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初心者でも世界を創れますか?  作者: 陽菜
第二章  ローシェンナ 編
19/41

第一魔物、発見しました

今回は話がなかなか切れず、いつもより少しだけ長くなってしまいました。

 

 ようやくスピネルに追いついた私達は、目の前の光景に固まってしまった。


 狼のような獣が20匹ほど唸りを上げて牙を剥きジリジリと距離を取る中、スピネルがいつでも飛びかかれる体制で対峙している。

 狼のような獣は体毛が真っ赤な炎のような色をしていた。図鑑アプリが反応してその獣が【フレイムウルフ】だと教えてくれる。肉食でいつも集団で行動し、人や動物を襲うらしい。そしてフレイムウルフは私が初めて会った魔物であった。


「に、逃げろ!!」


 フレイムウルフの向こうで追い詰められていたであろう地人が三人対峙しており、その中の戦士らしき剣を構えた男が叫んだ。多少の応戦はしたらしく、近くに2匹程倒れている獣の姿があるが、多勢に無勢だったらしい。

 スピネルの登場で少しは形勢が良くなったかと思われたのに、私の姿を見たせいで幼女の出現で保護対象が増えたと思ったらしい(当然だけどね)。

 どうしてだか、三人の周りには黒と黄色と青のオーラのような透明な靄が入り乱れて浮かんでいた。何アレ??


 その言葉でやっと解凍された私は、改めてフレイムウルフ達とスピネルを見つめる。


『ア、アンバー、意思の疎通は出来そう?』

『無理ですね、魔物は敵対の感情しか持ち合わせていません』

『そ、そっか・・・。仕方ないね』


 私がエンデワースを創った時の設定では、魔物の発生なんてなかった。

 普通に成長しているのなら現れないはずなのだが、どんな世界にだって清濁は混在している。女神様としては想定の範囲内なのだろう。だとしたら、私は対応するしかないのだ。

 役に立つか立たないかは別として、スピネル一人に任せておくわけにはいかない。自分でも分かるほどに震える手足を叱咤激励して、宝珠付き手甲(ガントレット)を起動させる。するとアンバーが私の目の前に降り立ち、まるで庇うようにフレイムウルフ達を睨みつけた。


ご主人様(マイ・ロード)、この程度でしたらスピネルにお任せ下さい。万が一にでも危険が生じましたら、私が加勢いたします』


 頼もしいアンバーの言葉に、スピネルの尻尾が軽く揺れた。と、次の瞬間、じれたフレイムウルフがスピネルに飛びかかる。簡単にその攻撃をかわしたスピネルは、それを期に次々と襲いかかるフレイムウルフをかわしつつ、前足で叩きながら後ろ足で踏み台にした。

 跳躍した先にいたフレイムウルフの首元に噛み付く。

 キャウン! という鳴き声がして、そのまま動かなくなる。見届ける間もなく、スピネルは次々とフレイムウルフに攻撃を重ね、気が付いた時には全てのフレイムウルフが伏していた。口から泡を吐き白目を向いている。首元が切り裂かれているのに血が見えないのは異世界(エンデワース)仕様だからだろうか、それともエンデワースの魔物に血はないのだろうか?


 しばらくすると氷が溶けるように、フレイムウルフの姿が景色に溶けて消えた。

 ピロン♪ とコミカルな音がしたのでインベントリにフレイムウルフのアイテムが入ったらしい。


 そうか、スピネルが倒しても、私が倒したことになるのね・・・。


 心臓をバクバクさせながらどこか冷静な理性で現状を把握していると、戻ってきたスピネルが「褒めて♪」というように満面の笑みで尻尾を振っている。まだ少し震える手で頭を撫でてやると、私の震えに気づいたのかその手に自ら頭を擦り付け、安心させるようにペロペロと舐め始めた。


