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初心者でも世界を創れますか?  作者: 陽菜
第二章  ローシェンナ 編
36/41

連れられて来た先は

 

 向かった先に、だんだんと立派な住宅が並び始める。

 もしかしなくても、こっちは高級住宅街だったような・・・。

 焦る私をよそに、ヒューガさんはふた棟続きの(他の屋敷に比べたら)こじんまりとした家の前で立ち止まった。


「さぁ着いたよ、ここが我が家だ。さあどうぞ」


 ヒューガさんに背中を押され、開けられたドアを潜る。アンバーやスピネルも拒まれることなく入れてもらえたので少し安心する。

 本当に普通の家みたいで、特に華美な絵や花瓶が飾ってあるわけでもないし、執事さんやメイドさんが現れることもなかった(よく考えたら、私の方がいるじゃない!!)。

 キョロキョロと不思議そうに家の中を見ている私を楽しそうに見つめたヒューガさんは、そのまま私の背を押してさらに中へと案内してくれる。


「サラ! 可愛いお客さんを連れてきたよ~♪」


 ヒューガさんの楽しそうな声を聞いて首を傾げていると、奥からヒューガさんより少し若い、優しそうな女性がエプロンで手をふきふき現れた。


「どうしたの、大きな声を出し・・・て・・・」


 女性がまん丸な目をしたまま、固まっている。


 え、えと・・・?


 どうしたらいいのか分からず私まで固まっていると、いたずらが成功したような顔をしたヒューガさんがサラと呼んだ女性に近づいた。


「サラ、せっかく来てくれたお客様に挨拶してくれないのかい?」

「・・・あ、あぁ。ごめんなさい、余りにも似ていたからビックリしてしまって・・・。初めまして私はサラ・メイソン、ヒューガの妻よ。どうぞよろしくね」


 ヒューガさんに促されて、サラさんがやっと溶けて挨拶してくれる。サラさんも温かな笑顔を浮かべてくれた。

 私も慌ててお辞儀をする。

 でも似てるって、何に?


「ジーナハース、5歳です。こっちに居るのは、スピネルとアンバー。どうぞ、よろしくです」

「可愛いだろう? ジーナちゃんは薬師ギルドに登録に来てね? 師匠もいないみたいだったから、思わず私が立候補したんだよ♪」

「あら素敵! じゃお部屋を用意しないとね♪」


 私が挨拶した後で、いきなりヒューガさんとサラさんが盛り上がり始めた。


 お部屋・・・? 


