真、真実を知る
娘は大学を休校、彼と一緒に暮らしているようだ。
スマホのメールには、母子手帳を持って、大きなおなかが自慢げな娘の写真が送られてきた。
仏壇の写真におさまっている妻にも見せてやる。
大きくなったものだ。
お腹の中の子供は双子で、女の子らしい。
女子率が高いと、多数決で負けるから、彼もいろいろ大変だ。
すでに名前は美瑛と深美と決まっているようで、着させる予定の産着にその名を刺繍してるとか。
なんというか、ビーちゃんとフーちゃんなわけだ。
思えば、娘が帰ってから姿を見なかったのは、娘のお腹に戻ったからなのかもしれないな。
ふたりが何をしに来たのかは察するしかないが、大方、自分達の存在を死守する為だろう。
あの子たちを見て娘の幼き頃を思い出さなければ、私は無情な判断をしただろうなぁ。
生ける屍だった私を、生ける人間に戻してくれたから、あのように言えたんだろう。
感謝しかない。
そのふたりの予定日は来週末だ。
昨日、その前後の有休を申請してきた。なぜとるのかと聞かれたからわけを話したら、肩をばんばん叩かれて受理された。
私には見えていないものが、たくさんあったのだと気が付いた。
ん、スマホが。
娘からか。何か必要なものでもでたのかもしれない。
どうした? なに? 破水した?
どどどどどうしようと言われてもだな。
私は今からそっちに向う。
会社?
わけを説明するさ。
それよりも落ちついて、病院と彼に連絡をしなさい。
やれやれ、予定通りにはいかないものだ。