『もう大丈夫だよ、怖がらせてしまってごめんね』


 ほんの少し済まなそうな顔をして、スピネルが見つめる。私はスピネルの首をぎゅっと抱きしめてその暖かさを堪能した。


『スピネルが、無事でよかった』


 私の言葉が意外だったのか一瞬キョトンとしたスピネルが、次には本当に嬉しそうにブンブンとしっぽを振り始める。


『僕を心配してくれたんだね! ありがとうご主人様(マイ・ロード)!!』

『スピネルに任せておけば大丈夫だったでしょう? スピネルと対等に戦わせるのでしたら、(ドラゴン)を連れてくるべきですね!』


 アンバーがさも当然と言ったように寄ってきて、スピネルの頭の上に乗る。アンバーにもお礼の意味で頭を撫でると、ゴロゴロと喉を鳴らしてくれた。


『スピネルって強かったんだね、ビックリしたよ。ありがとう!』

『こんなの当然だよ。また言ってね♪』

『うん!』


 念話で会話していると、しばらくしてから何かが動く気配がする。

 その方向を見ると、先ほど私に逃げろと警告してくれた戦士らしき男が、ゆっくりとこちらに向かってきた。その後ろでは腰を抜かしている女性を、もう一人の細い男性が介抱している。


「嬢ちゃんのペットは強いんだな。フレイムウルフに囲まれてどうなる事かと思ったけど助かったよ、ありがとう」


 話しながら近寄ってきた男性に、スピネルが私に首元を抱えられたまま警戒して対峙する。人懐こそうなスピネルが珍しいと思ったけれど、さっき戦闘したばかりなので気が立っているのかもしれない。

 スピネルの様子に気づいて、男性はおどけた様に両手をサムズアップした。先ほどのオーラの色が変わって、今度はオレンジの色をベースに、黄色が混じっている。これはもしかして、感情の色?


「何もしやしないよ、お前のご主人様にお礼を言いたかっただけなんだ。もちろんお前にも・・・うわぁ?!」


 手を伸ばそうとして、スピネルに唸られる。頭の上のアンバーも毛を逆立てて警戒していた。男性のオーラの色に黒が混じった。

 男性を鑑定(みて)みると、






 アラン 男 (25歳)  戦士(冒険者ギルド所属)


 筋力  18/50

 器用  12/50

 耐久  18/50

 敏捷  15/50

 知力  12/50

 精神  10/50

 魅力  10/50

 幸運  11/50


 HP  198/513

 MP  015/015



 《クラス》


    戦士     Lv. 8


    木工職人   Lv. 5


    商人     Lv. 3



 《アクティブスキル》

 




 《パッシブスキル》

 

 




 ・・・うーん。ステイタスの数値が、耐久値以外私より遥かに低い。持久戦にならない限り、私のほうがうっかり勝ててしまう。

 しかも私より耐久値あるのにHPが半分ぐらいってどういう事? アクティブもパッシブもスキルが見当たらないっていうのは・・・やはり私が特別なんだろうな。一般男性のステータス平均数値が10なんだから、この人も優秀な方なんだろうけど(精神と魅力以外は10超えてるし)。


 アランはチラチラとスピネルの方を伺いながら、私に視線を寄越してくる。

 さっきフレイムウルフに襲われてた時のオーラが黒と黄色と青で、いま私に近づいてきた時が黄色とオレンジ。スピネルに威嚇されて黒が混じったって言う事は、黒は恐怖かな? 

 何となくだけど黄色は警戒(さっきも出てたし)で、オレンジは好奇心といった所だろうか? 向こうで入り乱れてたのは、三人の感情が重なって見えていたからで、あの女性の様子からいくと青は不安かな? なんて分かりやすいんだろう。

