第19話 バントウ、テディとの再会
隣の領地に移動するついでに、俺たちは商人アキドさんの護衛の仕事をもらった。
街道を外れると、森が続く。木漏れ日が落ちる道は静かで、遠くに山並みが見えた。旅としては悪くない。
「うりゃあああ!」
重装備になったクノの槍の一撃が魔獣あばれウサギを貫く。
「炎障壁!」
オレの作った炎の壁に巻き込まれてスライムたちが蒸発していく。
「いやあ、みなさんすごいですね!依頼してよかったですよ!」
依頼主のアキドさんも喜んでくれている。
「こちらこそ、オレたちも行きたい場所だったんで助かりました。」
冒険者学校で確実に力をつけたのを感じた。
そんな話をしながら、俺たちは旅を続けた。
街道沿いには小さな村が点在している。畑を耕す農民、荷を引く馬車、子どもたちが走り回っている。のどかな光景だ。
歩きながら、ゼニーの親であり依頼主でもあるリョウショウ男爵の話も聞く。
「実はオレたち、リョウショウ男爵に依頼で呼ばれて向かっているんですが、どんな方かご存知ですか?」
「いい領主さんですよ。私たち商人のことも考えてくださる。ただ、子育てにはちょっとねえ……」
(子育て、ゼニーのことか……)
「ひょっとして、ゼニーさんのことですか?」
ストレートに聞く。
「あそこのぼっちゃんね。お世辞にも評判はよくないですよ。」
(でしょうね。)
そうは思ったが、今は護衛対象なので黙っておく。
道中、多少魔獣に襲われはしたものの、俺たちはリョウショウ男爵の領地に到着した。
関所でキカク男爵の紹介状を見せると、すんなりと通過できた。
案内された屋敷は、丘の上に建っていた。
石造りの正門をくぐると、左右に手入れされた庭園が広がっている。噴水が静かに水を吐き、その周りに季節の花が植えられていた。屋敷本体は三階建てで、白い壁に蔦が絡みついている。豪華というよりは、長い年月をかけて積み上げられてきた風格があった。
いい領主の家というのは、こういう佇まいをしているのかもしれない。
屋敷の扉が開く。
そこで待っていたのは、懐かしい顔ぶれだった。
◇
「ご無沙汰しております。クエスターの皆様方。」
そういった僕らを待っていたのは、あのバントウとテディだった。
いや、依頼主なのだからバントウさんとテディさんと呼ぶべきだろう。
「いえ、こちらこそ、この度はお世話になります。」
「どうぞこちらへ」
バントウさんはオレたちを応接間に案内した 。
屋敷の中にも外にもチラチラと護衛の兵士や魔道士達の姿も見える。
「どうぞ、おかけください。」
バントウさんに進められて、俺達は応接のソファに座る。
部屋の中は品のいい装飾になっている。
このセンスの男爵からでもあのゼニーが育つんだなとおもってしまう。
「あの、失礼ですが、あのあとゼニーさんは大丈夫でしたでしょうか。」
ゼニーは冒険者学校で最後、失格を言い渡されて、その場を去ったのだった。
「いいえ大丈夫ではありませんでした。帰るなりご主人様に言いつけましたが、聞き入れられず、暴れる暴れる。」
「おい。」
ぶっちゃけるテディさんとツッコミをいれるバントウさん。
「ぼっちゃんにも困ったものです。」
バントウさんはそう言って苦笑する。
「あの、オレた、いや私たちのことも恨んでるのではないかおもいますが。」
オレはカブトムシ集めでの彼との因縁を思い出す。
「まあ、恨んではいらっしゃいますが、今はそうもいっていられないというのが実情です。あのデッチのやつも刺客と戦って重傷を負わされましたので。」
バントウさんの言葉におどろく。
デッチさんといえば、ダイたちのパーティーを一蹴したひとだ。
あの人が負けたのか。
「あのデッチさんがですか。」
オレは驚きを隠せなかった。
「あいつは弱いですからね。弱き者です。」
一刀両断のテディさん。
「ご存知かもしれませんが、デッチも元はAランク冒険者ですからね。相手も相当な手練だったのでしょう。」
真逆のことをいうバントウさん。
(なんなんだ、この二人は。とうかテディさんが毒舌すぎる。)
「それで、ぼっちゃんも今は自分の屋敷にこもっています。」
「実家にもどられたということでしょうか。」
「いえ、それでは正体不明の脅迫者に屈したことになります。今は赴任地の屋敷です。」
「バントウさんはここにいて大丈夫なんですか?」
「今は私より強い方が、ぼっちゃんと一緒にいらっしゃいますからね。とはいえ、あなたがたと、このテディとともに直ぐに現地に向かうつもりですが。」
「脅迫者に心当たりは?」
「ご主人様も政敵が多いですからね。しかし、ぼっちゃんを実家に戻せというのがよくわらない。」
「ぼっちゃんは住民にだいぶ嫌われていますからね、政敵にとってはほっといてもご主人様の評判が下がるので、外にいたほうが都合がいいはずなんですけどね。」
相変わらず歯に衣着せぬ テディさん。
(ずけずけとすごいこというなこの人。)
「ただ、一つ言えるのは、魔族が絡んでいるかもしれません。」
「魔族!?」
バントウさんの発言に 思わず声が出て、仲間たちの表情も変わる。
「デッチが屋敷の外を見回っているときに、怪しげな影を見つけたそうなのですが、逆に攻撃をされたそうです。しかし、いきなり魔法の一撃を食らったそうです。人間なら、魔法の詠唱なり呼吸の『タメ』がある。いくらなんでもあのデッチがそれを見逃すとは考えにくい。」
「要するに、デッチが未熟だったということです。」
バントウに反対するテディさん。
「あの一つ聞いていいですか?」
オレはテディさんの方を向いていう。
「なにか?」
「その、なんというか、表現がきついというか…」
「私、天才なので。フッ。」
なぜか勝ち誇るようにニヤリと笑うテディさん。
「ま、まあ、こういうやつなんで多めに見てください。このテディもデッチ以上の相当の手練です。こいつがいうとおり、デッチが油断していた可能性もないわけではありませんので。」
バントウさんが苦笑いしながらいう。
「ライトさんたちにお願いしたいのは真犯人を見つけることです。私たちよりも冒険者の貴方方のほうが、地域の住民も心を開くかもしれない。」
それは妙だなと思い確認する。
「わかりました。しかし、ここに来るまでの商人から話を聞きましたが、男爵様は領民に慕われてると聞きましたが。」
「男爵様はね。ぼっちゃんは自分のことを喋った住民に報復や嫌がらせをするので。」
またしてもストレートにいうテディさん。
なるほど、バントウさんの言いにくいことをこの人がいうわけか。
「わかりました。全力をつくしますのでよろしくお願いいたします。」
こうして、俺達は冒険者学校では争ったゼニー一家のパーティーと奇妙な協力をすることになった。
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