「あ、あのヒューガさん!」

「ん? どうしたんだい、ジーナちゃん」

「お部屋の用意って??」

「もちろん、ジーナちゃんがこれから暮らすお部屋に決まってるじゃない♪」


 満面の笑みで答えるサラさんとヒューガさんだったが、私はそれどころではなかった。


「ええええええええええええええええええ!!!?」


 あまりの声の大きさに、二人がキョトンとしている。


「うちで修行するんでしょう? だったら住み込みでって・・・ヒューガ、貴方まさか、ジーナちゃんに説明しないで連れてきたんじゃ・・・?!!」

「あー・・・、あまりの可愛らしさにすっかり忘れていたよ」


 はははっ! と陽気に笑うヒューガさん。

 少しの沈黙のあと・・・、サラさんがにっこり笑うと 「ちょっとだけ待っててね?」 と私に断ってから、ヒューガさんを奥の部屋に連れて行った。

 間髪置かずにサラさんの叱る声が響き渡る。


「だから思いつきで行動するのは、あれほど気をつけなさいといつも言ってるでしょう!! ジーナちゃんのご両親に許可も取らずに連れてきて、一体どうするつもり!!!」

「いや、でもね?」

「デモもストもありません!! あんなに可愛らしい子がいなくなったら、間違いなく拐かされたって心配するしょ!!」

「・・・すみません」


 人は見掛けに拠らないって、本当なのね。ヒユーガさん、素敵な紳士のおじ様だったのに、サラさんの尻に敷かれてる・・・。


『だから私が気をつけた方が良いと・・・!』

ご主人様(マイ・ロード)は、どうするの?』

「うーん、住むか住まないかの前に? 3人(アランとゴードンとヴィオラの事)には話した方が良いと思うの。絶対心配するし」


 アンバーとスピネルに話しかけてると、ヒユーガさんとサラさんが戻ってきた。


「お待たせ。あの人がキチンと説明しないで決めてきてしまって、ごめんなさいね」


 サラさんに謝られてしまって、逆に恐縮する。


「ううん。えと、ヒユーガさんに助けて貰ってギルド入れたから。だから、ありがとう、です」

「ジーナちゃんすまなかったね。つい目先の欲に囚われてしまったよ~」


 サラさんに後ろから小突かれながら、陽気なヒューガさん。

 なんだかさっきとキャラが違っている気がするんだけど、もしかしてこっちが地なんだろうか? 

 ヒューガさんは私の目線に屈むと、ジッと見つめてきた。


「そこで改めてなんだが・・・どうだろう? 家に泊まり込みで薬師の弟子やらないかい? 3食昼寝付き、更に今ならサラのオヤツ付きだよ? 泊まり込みがダメなら通いでも全く構わないし、どうしてもダメっていうのなら、たまに来てくれるだけでもいいんだ。保護者の人の説得が必要なら、私が同行するから!」


 どうしてこんなに必死なんだろう・・・。

 あまりの押し様にビビって引いていると、サラさんがヒューガさんの襟首をひょいと引いて後ろに下げた。「ぐえっ!」というカエルを潰したような声が聞こえたけれど、サラさんは気にしていないように私の目線に座ってくれる。


「ヒューガの変なスイッチ入っちゃったわね。こんな人だけれど、薬師の腕は確かだから。とにかくせっかく来てくれたんだもの、みんなでお茶にしましょう」

「う、はい」


 サラさんに案内されて、ダイニングの椅子に座る(よじ登った)。スピネルが少しヒューガさんの心配をしていたけど、いつもの事なのかサラさんは気にしていないようだった。

 しばらくすると私の前に、果物のジュースとドライフルーツの入ったクッキーらしきものが出てくる。

 こっちの世界で初めてのお菓子らしきものを見た。普通にお菓子あるんだ! お砂糖も普及してるのかな? それともハチミツなのかな?


「どうぞ」

「いただきます!」


 クッキーを手に取って一口齧ってみる。現代(リアル)で食べるクッキーほど甘くもサクッともしてないけれど、それでもドライフルーツの甘さとしっとりしたクッキー生地に使われている粗めの小麦の香ばしさが美味しい! 目を見張る私に、サラさんとヒューガさん(復活して普通にダイニングに着いてた)が優しく微笑んでくれた。


「美味しいだろう? サラのお菓子は絶品だからね!」

「本当に、もう」


 サラさんが苦笑する中、ヒューガさんは満面の笑みでクッキーを食べつつお茶を飲んでいる。サラさんに断ってアンバーとスピネルにも食べさせてあげると、二人もビックリしつつあっという間に食べてしまった。


ご主人様(マイ・ロード)の料理が一番なのは間違いないですが、こちらのご婦人のクッキーもなかなかのものです。これだけの材料の中でこの味を出すとは!!』

『僕、これ好きだよ。ドライフルーツもいい感じに仕上がってるね』


 私も素朴ながらも優しいお菓子に夢中になってしまった。ジュースを飲み干し満足のため息をつくと、嬉しそうなふたりの顔に気がついて、恥ずかしくなる。


「気に入ってもらえたみたいで良かったわ。もういいの?」

「うん、お腹いっぱい。ごちそうさまでした」


 ニコニコ見つめてくるヒューガさんとサラさん。なんだろう、二人に見つめられてると恥ずかしいけどめちゃめちゃ和む。この空間だけひだまりで日向ぼっこしてるみたい。つられて笑う私を見て更に笑を深める二人に、ほっこりしてしまう。