 でもアンバーとスピネルには分からないのか警戒を解かない。それだけ心配してくれてる証拠なんだから、ちょっと嬉しくなってしまう。

 スピネルの首元を再びぎゅっと抱きしめて頬ずりをする。


『大丈夫よ、スピネル。この人は何か危害を加えようと思って来たわけじゃないわ。アンバーも落ち着いて?』

『ですがご主人様(マイ・ロード)くれぐれも御身を軽んじてはいけません。神域の外にいる間は私が常にお側に控えさせていただきます』

ご主人様(マイ・ロード)がそう言うのなら・・・。でも警戒は忘れてはダメだよ?』


 二人が少し警戒を緩めてくれたおかげで、緊張していたアランが大きく息を吐いた。今度は二人に気をつけつつ、ゆっくりとしゃがんでから私に手を差し出した。


「俺の名はアラン、オーキッドの街で冒険者をしてる。この【碧海の森】には依頼でとある薬の材料を取りに来てたんだ。向こうにいるのは仲間のヴィオラとゴードンだ」


 アランの言葉が聞こえたのか、ゴードンと呼ばれた男性がしゃがみこんだまま私を見て軽く手を上げる。腰を抜かしていたヴィオラが荷物から水をもらって一息ついていた。少し落ち着いたらしい。私が恐る恐るアランの手を握ると、破顔して大きな手をぐっと握り返してきた。自分の手の小ささが際立つ。本当に小さくなったんだな・・・5歳だもんね・・・。


「本当に助かったよ。フレイムウルフは一匹ずつなら対応できるんだが、あの数ではひとたまりもないからな。頼みの魔法使いは腰を抜かしてるし、ゴードンは不意打ちくらって足に怪我しちまったし」

「し、仕方ないでしょ! あんなに沢山のフレイムウルフなんて初めて見たんだから!!」

「・・・ヴィオラ、落ち着け」


 魔法使いらしきヴィオラを落ち着かせているゴードンが怪我をしていると聞いて、薬の事を思い出す。あれから薬草の精製の仕方を変えて品質低下させたので(多分)普通の薬のはず、この人に使ってみようかな・・・。


「・・・あの」


 ずっと黙っていた私が口を開いたので、一瞬キョトンとしたアランが快活な笑顔を向けてくれる。


「ゴードンさんの怪我、薬あるの?」

体力回復剤(ポーション)は多少持ってたんだけど、今ので使っちまってな。安いものじゃないから、そう数は持てないし・・・。まぁ歩けないわけじゃないからとりあえず村まで戻って一泊してから、ゆっくり考えるよ。経費は痛いが馬車って手もあるからな」


 アランの言葉に、しばし考え込む。

 体力回復剤(ポーション)の値段は高いのね。って事は魔力回復剤はもっと高い? いくらぐらいで売ってるのか、何軒か確認してから売りに行ったほうが良さそうだ。 

 エクルの村からオーキッドの街に向けて馬車があるという情報は助かる。大人の足で一日かかるのなら、子どもの、しかも幼女の足では1.5倍は覚悟したほうがいいかもしれない。

 薬の譲渡は、ゴードンの様子を見てから決めたほうが良さそうだ。体力回復剤(ポーション)の値段が高いことを考えると、気安く受け取って貰えないかもしれないし。


「所で嬢ちゃんはどうしてここにいるんだ? お使いの途中で迷っちまったのか?」


 アランに問われて、さもありなんと空を仰ぐ。普通森の中で幼児を見つけたらそう思うよねー、でも違うの。中身は成人した大人なんですよ・・・。

 さてどうしよう? なんて言い訳をする? 迷子と言った所で、村に戻れば住人じゃないことがすぐにバレてしまう。この森で住んでた事にする? そうすると村の住人に怪しまれるよね・・・。近隣の森なんて、きっと採取とか狩りで入ってるだろうし。ここは子どもの無邪気な笑顔でごまかしてみる??


「えと、分からないの」

「分からない?」

「気がついたら、この先の森の中にいたの」

「誰か一緒にいなかったのか?」

「この子達が一緒だよ。ずーっと一緒なの」


 スピネルとアンバーを抱きしめながらの幼児らしい言葉に、アランの表情が曇る。落ち着いたのかヴィオラが立ち上がり、ゴードンに肩を貸しながらこちらへやってきた。ゴードンは顔を顰めながら足を引きずっている。よく見ると右足の脛のズボンが破れて、血が滲んで見えた。痛そうだ・・・。


