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MP10の落ちこぼれ魔道士、消費MPゼロスキル【尽きぬ泉】で無限に魔法が撃てたようです~元パーティーはもう知りません~  作者: 黒木菫


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カブトムシ争奪戦終結

ダイ、ヨウジ、エティの三人はゼニーからカブトを購入し、テントを立て、交代で見張りをしていた。


「これを取られないように今晩見張っていればOKだな。」


ヨウジが二人に確認する。


「高い買い物だったけどしょうがないよね。ダイがまったくカブトをとれないんだから。」


エティがダイに毒づく。


「なんだと、お前だって!」


ダイが言い返そうとするが、ヨウジが間に入る。


「まあまあ、よせってエティ。目的は達成できたんだからいいじゃないか。」


「おまえはすぐそうやってエティを‥…」


ダイが立ち上がった瞬間に持っていたコーヒーがこぼれて、足元に置いてあったカブトの虫かごにかかった。


「ちょっとあんたなにやってんのよ!」


「チッ、おめえのせいだろうが。」


文句をいいながら、ダイは虫かごについたコーヒーをふき取る。


「あーあ、カブトにまでコーヒーがついてるじゃない。」


「うるせーな、それで減点になるわけじゃねえだろ。」


ダイとエティは言い合いを続ける。


「カブトは茂みの奥に穴を掘って隠してそろそろ寝るか。」


ダイが二人に提案する。


「あーそうだな。明日はもう早起きしてカブト探しをする必要もない。ゆっくり休もう。」


三人は眠りについた。




◇


翌朝――


「ヨウジ!エティ、起きろ!」


「なによ、うるさいわねえ。カブトはもう探さなくていいじゃない。」


エティが眠気まなこでテントから出てくる。


「そうじゃない、起きろ!カブトがなくなっている!」


「えええええ!」


エティが虫かごごとカブトを埋めた場所に確認に行く。 すると、虫かごが掘り起こされているではないか。


「どういうことよ!これは!」


「わからない。この場所に埋めるのは誰も見ていなかったはずだ。」


「たしかにそうだ。」


ヨウジもうなずく。 あたりに誰もいないことを確認して、虫かごを埋めた。


「ここに埋めてあるとわからないと見つけられないはずだ。」


ダイは信じられないという様子で掘り返された穴を見ている。


「カブトムシが魔力探知されたんじゃ。」


ヨウジがエティのほうを向く。


「マジックイートオオカブトは魔力自体を吸収する。魔力感知もできないはず……」


そういいかけてエティはひらめく。


「そうか!かごよ、かごのほうにほとんど感知できないくらいの魔力が込められていたのよ!それなら、マーキングした本人ならわかるかもしれない。」


「ということは‥…!」


ダイも気がつく。


「あのゼニーってやつが、こっそりマーキングしてあとからもう一回盗んだのよ!」


「やろう!」


ダイが叫ぶ。


「ダイ、ところで今何時だ!?」


ヨウジが気がつく。


「何時って‥…!?」


ダイに電流走る。


太陽がずいぶん上っている。


慌てて時計を見る。


残り時間が1時間しかない。


「うそだろ‥…!?」


なぜこれほど寝入ってしまったのか。


「とにかく集合場所に行きましょう!」


エティに促され、ダイは集合場所に向かった。




◇


集合場所につくと人だかりができていた。


ゼニーがまたしてもカブトムシを販売している。


そして、数名の冒険者がゼニーの手下らしき二人に叩きのめされている。


1人はデッチというモヒカンの男。


もう1人はメイド姿の女だった。


ダイはゼニーが販売しているカブトを観察して見つけた。


「これだ!これはオレのカブトだ!」


ダイは一匹のカブトを指さして叫ぶ。


「シシシシ、これはオレが販売してるカブトだよ。妙な難癖はやめてもらおうか。今なら一匹金貨5枚だ!」


ゼニーは指を5本立てる。


「ふざけるな!このカブトにはコーヒーのシミがついている!これはオレが昨晩こぼしたものだ!このカブトはオレのものだ!」


ダイはゼニーの胸ぐらをつかもうとしたその瞬間、 メイド服の女に引き倒される。


「暴力反対。」


メイド服はぽつりとつぶやく。


「あんた!よくも!」


エティが魔法を発動しようとしたその瞬間。


【睡眠眼(スリープアイ)】


メイド服の眼が怪しく輝き、エティはそのまま眠りに落ちた。


「エティ!」


ダイがエティの身体を抱きかかえる。


「「ふざけるな!」」


「「詐欺だ!」」


ダイと同じようにカブトを取られた冒険者たちから罵声が飛ぶ。


「いいよいいよ、悔しかったら腕づくOK。ただしこのデッチはAランク冒険者だ。そして、このメイドのテディもAランクだ!そしてこっちにいるバントウは現役時代はSランク冒険者だぞ!」


