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MP10の落ちこぼれ魔道士、消費MPゼロスキル【尽きぬ泉】で無限に魔法が撃てたようです~元パーティーはもう知りません~  作者: 黒木菫


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事件

オレたちはアカシの案内でシトウ病院に来た。


石造りの小さな建物だ。町の規模に合った、こじんまりとした病院。廊下には消毒液の匂いが漂っていて、窓の外から波の音が聞こえた。


怪事件に巻き込まれたというユージ先生は、両足を骨折するという重傷を負っていた。幸い命に別状はなかったが、回復魔法もすぐには効かないほどの損傷だったらしく、今もベッドの上で包帯だらけになっている。


「ユージ先生、こちらは魔術師ギルドから派遣されたライトさんと、そのパーティー、クエスターのみなさんです。」


「はじめまして。よろしくお願いします。」


「わざわざありがとうございます。どれほどお力になれるかどうか……」


ユージ先生は苦笑いしながら、動かない足をちらりと見た。


「まずは、事件の状況を教えてもらえますか。」


「はい。とはいえ、正直なところ、あまり覚えていないんですよ。」


「覚えていない?」


「校庭で学生が騒いでいると聞いて出ていったところまでは覚えています。それから先の記憶がなくて、気がついたらここのベッドの上でした。」


「目撃者はいましたか?」


「それが……複数の学生に目撃されていたんです。」


「なんと言っていましたか?」


「空高く舞い上がって、3階ほどの高さから落下した、と。」


「飛空魔法を使ったんですか?」


飛空魔法は高等魔法の中でも習得者が極めて少ない。オレも実際に使える魔術師を見たことがない。


「私にそんな高等魔法は使えませんよ。練習中に失敗した記憶もないし、そもそも練習すらしたことがない。」


「ちょっといいですか。」


アカシが口をはさんだ。


「一人、容疑者がいるんだ。」


「アカシ先生、それは……」


ユージ先生が言いかけるのを、アカシが手で制する。


「あくまで情報として聞いてほしい。彼女が犯人とは限らない。むしろアリバイもしっかりしている。」


「誰なんですか?」


「レイズという女子学生だ。ユージ先生のクラスの子でね。」


「なぜ容疑者に?」


「最近、強力なスキルを持っていることがわかったんだ。対象を垂直方向に打ち上げるスキル、【上昇リフト】。自分以外のものなら重さを問わず、Aランクの魔獣すら上空に叩き上げて倒していた。」


(なるほど。飛空能力がない相手なら、野外では無敵に近い。)


「ただし、射程は十数メートルと短い。かなり近づかないといけない。」


「すごいんだか、すごくないんだか……。」


「しかし、さっきも言ったが、彼女にはアリバイがある。」


「どんなアリバイですか?」


「別の場所で、カグラという生徒と戦っていた。」


「……戦っていた?」


「そうなんだ。二人とも黙っていて理由がわからない。今は両方、寮の反省室に入れてある。そのカグラという男が、魔力を込めたものを爆弾にできるスキル【加具土命カグツチ】を持っている。」


「それはもう、殺し合いじゃないですか……。」


「実際、カグラは上空に叩き上げられて、死ぬところだった。」


「なぜ助かったんですか?」


「それがわからないんだよ。目撃した生徒によると、地面に叩きつけられたはずなのに、傷一つなかったそうだ。」


(誰かが助けたのか。それとも別のスキルが働いたのか。)


「レイズはあの時その場にいなかったんだから、先生への件とは無関係ですよ。」


ユージ先生がきっぱりと言った。


「とりあえず、その二人にも話を聞かせてもらえますか。」


「構わないよ。寮の反省室にいる。行こうか。」


「反省室って……レイズはもう殺人未遂じゃないですか。」


「実際、どう対処するか、講師で話し合っているよ。頭が痛い。」


俺たちはそんな話をしながら病院を出た。



病院の出口で、一人の女子学生とすれ違った。


こちらをちらりと見て、軽く会釈をして、そのまま病院の中に入っていく。


足が止まった。


(あれ?)


(どこかで見たような……。)


記憶の奥を探る。


(そうだ。小さい頃、よく一緒に遊んでいた女の子に、そっくりだ。)


しかし年齢が合わない。あの頃の子ならもっと大人のはずだ。気のせいか。


「アカシ、あの子は?」


「ああ、テラスだ。この村出身の魔導士の生徒で、なかなかの天才児だよ。将来が楽しみな子だ。」


「なあ、名前がどうしても思い出せないんだけど、俺たちと一緒に遊んでいた女の子にそっくりじゃないか?」


「誰のことだ?」


「ほら……」


しかし、オレ自身も詳しく思い出せなかった。顔も、名前も、靄がかかったようではっきりしない。


「ハハ、もう10年以上前の話だからな。言ってるオレも忘れたよ。」


アカシは笑って先を歩いていった。


オレはもう一度、病院の入口を振り返った。


テラスはもういなかった。

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