採取の森で、見つけました
今回、展開を早めてみました。
違和感があるようなら、書き直してみます。
新しい生活が始まった。
ヒューガさんとサラさんの家に住み込みで薬師の修行をするのだが、やはり最初から薬が作れるわけではない。私の錬金術の呪文は普通ではないので、エンデワースでの普通の薬師の技術?を学ばなければいけないから。
ヒューガさんに私の普通を認識を知ってもらうために神域製の体力回復剤を見せたのだけれど・・・。
「ジ、ジーナちゃん!! こ、これは一体どのような製法で作ったんだい?! これ程にレベルの高いポーションは見た事がない、さすがは天使だね・・・」
興奮状態でポーションを手に、ブツブツ自分の世界に入ってしまったヒューガさん。どうやら調薬に関する製法や技術は存在するけれど、それを一度にこなしてしまう錬金呪文は存在しないらしい。
困った。私の作った神域製の薬はこの世界では異常だということが発覚し、これで売れないことが確定してしまった・・・。
余程困った時とか、そういう時ぐらいは身内限定に出しても良いかもしれないけど、広めてしまうと混乱が生じてしまう。
なぜなら、私しか作れないから。他の人に技術を譲渡できるのならしてもいいんだけど、ヒューガさんの前で1個作ってみてもそれをヒューガさんが会得する事はできなくて。
「ご主人様専用の特別技術ですから、当然だと思われます」
窓枠の日当たりの良い場所でくつろぎながら(なにげに馴染んでいる)、アンバーが答えてくれる。
そうか、だから品質がめちゃめちゃ良かったのか。確かに私はこの世界の住人じゃないけどさ・・・。
結局ヒューガさんにサラさん経由で帰ってきてもらってポーションを回収し(持たせたままだと、また自分の世界に行ってしまうので)、エンデワースでの調剤技術を学ぶべく修行が始まった。
「これがチャービナだよ」
今日はヒューガさんと薬草知識の実地研修のために、オーキッドの街の近くにある森の入口にやってきている。
本来ならその辺の土地にも生えているものらしいのだけれど・・・。
「一般的な体力回復材に使用されるため、冒険者ギルドの継続採取依頼が常に出されている。だからなかなか街の近くには生えてなくてね、これも良し悪しなんだ」
苦笑いを浮かべながら、説明をしてくれるヒューガさん。
「ご主人様~、あっちにも生えてるよ~♪」
そんなヒューガさんをよそに、次々とチャービナを発見してくれるスピネル。
まぁ、スピネルの技術はそういう事に特化してるからね。
アンバーは森の中に先行して、何か異常がないか常に警戒してくれていた。本当は優秀なのに、普段はスピネルに任せて(私のこと以外は)滅多に動いてくれないんだよね。最近猫化が顕著じゃない? アンバー。
「この森は奥に行くと貴重な薬草も自生しているんだけれど、その分獣もいるから気をつけるんだよ?」
「魔物はいないの?」
「この森では発見されていないね。ただ最近は獣の動きが活発化されているという報告が冒険者ギルドを通じてあったみたいだから、用心はしないと」
「ジーナちゃんも一緒だし」と、目を細めて撫でてくれるヒューガさん。
こうして見ると普通の優しいおじさんなんだけど、ステータスには戦士スキルあったから剣も使えるし今も帯剣してる。
どうやら薬師には体力や戦闘技術も必要らしい。それはそうだよね、お金あるなら冒険者に依頼したり買い付けたりして薬草集められるけど、そうじゃなきゃ自分で採取するしかないんだもん。
アンバーが戻ってきてから、皆で森の中を採取のためにウロウロ歩く。予定としてはそれほど奥に行かず、中程に流れている小川までと範囲を決めていた。
やはり入り口付近でもそれほどチャービナは採取できなかった。けれどそれでもそこそこの薬草をゲットし、そろそろお昼にしようかと話していた時、それは起こった。
スピネルとアンバーが同時に顔を上げて森の奥、同じ方向を見つめる。私も索敵は二人に任せていたので特に気にせず採取に集中していたのだけれど、二人の反応に気づいたヒューガさんが同じようにその方向を目を凝らすように見つめた。
「ご主人様、向こうで血の匂いがする」
「血?! ・・・獣が怪我したの?」
「いえ、人のものですね」
「人?!」
アンバーの答えに、ギョッとして森の中を見つめて検索する。直線距離で2キロほど先に1人の存在を確認した。でも、何か少し違和感が残る。
「冒険者が森に入ったんだろうか・・・。仕方がない、ジーナちゃん薬草採取は一旦中止だ、助けに行こう。アンバーとスピネルはジーナちゃんのそばから離れないようにして、3人でここにいるんだ。いいね?」