 ごく自然に、もう少しこの人達の側にいてもいいかなって、そう思った。


「ヒューガさん、・・・あのね? 弟子になって勉強するのは、いいの。でも、お世話になってる冒険者の人がいるから、きちんとお話しないと」


 私の言葉に、ヒューガさんが目を見張る。席を立って私の側まで回り込んできた。


「あ、いや、私が自分で言うのも変だけど、本当にいいのかい?」

「ヒューガさん、ちょっと暴走するけど、私をフォローしてくれたいい人。サラさんも優しくてしっかりしてるから、きっと大丈夫」


 私の言葉に満面の笑みを浮かべたヒューガさんは、私の目線からすくっと立ち上がった。


「そうと決まったら、早速薬師の基礎の本を持ってくるよ! ちょっと待ってね!」


 言うが早いか、ダイニングを出て行った。

 ヒューガさんってしっかり大人だと思うんだけど、中身は子どもみたいな人なのね・・・。


「ジーナちゃん、あの人が貴女を弟子にしたいのは貴女の可能性を見たのもあるのかもしれないけれど・・・多分私のせいね」

「・・・え?」


 ポツリと、サラさんが自嘲気味に私に話しかけた。こくりとカップのお茶を一口飲んで続ける。


「私、女の子が欲しかったの。でも生まれたのは男の子二人で、そのふたりが結婚して出来た孫も男の子で。だからジーナちゃんみたいに可愛い女の子に憧れてたのよ。あの人はそれを知ってたから・・・」

「・・・え? じゃあ、似てるっていうのは」

「結婚したての頃は、こんな子が欲しいって言ってたから、そのイメージがそっくりだったの。自分でもビックリしちゃったわ」


 小さく笑うサラさん。確かに自分で言うのも変だけど、私のアバターは可愛い。女の子が欲しかったのなら、憧れてしまっても仕方ないだろう。

 でも、サラさんから不思議と嫌な感じはしなかった。むしろ慈愛に満ちた笑顔に私が癒されている気がする。たぶん元々優しい人なんだろう。ヒューガさんに対する態度も、ヒューガさんだから出来ていることなんじゃないだろうか?


「いきなりでビックリしちゃったとは思うけど、本当にヒューガの薬師の腕は確かだから。ジーナちゃんが私たちが嫌でなかったら、これからもよろしくお願いしたいわ」


 サラさんがそう言った所でヒューガさんが戻ってくる。


「これ! 随分昔に書いたものだから、探してしまったよ」


 ヒューガさんが手渡してくれたものは、茶色に黄ばんではいたけれどしっかりと綴られているノートのような紙の束だった。捲ってみると、薬草の名前や基本的な調合の仕方が書いてある。


「字は読めるかい? なら時間がある時にゆっくり読んでみるといいよ。じゃジーナちゃん、君の保護者の下へ案内してくれるかな?」


 言われてハッとする。そういえばこの時間は「踊るひばり亭」にはいないかもしれない


「えと、皆、冒険者なの。今日のお仕事、行ってると思う」

「そうか、冒険者なら依頼を受けて出ているかもしれないね。うーん、・・・じゃあこうしよう。夕方まで私の仕事部屋や仕事内容を説明しよう。それからジーナちゃんを送りがてら挨拶に行けばいいね」

「うん!」


 やった~! これで薬の調合に関わる品質低下のヒントが見つかるかも知れない!!

 ヒューガさんの言葉に、サラさんも頷く。


「じゃあご飯は腕によりをかけなくちゃね。楽しみにしてて」

「私も手伝う!」

「ありがとう、じゃあ一緒に作りましょう」


 サラさんがご飯作るとこも見てみたい! あれだけのお菓子作れるんだから、きっとご飯も美味しいはず!! 

 思わず前のめりになった私に、笑顔で快諾してくれるサラさん。


 新しい料理のレシピをゲットして、更にもしかしたら料理を作らせてくれるかも知れないし!!


 下心を内に秘め、私はワクワクしながらヒューガさんについて行ったのだった。


最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。


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