくて彼女から目が離せませんね……」

「えっ、ヘルバート……。っいや! いいの。私、あなたの性癖には何も言わない。小さな女の子が好きでも、思うだけは自由。思うだけなら」

「ぶっ叩きますよ」


 突然、短い声が聞こえた。


「あっ」


 彼女は予想を裏切らない。

 頭から土にダイブし、べしゃりと地面に倒れ伏す。


「大丈夫!? や、ヘルバートは来ないで!」


 ヘルバートも駆けだしたが、私は彼を手で制す。

 なんか、この子をヘルバートに触らせたくない。


「お嬢?」

「なんかいかがわしい!」

「……」


 私は必死に走った。

 あの子を助けるためでもあるが、私のためでもある。

 悪鬼の如く迫りくるヘルバート。

 彼から必死に逃げた。


 目的地に辿り着いた私は、動かない彼女を見て言葉を失う。


「き、気絶してる……」

「頭打ったかァ? ちょっと診せろ」


 ロメオが彼女の小さな頭に手をかざした。


「特に外傷はねェ。ただ、体が弱いのは本当らしいな。生気が薄い」

「そっか……」


 しんみりした空気を突き刺すように、屋敷の方から声が聞こえた。


「どこ行ったの!? マリア!?」


 甲高い女性の声だった。

 彼女の「お嬢様」の登場だ。


「全く、役立たずなんだから! またどこかで寝ているだけでしょう! ホント、使えないわねぇ」


 なかなか強いお嬢様だ。

 マリアという名のこの子は、きっと彼女から毎日叱責を受けているのだろう。

 お嬢様のいうように、ただ寝たふりをしているのかと思ったが、マリアは完全に意識が無い。


「酷いお嬢様だね」

「オマエもあんな感じだったけどなァ」

「お黙り!」


 屋敷の主の顔をこっそり見た。

 どこかで見たことがあるような、無いような……。


「「……あ」」


 私とロメオは同時に声を出し、互いに目を合わせた。


「あの人じゃん」


 半年前、私を昏倒させた彼女。

 冷たいミルクを顔面に満遍なく塗りたくってきた、あの人だった。


閲覧ありがとうございました!

随分前に書き溜めという概念を捨てたため、投稿時間が不規則になりがちです;;

申し訳ないです……。

なるべく毎日投稿したい気持ちは大いにあるので、お付き合いいただけると幸いです;;

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