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初心者でも世界を創れますか?  作者: 陽菜
第二章  ローシェンナ 編
27/41

鍋と釣竿と私

料理に関しては素人ですので、??と思うところがあるかもしれませんが、温かい目でよろしくお願いします・・・。

 


 夕方になる一歩手前な時間、街道沿いの脇に小さな水場や茂みが見えてくる。そこに決まっていたように馬車が止まった。

 アラン達も分かっているのか、馬車から降り各々就寝するための場所を固まって確保し始める。

 何度もそこで野営したのか石を積んだ簡易竈もどきがあり、御者のルタさんは馬を樹の下に繋いで水を用意する。馬は慣れたように近くの草を食んで水を飲んでいた。それを見届けた後に、荷台から野営の準備をするべく色々と降ろし始める。アラン達も手伝って食材や毛布を降ろしたりしていた。

 干した野菜などの食材を見る限り、夕飯は期待してはいけない気がする・・・。

 私は荷を降ろしているゴードンの側まで行き、服の裾をクイクイと引っ張った。


「うん? どうかしたのか?」

「ご飯、私が作っちゃ、ダメ?」


 一瞬、ゴードンの動きが止まる。


「ジーナが作るのか?」

「うん」

「・・・作れるの、か?」

「うん。私の分だけでもいいから(むしろ作らせて欲しい)」


 幼児に言われて固まる気持ちも分からないではないが、私も二人(スピネルと特にアンバー)に言われて切実なのである。

 じっと私を見下ろしたゴードンは、「あの薬をジーナが作ったのなら・・・。もしや料理も・・・」などとブツブツ言い始めた。


 言ってないけど(ごまかしたから)私が創ったってなんとなく解ってる?? 

 ゴードンの観察眼にビックリしながらも上目遣いで見守っていると、それに気づいたゴードンは笑って私の頭をひと撫でしてルタさんの所へ行った。何やら話していて、私の方をチラチラと見ていたが、話がまとまったのか戻ってきた。


「ジーナの分だけなら作ってみても良いそうだ。ただルタも作るから、俺がジーナ用にもう一つ竈を作る」

「ありがとう!」


 満面の笑みでお礼を言う私に、ゴードンも笑を返してくれてもう一度頭を撫でてくれた。


「(俺の分も作ってもらえるか?)」

「(うんうん)」


 こっそりゴードンに耳打ちされて頷くと、取引は完了!そうと決まれば、早速準備しないと! 

 ゴードンが簡易竈を作ってくれている間に私がリュックの中から食材を取り出していると、話を聞いたのかアランとヴィオラがやってきて私の手元を覗き込む。


「お前、知らないうちにエクルで食材なんか仕入れていたのか」

「え、えと、貰ったの(本当は神域で取れた物)」


 お金は持っていないので、買ったとは言えない。引き攣りながらもそう答えると、さもありなんと言うように隣でヴィオラとアランが頷いていた。


「ジーナちゃんは可愛いもんね。貢ぐ人はいくらでもいると思うわ、うんうん」

「確かにジーナは可愛いけどな?」


 そういうのも、なんか嫌・・・。


 竈が出来上がると、さすがにリュックから鍋を出すわけにはいかないので(リュックが特別製(アーティファクト)だってバレちゃう)それはルタさんに予備を借り、私とゴードンの分の堅焼き煎餅パンと干し肉をもらう。

 水場で水を汲んで【浄化】をかけると、その鍋をかまどの火にかけた。干し肉を千切り鍋の中に放り込み、それだけでは足りないような気がするのでリュックから取り出して追加し、とりあえず蓋をする。どうするのかと見守る皆をよそに、私は腰に付けていたナイフを取り出しジャガ芋・玉葱・人参などの根菜類の皮を剥いてから適当な大きさに切り、煮えにくいものから鍋の中に加えた。その際にこっそり神域で作ったコンソメもどきの素も入れる。あとは煮込んだ後に味を整えるだけである。とりあえず一品はポトフにしてみた。

 本当ならカレーとかシチューとかも作ってみたいが、ここでシチュー用の牛乳を取り出すとさらに面倒なことになる。同様にカレーはスパイスを多く使う上にお米がない。パンで代用を・・・と言いたいけれど、あの堅焼き煎餅がカレーに合うかは疑問が残るのである。


 ポトフは後は煮込むだけなのでアンバーに鍋の番にお願いして、戻ってきたスピネルと一緒に水場に向かう。定期的に野営の場所に決まっているようで、この水場はずっと昔からあるらしく先ほど水を汲む時に魚がいるのに気づいていた。それを釣って夕食に加えてみようと思う。


 リュックから取り出した風に、インベントリーから折りたたみ式の釣竿を取り出す。自動釣り上げ式(オートピッキング方式)女神様特製(チート)の竿である。神域では使ったことないけど、ダメ元でやってみよう。


 餌はないが毛鉤もあったので、竿を組み立てて伸ばした後ヒョイと水場の中央付近に投げてみる。スピネルのワクワク感が半端ない。一応釣れた時用にバケツ代りの入れ物を用意しつつ苦笑いを浮かべた。


