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初心者でも世界を創れますか?  作者: 陽菜
第二章  ローシェンナ 編
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お薬の事情

 


 みるみる、本当にその言葉がぴったり当てはまるほどにゴードンの傷が塞がっていき、どこに傷があったのかも分からなくなった。

 怪我した脛を見つめていたヴィオラと、怪我をしていた当人のゴードンが目を丸くする。ゴードンを背負っていたアランは何が起こったのか分からず、二人の驚いた様子にやきもきしていた。


「おい、嬢ちゃんの薬はどうなんだ? 少しは痛みが薄れたのか?」

「・・・薄れたどころか」

「消えちゃったわよ、傷・・・」


 ヴィオラが目を瞬かせながら、私とゴードンの怪我をしていた場所を見比べる。話を聞いて半信半疑のアランがゴードンを下ろすと、ゴードンも信じられないといった様子で自分の怪我をしていた足をしげしげと見つめ、膝を屈伸したり前に蹴り出してみたりしている。

 動きにも異常はなさそうだ、効いて良かった。

 アランもゴードンの怪我をしていた脛を見て顎を外しかけ、私を二度見した。


「嬢ちゃん、これは一体・・・?!」

「もう痛くない? これで歩いて村に帰られる?」


 幼児のフリをして、アランの質問?をスルー。

 聞かれた所で、私にだってきちんと仕組みが解ってる訳じゃないから、説明できないんだよ。上目遣いで見つめる私に、アランが頬を染めて怯む。治ったんだから、ダメ?


「ちょ、ちょっとその薬見せてもらってもいい?! ジーナちゃん」

「もう入って無いよ?」


 高揚するヴィオラに容器を渡しつつ、空である事を補足する。

 基本的に薬は一回使いきりタイプで、少し使おうが全部使おうが消えてなくなってしまうのだ。封を切らないままでの品質保証期間は6ヶ月だが、一度封を開けてしまえば消費期限は5分とないと思う。その辺は魔法的な何か(サムシング)なんだよね、やっぱり説明できない。

 軟膏が入っていた空の平たい容器を、ひっくり返したり蓋を眺めたりしているヴィオラ。

 赤いラベルは製作段階で(自動的に)貼ってあるけど、体力回復軟膏って書いてあるだけで、鑑定のスキルがなければ詳しい品質は解らない。いくら調べても解らないと思うんだけど、・・・もしかして特別性(チート)な薬だったのかな?

 不安になったので、先手必勝で話しかける。


「ヴィオラがいる所は、お薬ないの? ゴードン治せない?」

「体力回復剤はあるが水薬(ポーション)だし、文字通り体力を回復する(もの)であって、怪我の治療はできない。効果の高いものなら、多少の傷みや怪我の程度の軽減は出来るが・・・」

「瞬く間に怪我を治すなんて、街の神殿の司祭様ぐらいじゃなきゃ無理よ。それもお布施が結構かかるから、貴族や一発当てた冒険者が依頼するぐらいだと思うわ」


 なるほど、神様の存在とかはあって、それを神殿が管理してるのね。さすがにそこまで『る○ぶ エンデワース』には載ってなかったな。どこかに一般常識的な事を検索できる場所があるといいんだけど。


「じゃあ怪我をした人はどうするの?」

「体力を回復させ、自然治癒力を高めてーーーっと、身体が治そうとする力を強くして、治るのを待つしかないんだ。だから俺も、しばらくは冒険者(しごと)ができないと覚悟していたんだけど・・・」

 ゴードンが驚いた表情のまま、答えてくれる。


 うーん、困った。体力回復剤が、まさか本当に体力だけ(・・・・)回復する薬だとは思わなかったよ。

 ゲームの世界ではHPとかMPの概念はあるけど、怪我とか心理的疲労の回復なんてしないしな・・・。普通に怪我も治るものだと思ってたけど、違ったのか。いきなり異端マーキング発動??