「バントウ……!聞いたことがある。ドラゴンすら倒したともいわれるパーティーの冒険者だぞ。」


「勝てるわけがない。」


冒険者たちに絶望感が漂う。


「そんなことより、お前らあと30分だぞ!今買わないともう終わりだぞ!早く金貨5枚を出せ!」


ゼニーは高笑いをしながら冒険者たちにカブトを買うよう迫る。


「くそう。」


「ここまでか……」




「金貨5枚は無理だ。今年は諦めるか……」


冒険者たちが絶望に沈む。


その時。


◇


「ちょっとまった!」


オレはそこで待ったをかけた。


「みんな!」


オレの合図でクノとマチが溜めていたカブトと虫かごを並べる。


「俺たちはこの余ったカブトを金貨1枚で譲ります!」


ざわざわ。


「まじか!」


「金貨1枚!」


「それなら買える!」


冒険者たちが歓喜の渦に包まれる。


「まてええ、まてまて、なんだそれは!」


ゼニーはわけがわからず声をあげる。


「なんだも何もオレたちはこれまでカブトを溜めていたんだよ!」


オレはゼニーに指を突きつける。


「そんなことを聞いてるんじゃない!その中のカブトにはオレのカブトも入ってるじゃないか!どういうことだ!テディ!」


「ああ、なるほどそういうことでしたか。」


テディと呼ばれたメイドがわざとらしく手を叩く。


「マーキングが解除されていて見つけられなかった虫かごが結構ありましたね。我々の策を利用されて、虫かごを見つけられたようです。誰ですかねこんな穴だらけの作戦を考えたアホは。」


「オレだアアア!って、アホとはなんだアアア!」


そう、オレはゼニーの策を読んでいた。


「簡単な話だよ、アンタ。」


オレはゼニーに向かっていう。


「カブトムシは魔力感知できない。だったら虫かごにマーキングするしかないだろ。でもそれが仇になったな。マーキングされているとわかっていれば、微力な魔力でも見つけられる。」


「ぐぬぬぬう……!」


ゼニーが歯を食いしばる。


「だったらオレも金貨1枚で売ってやる!」


ゼニーがやけくそをいう。


しかし。




「ふざけんなお前なんかから誰が買うか!」


「あんたオレに売ってくれ!」




「はいはいどうぞどうぞ!」


「順番に売ってやるから安心しろ!」


マチとクノがカブトを売りさばく。


「ふざけんなテディ、やつらから力づくで奪え!」


ゼニーがテディに指示をする。


「坊っちゃん、もう時間がありません。彼らを叩きのめすことはできますが、カブトを奪ってさらに売るのは無理です。」


ここまで黙っていたバントウという初老の男が口を開く。


「ちくしょおおおおお!お前ら、前に貸し付けた金貨は必ず回収するからなああ!」


ゼニーは捨て台詞を吐いて去っていった。


「あらあら、まだ結果発表は終わっていませんのに。私たちだけで聞くしかないですね。」


テディと呼ばれたメイドがつぶやく。


「デッチ、坊っちゃんの後を追え。」


「はいはい。」


バントウがデッチと呼ばれたモヒカンに指示を出し、デッチが後を追った。


そして俺たちは数十枚もの金貨、ならびにお金がない人からは借用証を手に入れた。


「やったわね!」


「俺たち金持ちだぜ!」


「でもこの借用証、どうやって取り立てましょう……。」


ミコさんがつぶやく。


オレは苦笑いするしかなかった。


その時、ダイたちが近づいてきた。


「……ライト。カブトを1枚、売ってくれ。」


ダイが絞り出すように言う。


「ああ、金貨1枚だよ。」


「……わかった。」


ダイは金貨を差し出した。


ゼニーに3枚。


そしてオレに1枚。


合計金貨4枚。


カブトムシ一匹に金貨4枚。


それだけ払って、


ダイはオレのほうを見なかった。


ヨウジだけが、小さく頭を下げた。


そこに試験官ヨカとヨウキがやってくる。


「こまるなあ君たち、脱落者は結局ゼロじゃないか。」


ヨカはそういいながら、嬉しそうに笑う。


「で、ライト君、その借用証どうするつもりだい?」


「一応持ってはおきますけど、回収は難しいでしょうね。」


「そうだな。まあ、それが冒険者の世界だよ。」


ヨカはそういってライトの肩を軽く叩く。


「そうだな。君たちの奮闘に敬意を表して、その借用書、わたしがかわりに金貨一枚で買ってやろうじゃないか。」


「え?でも…」


おれは一瞬とまどう。


えげつない取り立てをするんじゃないだろうか。


「まあ、安心しな。ある時払いの催促なしにしとくから。」


そういってヨカは俺から借用書をとりあげ、その分の金貨をおしつける。


「ゼニー君たちは……リーダーがどこかに行ってしまったんだからしかたないよね。バントウさん、テディちゃん。」


「ああ、結構だ。」


バントーが一言だけ答える。


「それじゃあ、ライト君、君の名前は覚えたよ!次に会うときを楽しみにしている。さらばだ!」


「じゃあな。」


そういってヨカとヨウキは去っていった。


「とりあえず打ち上げしようぜ!」


クノが声をかける。


「おう!」


カブトムシ争奪戦、俺たちは金貨数十枚を手に入れることができた。


こんなに冒険で稼げたことはなかった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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