「釣れるか、分からないからね?」

「ワフワフ!(ご主人様(マイ・ロード)なら大丈夫!)」


 尻尾をちぎれんばかりに振りながら、水面をジッと見つめるスピネル。

 間もなく、ピクっとスピネルが反応するのと、浮きが沈むのが同時だった。両手で竿を持っているのだが、持っている所は危なげなく固定されており、竿だけがぐいっとしなる。と思った途端にしなった竿が反り返り、糸が私を超えて後ろへ流れた。驚く間もなく、そこにスピネルが飛びかかり・・・振り返るとスピネルが嬉しそうに一匹の20センチ台の魚を前足で押さえていた。パッと見アマゴっぽい。

 早いな、さすが特別製(チート)・・・。

 まるで鰹の一本釣りのようにあっと言う間に釣り上げた私に、御者のルタさんまでもが手を止めて目を見張っていた。

 釣れることが分かったので、釣れた魚はスピネルに任せて再び針を水面に投げる。間を置かずに反応があり・・・。


 結局人数分(+アンバーとスピネルの分)の魚が確保できたので、釣竿を片付ける。

 見ていたアランが面白い様に釣れるのを見て釣りたがったのだが、あの釣竿は特別製(アーティファクト)。使った所でおそらくアランには釣れないだろうし、辺りも暗くなってきたので諦めてもらった。

 水辺の脇でそのまま魚の腹を裂き、内蔵を取り出して綺麗にしておく。出した内蔵はスピネルが穴を掘ってそこに埋めてもらう。

 そのまま焼いても良かったのだけど、焼ける時間を短縮させるのと、魚が何を食べているのか分からなかったので、念のため。リュックから長めの串を取り出し、下処理をした魚を口からエラに串を通してからグシグシと波をうつように打つ。

 全部に串を打った後それを持って竈の側に行き、少し強めに塩を振ってから周りの土に立てて刺した。キッチリとした竈ではないので熱が漏れており、遠赤外線っぽく焼けないかなと思っている。見ているうちにジワジワと魚から水分が出てきたので、多分大丈夫なはず。

 竈の番をしていたアンバーが魚の焼ける匂いに鼻をヒクヒクさせ、ジーっと狙い始めた。まだ食べちゃダメだからね?


 さて、問題の堅焼き煎餅パンである。きちんとした調理場ならばバリエーションも考えられるのだが、いかんせんここは野営の簡易竈。調理道具も限られているので悩むのだが、パンを1センチ幅に輪切りにして(またもルタさんからフライパンをお借りし)揚げ焼きにしてみた。ラスクか揚げ餅みたいにならないかと試してみたのだが、元々多少の空気が入っていたおかげか香ばしい色をして軽く膨らみいい感じになった。試食してみると表面がサクサクして、揚げ餅とビスケットを足して二で割ったようなようなものができた。これなら無理に汁物に浸したり、涙目で齧らなくてもいい。ちょっと考えて本当に軽く砂糖をまぶす。調味料使いすぎかもしれないけど、ゴードンだけだしいいだろう(多分)。


 魚をひっくり返して焼きつつ、ポトフの仕上げに塩コショウ。少し味見をして・・・うん、美味しい♪

 使わせてもらったフライパンを洗って戻ると、なぜか私の竈に皆が集まっている。アンバーが威嚇をしているせいで鍋には近づけていないけれども。


「お魚は、皆の分もあるよ?」

「魚もそうなんだけどさ、さっきからメチャメチャいい匂いがするんだよ」


 アランが鍋を恨めしそうに見つめているが、ポトフは4人分しかないので譲れない。ちゃっかりお座りをして待っているスピネルを裏切るわけにもいかないのだ。


「ゴードンの分はあるけど、だめだよ。アランは、ルタさんのがあるでしょ?」

「なに?!」

「フフフ。予約しなかったお前が悪い」


 アランは振り返ってゴードンを睨んだけれど、ゴードンはニヤニヤと笑ってその視線をスルー。クールキャラかと思ってたけど、ゴードンさんなかなかな性格をしてらっしゃるようです。


 ルタさんにフライパンを返した後に魚も3人分渡しに行くと、ルタさんに感心されてしまった。


「嬢ちゃんは小さいのに手際がいいんだなぁ、こりゃ全部任せればよかったよ」

「ルタさんがいいなら、明日の朝ご飯、作るよ?」

「でも、乗車賃に食事の準備の手間も入ってるからな・・・」

「私、ご飯作るの好きだから、気にしなくていいの」

「そうかい? じゃあお願いしようかな」


 申し訳なさそうにルタさんにお願いされたが、喜んで引き受ける。ルタさんの腕が悪いんじゃないとは思うけど、ご飯は少しでも美味しい方がいいもんね♪

 自分の竈の所へ戻ると食器を出した。お皿には揚げ焼きパン?を並べ、鍋から湯気を立てながらポトフをお椀にめいめい入れる。アンバーやスピネル用にも入れてあげると、スピネルの尻尾の振りは最高潮。因みにアンバーは猫だけど猫舌ではないので、すでに自分の位置で待っていた。

 焼けた魚をゴードンさんに手渡し、アンバーとスピネルの二人にはもう一つお皿を出してその上に串を外して乗せる。人に変幻すれば手も普通に使えるけれど、さすがに人前でスプーンやフォークを使うわけにはいかない。ご飯にしか目がいっていないので、今の二人にはどうでもいいらしいけれど・・・。


「では、いただきます!」

「「「いただきます!!」」」


 初めての野営での、夕食が始まった。



最後まで読んで頂いて、ありがとうございます。


不定期更新ではありますが、ブックマークが100を超えていました。気まぐれな物語に付き合ってくださって、本当にありがとうございます。

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