 アランが私の前にしゃがみ込み、目を見つめる。その顔は今までとは違って真剣なものだった。そのあまりの真剣さに、思わず心臓がどくんと跳ねる。


「なぁ嬢ちゃん、この薬はまだあるのか?」

「あと少しなら・・・(嘘。本当は売るつもりだったからいっぱいある。神域にはもっと凄いのもあるし・・・)」

「なら、できるだけ使わないようにして、隠してしまっておけ。村や街で見つかっちまったら、お前みたいな子ども、あっという間に盗られちまうぞ?」


 アランの言葉を肯定するように、ゴードンもかがみ込んで続ける。


「命を助けてもらった上に、怪我を治してくれた恩人を売りはしないよ。だからこそ、その薬は隠しておきなさい。ジーナが本当に困った時に使えばいい」

「もしジーナちゃんに行く所がないなら、しばらく私達と一緒に行動する? もちろん冒険に行く時はお留守番になっちゃうけど」


 目をパチクリしていた私は、思わず笑顔になる。最初に出会えたのが、あなた達で良かった。

 私の薬が特別だと解ってても、それを利用しようとはしないんだね。元々人が良いパーティーなんだろう、嬉しいなぁ。

 ゆっくりと頷いてアラン達を見つめると、アランは私が理解した事に安堵したようなため息を漏らした。


「お家分からないから、街で探すの。途中まで一緒しても、良い?」

「そうだな、ともかく村へ戻ろう。考えるのはそれからだ」


 ゴードンが、戦闘のために放り出した荷物を拾いに行く。普通に歩いているので、怪我はもう大丈夫そうだ。

 アンバーとスピネルを見ると、予定外のことに訝しがりながらも私の側を離れる気はないらしく、寄り添うようについて歩き出した。


 ついに人型の集落に行く。

 人型達がどんな暮らしをしているのか、どんな仕事をしているのか知りたいことばかりでウズウズする。

 リュックを背負い直して、手甲(ガントレット)を起動していたことを思い出し、慌てて消した。

 チュニックが七分袖みたいだし気づかないよね? 大丈夫だよね?

 そっと見上げたヴィオラの目は、引くほどにキラキラしている。


 うーん・・・これはアレだ、大好きなアイドルのコンサートにいる時の友人と同じ目だ。

 私は興味はなかったが、一人では行きづらいと懇願されて韓流のアイドルのコンサートに引きずられていったことがあるのだ。ちょうど友人も周りにいた女性もこんな目をしていた。

 確かにこのジーナの姿は美幼女だから、可愛いと思うのは当然だろう(私もそう思う)。だけど、まさか一緒にいる時はずっとこんなんじゃないよね・・・?


 村への途中の道には、アプリの図鑑に反応してマーキングされた薬草がいくつかあったのが、採取しに行こうとするたびにアランに連れ戻された。仕方がないので渋々諦める。

 後でこっそり採取に来よう・・・。

 途中魔物に襲われる事もなく、私達はエクルの村へと無事に着くことができた。





 森から抜け出せたのは、空が茜色に染まる頃だった。

 薄暗い木々の間から急に視界が開けてゆき、しばらく進むと低い茂みや草むらのずっと向こう側に板塀がぐるりと囲んでいるのが見える。その上に建物の屋根らしき物が見えるので、あれがエクルの村なのだろう。

 村が視界に入ったことで、三人が明らかにホッとしたのが分かった。逆に私は緊張してくる。

 三人以外で人型に会う訳だし、エンデワースの常識というのがいまいち私には解っていないからだ。『る○ぶ エンデワース』の内容がザックリ(・・・・)だということが解ったので、詳しい事は自分でも観察調査する必要がある。それが楽しくもあるのだけれどね。


 村への道すがら、大人の足に幼児がついていけるのかと心配していたのだが、悩む必要もなかった。

 どうやら女神様特製(チート)セットであるブーツが疲れさせずに足を運び、マントに浮遊の機能があるらしく、分からない程度の僅かさで宙に浮いていたのだ。スピネルを追って走った時に気になっていた事は、事実だったらしい。

 分かりやすく言えば、足を動かしているふりをして勝手に移動しているといった感じ。これなら耐久値の低い私でも、疲れることなく移動できる。

 途中何度か休憩を入れてくれたけど、おそらく必要だったのは私ではなくヴィオラであっただろう。鑑定してみたら耐久値は私よりも低い8であった。

 人型のステータスって成長するんだろうか? 体力作り出来るのなら、私ももう少し頑張ったほうがいいかもしれないね。


ご主人様(マイ・ロード)、このままこの者達と共に行動をされるおつもりなのですか?』

『悪い人達ではないみたいだし、オーキッドの街に行くまでは大人と一緒のほうがいいと思うから。深く関わるつもりはないけれど、ね』


 私の答えに、アンバーが難色を示しているのが分かる。アラン達を信用していないというよりは、創造主である私の立場を解っていないアラン達が気軽に接するのが気に入らないらしい。

 そういうツンデレな所も萌えポイントだよ、アンバー。

 ヴィオラが撫でようと手を出したら、毛を逆立てて威嚇した後、猫パンチを食らわせていたし。

 スピネルはアランやゴードンとすっかり打ち解けて、じゃれあって遊んでいたりする。

 ・・・あそこまで打ち解けろとは言わないけどさ。っていうか、スピネル、本気でじゃれたらアランの首がもげるから程々にしなさいよ?!


