夢
魔術学校に着くと、場は騒然としていた。
(なにがあったんだ!)
「アカシ先生、カグラのやつが反省室の壁を爆破しまして!」
先生たちが慌てふためいている。
「カグラ君!もうこれ以上罪を重ねるのはやめなさい!」
キトウ教頭が必死に説得を続けている。
「うるせえ!オレはこのままじゃ殺されるんだ!道をあけろ!」
遠くのほうで、赤い髪の学生が叫んでいる。
叫びながら、何かを投げた。
(何かが飛んでくる!)
ドカァン!
爆発が起きる。
(まともに受けたら大怪我、下手したら死ぬな。)
「ここは私達の出番ね。」
「だな。」
マチとクノが前に出た。
「大丈夫なんですか?」
キトウ先生が心配そうに声をかける。
「ずっと退屈してたのよ。まあ見てなさい。」
「ライト、サポート頼むぜ。」
マチとクノが駆け出す。
「わかった!」
オレは二人に「身体強化」をかける。
「うわあああ!こっちに来るんじゃねえ!」
カグラが石を投げつける。
「クノよけて!」
「おう!」
二人は大きく石を回避する。
その瞬間、爆発がおこる。
「「うわああああ!」」
生徒たちからどよめきがあがる。
しかし、この程度の爆発でマチもクノも止まらない。
あっという間にカグラの近くに詰め寄る。
「なんだお前らは!」
カグラが叫び声をあげる。
「これだけ近けりゃ爆弾は作れないだろ?」
クノはそういうと、あっという間にカグラに足払いをかけ、マチが取り押さえる。
「いっちょあがりね。」
「「おおおおお!」」
「「すげえ……!」」
「「あれがプロの冒険者か!」」
生徒たちから歓声があがった。
「とりあえず、話を聞いてみようか。」
カグラは縛り上げられて連れていかれた。
◇
「カグラ君、なぜあんなことをしたんだ。」
キトウ先生がカグラに話しかける。
オレとアカシも同席している。
万一に備えて、外にはクエスターの仲間たちも控えていた。
カグラは椅子に縛られたまま、床を見ている。
暴れていた時の勢いはもうない。
どこか疲れた、子供の顔をしていた。
「言ったけど、信じてくれなかったでしょうが。」
声が、少し掠れていた。
「そのデスゲームが行われているとかいう夢かい?」
アカシがいう。
「そうだよ。」
「なんだそれ?初めて聞くけど。」
オレはアカシとカグラに確認した。
「ところで、アンタ誰だ?」
カグラが怪訝な顔でオレを見る。
「ああ、このライトさんはプロの冒険者だよ。君を取り押さえた二人も仲間だ。」
アカシがオレたちを紹介してくれた。
「……プロの冒険者。モンスターハンター系の?」
カグラの目が、わずかに変わった。
「まあ、そういうところだよ。」
「そうか。」
少し間があった。
「……なりたいんだよな、オレも。」
ぼそりとつぶやくように言った。
さっきまで爆発を起こして暴れていた男と同一人物とは思えない、素直な声だった。
「モンスターハンターになりたいのか?」
「ああ。このスキルがあれば、モンスターの討伐とかで役に立てると思ってたんだよ。」
カグラは自分の手を見る。
「でも人を傷つけるのには使いたくなかった。今も使いたくなかった。でも……」
言いかけて、口をつぐんだ。
「話してみてくれるか。」
オレはカグラの目を見た。
嘘はついていないように見えた。
「ああ。」
カグラは静かに話し始めた。
「夢の中で、女の声がしたんだ。『お前たち11人に力を与えた。最後の一人になったものの願いを叶えてやろう。』そんなことを言っていた。最初は夢だと思って気にしなかった。でも、ある時また夢に女が出てきて言ったんだ。『よくやった。あと10人だ』って。」
「それで怖くなったのか?」
「ワータが溺れただろ。あの子が水使いのスキルを持ってることは知ってた。水を操れるやつが溺れるなんておかしいだろ。すぐに意味がわかったよ。」
カグラは低く言った。
「それで、イズに相談したんだ。あいつも最近妙なスキルを覚えたって言ってたから。」
「それで?」
「あいつも同じ夢を見たって言ったんだ。お互い気をつけようって別れた。それだけだよ。」
「なのになぜ、レイズに攻撃されたんだ?」
「わからない。次の日、急にあいつがオレを殺そうとしてきやがった。『あんたが私を殺そうとした』とか言ってさ。身に覚えがないのに。助かった理由もわからないけどな。」
カグラはため息をついた。
「それで、今日の騒ぎはなぜ起きたんだ?」
「反省室で勉強してたんだよ。」
「……勉強?」
「何が悪いんだよ。やることなかったんだから。」
カグラはむすっとした顔で言う。
(意外と真面目なんだな、この子。)
「そしたら、机の上の鏡に人が映ったんだよ。マスクを被ってたから誰かはわからなかったけど、体つきからして多分男だ。刃物みたいなものを持ってた。」
カグラは身振り手振りで説明する。
「椅子から咄嗟に逃げたからよかったけど、逃げてなかったらオレは殺されてた。だから手近なものを爆弾にして壁を破壊して逃げたんだよ。それだけだよ。」
「なるほど。相談する暇もなかったと。」
「そうだよ。部屋に急に現れるやつだぞ。防ぎようがねえ。」
カグラは疲れたように背もたれに頭を預けた。
「信じてもらえると思ってないけど。」
静かな声だった。
オレはその言葉を聞いて、不安を感じた。
「レイズは今も反省室にいるか?」
オレはアカシに確認する。
「すぐに確認しよう。」
アカシは慌てて部屋を出ていった。
しばらくして——
「みなさん来てください!カグラもだ!」
オレたちはアカシに呼ばれて、レイズの部屋に向かった。
そこにレイズはいなかった。
ついさっきまで本を読んでいた、とでも言うように机の上に本が開かれたまま、レイズの姿だけが忽然と消えていた。
カグラが、低くつぶやいた。
「だから言っただろ。」
そして、ついに犠牲者が出てしまう。
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