「とにかく、その子達も含めてここを離れましょう。このまま夜になってしまったら目も当てられないわ」

「そうだな、こんな血まみれの場所で野営はしたくない」


 アランの言葉に私がきょとんとする。血まみれ?? 辺りを見てみるが、私の視界には血の赤い色一つ見えない。年齢制限別フィルターでもかかってるのかしら・・・。でもそうしたら、ゴードンの傷から滲む血が見えるのが変・・・。???、基準がよく解らない・・・。魔物の血だけ見えないの? 動物の血も見えないのかな? これは検証する必要がありそうだね。そしてハタッっと気づく。


『もしかして、スピネルも血まみれなの?』

『速攻で私が洗浄(クリーニング)してますので大丈夫です』

『もともと僕の体毛は液体を弾く性質してるから、そんなについてなかったし、大丈夫ですよ』


 フォローになってない気もするが、やっぱりこの辺りは血まみれという事らしい。歩くたびに踏んでしまうんじゃなかろうか・・・。思わずブーツの裏をこっそり覗いた。やっぱり付いてない。女神様特別(チート)装備なので、汚れない・壊れないは標準装備な気もするが、まさか他の人が見える血が見えないというのはちょっと困る。グロいのは嫌だけど、異端で目立つのも困るのだ。

 消えてしまったフレイムウルフに突込みが入らないのにも疑問が残る。インベントリーは女神様からいただいた私だけのものであるはず、だとしたら普通の人が獣を倒したらそこに遺骸が残るわけで、残らなかったらやっぱり不思議だと思わないのかな? それとも、エンデワースでもチートな仕組みがあるんだろうか? 


 つらつらと考えていると、視線を感じる。見上げるとゴードンの支えを交代してもらったヴィオラが、こちらを意識してチラチラ見ていた。気づかれないように見ているらしいが、バレバレである。そんなヴィオラを見てアランもゴードンも苦笑いを浮かべた。


「悪いな嬢ちゃん、うちの魔法使いは可愛いものに目がなくてな、ククク」

「捕まえて何かする訳じゃないから、気にしないでくれると嬉しい」

「二人とも、何でそんな事言うのよ?! 気を悪くされちゃうでしょ!!」


 真っ赤になったヴィオラが二人に突っかかる。と、思い出したかのようにアランが私に目を向けた。


「そういえば、嬢ちゃんの名はなんていうんだ?」


 私はすっと視線を上げて三人を見つめて口を開いた。


「ジーナハース。この子はスピネルで、こっちの子がアンバー」

「そうか、とりあえず俺たちと一緒に安全な所まで行こう。夜になる前に村に行けるといいんだが・・・助かっただけめっけものだな」

「よろしくね、ジーナちゃん」


 アランに背負い直されたゴードンは、相当痛いのか顔を顰めていたが、私が見つめているのに気がつくとそれを抑えて笑ってくれた。いい人だ、やっぱり渡そう。

 私はリュックを降ろしてカバーしている蓋を開け、キュッと縛ってある紐をほどいて中を覗き込む。私以外の人がリュックを覗き込んでも初心者冒険セットの道具が見えるだけだし、取り出して使うことはできない。使用者(オーナー)として登録されちゃってるからね。

 私が急にごそごそし始めたので、三人が何をしているのかと見守っているが、それを気にせず中から軟膏を取り出す。【()体力回復剤 軟膏ver.】である。

 リュックを背負い直してからアランに背負われているゴードンに近づき、怪我をしている足のズボンを捲った。何をするのかと見守っていたゴードンが思わず痛みの声を上げた。


「おい、嬢ちゃん! ゴードンは怪我してるんだから、触っちゃダメだよ」

「薬持ってるから、塗ってあげるよ」

「「「え?」」」


 三人が惚けたように揃えた声を上げる。

 私はこっそりゴードンの傷口に浄化の生活魔法をかけてから、薬の蓋を開けてたっぷり軟膏を指に取り、抉れたような傷口に恐る恐るそれを乗せるようにしてみた。


 人体実験に使っちゃってごめんなさい、でも鑑定では効果はあるはずだから!!


 祈るように、ゴードンの傷口を見つめる。そしてその効果はすぐに現れたのだった。




 

最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。


この先、新菜の特別チートっぷりが加速いたします。

振り回されないように、頑張りたいと思います・・・。

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