 夜の帳が降りる前に、エクルの村の門をくぐることが出来た。

 アラン達は迷うことなく一軒の二階建ての建物に入っていく。看板に簡単な家のマークが描かれ、文字が書いてある。日本語でも英語でもないその文字は『森のかまど亭』と読めた。おそらく宿屋のようだ。


「ターナ、今日も世話になるぞー」


 ぞろぞろと連れ立って入った三人は、入ってすぐの食堂らしき場所にあるテーブルの前の椅子に各々どかりと座り込んだ。ターナと呼ばれた店の女将らしいふっくらとした女性が、注文されたエールを運びつつ、入口で店内に入るのを躊躇っている私に気づく。


「おかえり! 三人とも無事で良かったよ。おや、見かけない子だね、この辺の子でもなさそうだけど?」

「あぁ、【碧海の森】の奥にいたんだ。誰かとはぐれたらしいがどこから来たのかも、帰り道も分からないらしくて、とりあえず連れてきたんだよ」

「とりあえずオーキッドの街まで行けば何か手がかりがあるかもしれないでしょ? だから私達が連れて行こうと思って」

「ジーナ、どうして入ってこないんだ?」


 ターナの疑問にアランとヴィオラが答えるが、ゴードンが私の様子を気にしてくれた。どう説明するべきか迷い迷い、言葉にする。


「だって、アンバーやスピネルがいるから。ここ、ご飯食べるところでしょう? 動物を連れて入るのは気にするのかなって・・・」


 私の言葉に、それを聞いていた全員が爆笑した。

 え?! 私変なこと言った?!!


「何を子どもが気にする必要なんかないよ、街の貴族相手の高級宿屋じゃあるまいし。馬や牛ならともかく、そんなに可愛らしい犬や猫を追っ払ったりするもんか。冒険者の中には『調教師』や、それに付き従う獣もいる。店に入れて粗相をしないなら全然構わないよ」


 ターナの言葉に安堵して、頭を下げるとやっとスピネルたちを促しながら店内に入る。離れるのも変かと思い、アラン達と同じテーブルについた。スピネルは私の足元に伏せをし、アンバーは膝の上で丸くなりながら耳をそばだてている。

 その様子を見てターナは笑みを浮かべると、私の前にコップを一つ置いた。ふんわりと漂ってきた香りはホットミルクのようだ。ターナの顔を見上げると、「飲みな、温まるから」と言って促してくれたので、両手で持って口にする。

 ほんのり温かく優しい甘さが、口いっぱいに広がった。ミルクの風味も丸い。この村の家畜は大切に育てられているようだ。

 美味しそうに飲む私を見て、ターナは次の給仕に向かった。


 ホットミルクを出されたという時点で幼児扱いは仕方がないので、容姿のまま幼児のフリをする事にする。

 私があの【微体力回復剤 軟膏ver.】を創ったと判ったらどんな顔をされるやら、今から言い訳を考えるのも頭が痛い・・・。特別(チート)で目立たないようにするのも、苦労するね。

 見せた薬は誰かの秀作という事にして、修行中(という設定)の私がさらに劣化バージョンを作って売ったほうがいいのかな? っていうか、あれより品質低下って、どうやって創るだろう・・・。その辺の普通の果物とか野菜混ぜてみる?? 栄養ドリンクみたいで案外美味しいかもね。もしくは青汁みたいな?


 ぐるぐると考えを巡らせているうちに、アランが料理を注文し出てきたものを取り分けて食べていた。


「ほら、ジーナもたくさん食え! 食わないと大きくなれないぞ?」


 どこぞの父親かのようなセリフを吐きながら、アランが私の目の前にドンと料理を取り分けた皿を置く。鶏肉のトマト煮込みや、ポテトサラダ、ポークリブの照り焼きなんかも乗っている。


 美味しそうだ、美味しそうだけど・・・こんなには食べられない!!


 仕方がないので、食べるふりをしながら膝のアンバーや足元のスピネルに御裾分けをする。食事の臭いに釣られたらしい二人はしっかり協力してくれたが、


『・・・ご主人様(マイ・ロード)の食事の方が、何万倍も美味しいですね』


 と、さらなるツンデレ発言をかましていたのだった(でも、食事はしっかり食べている)。







最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。


ローシェンナ編に突入いたしましたが、筆の方は遅々として進みません。文章を書くのって、難しいですね・・・。

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