ヒューガさんが、私達を残して一人で行こうとする。普通の幼児相手ならそれが正しいんだけど、私は普通じゃないから。
「ヒューガさん、私も行く。スピネルやアンバーがいた方が、安全だし」
「いや・・・あ、そうだね、その方がはぐれる危険性もないか。でもくれぐれも気をつけて、スピネル達から離れるんじゃないよ?」
「はい」
スピネルを先頭に一斉に走り出す。もちろん木や茂みや岩なんかがあるから、真っ直ぐには進めない。けれどスピネルは飛ぶように目的地に向かって駆け、私とアンバーもそれを追う。本気モードなので、当然ヒューガさんは遅れることになる。
「ジ、ジーナちゃん?!」
「怪我をしている可能性が高いから、先行くね。ヒューガさんは後から追いかけてきて」
「すまないね、でも確認だけでくれぐれも近づくんじゃないよ?!」
頷いてそのまま先行する。スタートダッシュしたスピネルはもうとっくに見えなくなって、私とアンバーがそれを追いかけた。よく検索したら、3キロ先にさらに数人の塊がウロウロしているのが分かった。1人を追いかけてるんだろうか?でも怪我してるっていうのは穏やかじゃない。存在の違和感も重なって、さらに足を急がせた。
『ご主人様、目標確認したよ。でも怪我してるせいか、怯えて逃げるかも知れない』
スピネルから念話が届く。
『じゃ、じゃあ、私達が行くまで危険がないか見守ってて』
スピネルは治せないんだもんね・・・。回復剤持たせれば良かった、怪我していたのは分かっていたのに・・・。
唇を噛む。
今度からアンバーとスピネルには薬一式渡しておこう。二人の判断で使う分には大丈夫なはず。
焦って向かっているうちに、あと少しという所までたどり着いた。と、目の前に現れたスピネルに止められる。
スピネルに促されてその方向を見ると、茂みに隠れるように小さな人影があった。子どものような容姿だったそれは・・・。
「魔人・・・?! こんな所に・・・?」
私は思わず呟いていた。
その人型には頭に2本の捻れた角があり、その背には薄い皮膜の翼が見える。
ここはローシェンナ、魔人の国じゃない。王都ぐらいでなら多少異国人を見かけるかも? とは思っていたけれど、オーキッドで会えるなんて。あ、でもこんな森の中で怪我してるなんて変よね?
「ご主人様。少し先でウロウロしている集団がいますが、どうされますか?」
子どもの服装は薄汚れた軽装で、とても森の中に採取に来たという格好ではない。怪我をしてなにかから逃げるように隠れている。これはもう、保護する以外の選択肢はないよね。
アンバーの問いに、覚悟を決めた。
「保護するわ。二人共、この先の集団が近づかないように見張ってて」
「「はい、ご主人様」」
使命感に萌えてしまった私は、近づかないように言ったヒューガさんの言葉など遥か忘却の彼方に追いやってしまっていた。
どうしたら、怯えさせないで近づけるんだろう・・・。追われてるのなら、余計に警戒はしてるはず。でも私は幼児だから、まさか追手だとは思われないはず(と思いたい・・・)。
集団がいないのなら時間をかけて警戒を解いてもいいんだけど、集団に手間取っているうちに怪我を負ったまま逃げちゃったら面倒だよね。先にスピネルに集団の方を何とかしてもらったほうが早いのかな?
『アンバー、集団て何? 地人? 魔人?』
『地人ですね、格好からするに冒険者か盗賊の何かでしょうが・・・ガラが悪いのは確かです』
『何でガラが悪いって分かるの??』
『周りの茂みを剣でなぎ倒し、岩を蹴りつけて悪態をついているからです。ご主人様がお耳にされていいような言葉ではありません』
・・・そう。
私、そんなに上品な人間じゃないんだけどね・・・。それはともかく。
『その集団を近づけないに変更。向かってくるようなら、手加減で反撃していいから』
『手加減て・・・打ち身や捻挫くらいならいいよね?』
『スピネルの良心に任せる・・・』
『私は手加減などするつもりはありませんが?』
『・・・アンバー、半殺しはダメだからね?』
『では殺すつも『もっとダメ!!! 復活できないんだから、絶対にダメ!!』
『仕方ありません、少し遊んでまいります』
渋々といった感じで、スピネルと共にアンバーが森の中に消えていった。
やっぱりアンバー、猫化してるよ・・・(いや、猫だけれどもさ)。
「さて」
残された私は正面に向き直ると、魔人の子どもを保護するべくゆっくりと向かったのであった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。




