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初心者でも世界を創れますか?  作者: 陽菜
第一章  独り暮らし満喫編
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採取という名のヘッドハント

久しぶりの投稿です・・・。

 

 女神様セットの検証は途中だったが、待たせてしまってはいけないのでそのまま出掛ける事にした。

 謎は満載だけれど、有利にはなっても不利にならない事は解っているので、使いながら理解するようにしよう。

 リュックやアクセサリーは神域なので付けない事にする。二人がついて来るんだし、大丈夫だろう・・・。


 部屋着を裏?に身につけたまま、装備を出す。身体にはピッタリだし動きを遮るものもない。軽くステップを踏んで確認してから、階下に向かうべく足を踏み出した。


「お待たせー」


 私を待っていた二人はいつもとは違い、動物の姿に戻っていた。その方が身動きし易いらしく、スピネルはうーんと伸びをしてからブルブルと身体を震わせて、嬉しそうに尻尾を振る。足元にいたアンバーがヒョイとスピネルの背に乗る。


「アンバー、私が抱っこしようか?」


 私の提案に、アンバーの毛がピッと逆立つ。


「ご主人(マイ・ロード)に抱えて頂くなど、滅相もございません。ちゃんと走れます!」

「そうじゃなくてね? 私が抱っこしたいのよ。肩に乗せて冒険とか、夢じゃない?」


 私の答えに、アンバーが複雑そうな顔をする。それでも私が見詰めていると、暫く悩んでいたらしいが諦めたらしい。両手を広げて待ち受けていた私の腕に飛び込んできた。

 フンワリと柔らかなアンバーの毛の感触が腕に触れて、にっこり微笑むと、猫の顔なのに戸惑って赤くなっているのが凄く分かる。ツンデレだなぁ。


 準備が出来たので二人と共に玄関を出て石畳を歩き、門へと向かう。

 女神様が言っていた通り、蔓植物で出来たアーチに看板の様な物がついていた。今の所真っ白で何も書いていないので、そのまま神域の敷地の外に出られるのだろう。

 これが人型の地に繋がるのかと思うとやはり信じられないのだが、神域自体が常識が通用しないので今更な気もした。

 エンデワースに来てまだそんなに日は経っていないのだけれど、内容が濃いのでずっとここに居た気がしているせいか妙にドキドキしてしまう。深呼吸、深呼吸。

 私が大きく息を吸っているのに気づいて、スピネルが不思議そうに見上げる。それに気づいた私は微笑みかけると、両手で門の柵を押し開いて足を踏み出した。



 一瞬、空気が変わる。敷地とは違う草の香り、肌に感じる陽の光が少しだけ強い気がした。

 目の前には草原が広がりその先は靄のようなものが煙っており、右手のずっと先にコンモリと森が茂っている。敷地のベランダから見た通りの景色に軽い感動を覚えた。二人も初めての外が珍しいのか、鼻をひくつかせ周りをキョロキョロと見つめている。


「さぁ、目的の薬草はどこかな?」


 昨晩今日のために確認しておいた『困らないための植物の見分け方』『分かりやすい動物・魔物図鑑』『今日からあなたも錬金術師!錬金レシピブック』の三つのアプリ。今回の目的は錬金術の為の採取なので『動物・植物図鑑』は出会った時の対応策である。

 とりあえず、錬金術の大定番である体力回復剤(HPポーション)と魔力回復剤(MPポーション)に必要な薬草を集めようと思う。体魔回復剤(エリクサ)のレシピもあったのだが、薬草とは別に月光石(フローライト)という鉱石が必要らしいので、見つかれば採取しようかとも思うけれど作成に関しては保留にする。

 頭の中で『困らないための植物の見分け方』を起動し、ページを送り目的の薬草にチェックを入れておいた。こうしておくと視界に映る景色の中で目的の薬草があるとそれにマーキングされる。特徴なんかもきちんと書いてあるのだがこの機能のお陰で間違うことなく、そして迷うことなく効率的に見つけることが出来るらしい。


「まずは畑栽培用の薬草の株だよね?どれくらい集める?」

「そうね、五束づつぐらいあると安心できるかな? あ、でも使う部分が全部だったりすると次の分が再生(リポップ)しなくなる?」

「神域の仕様ですと、僅かでも根が残っていれば、そこから再生(リポップ)される可能性が高いですね」

「ともかく見つけてからだよね・・・」


 二人と話しながら、少し歩いて草原を見つめた。と・・・。

 視界にすごい数の勢いで薬草の上にマーキングが浮かぶ。


 何でもない草原に見えるけど、ここって薬草園なの? ほとんど全部の草にマークがポップして見えるんだけど・・・。


「ご主人様(マイ・ロード)?」

「なんかね、ここら辺全部そうみたい・・・」


 確かに探すズルはしたけど、ここまであっけないと冒険した感が全くない。ここなら畑で栽培しなくても、採取に来るだけで良さそうだな。でもせっかくなので採取する。


「このひょろ長くて丸い葉っぱのが体力回復剤(HPポーション)のマロウ草で、こっちの細い針状の葉っぱがヘザー草。どっちも根っこからの採取してっと、使うのは葉っぱなんだよね。あ! あっちにネトル草が群生してる?! ジュニパーの木があるとしたら、あの森かな?」


 結局はワクワクしながら独り言を言う私に、スピネルは人間の姿に戻って採取を手伝ってくれる。アンバーは猫の姿のままで周りを警戒しつつ、草原の先を先行してくれていた。


 黙々と採取を続け、気がつくとインベントリーの中には山のようにマロウ草とヘザー草とネトル草が収納されている。

 ちょっと採りすぎちゃったかな?当分来なくてもいいかもね・・・。


 スピネルが畑で栽培する用の根っこからの各薬草を現在採取していると、そこへアンバーが戻ってきた。


「ご主人様(マイ・ロード)、この少し先に小さな水たまりがございまして、その脇の岩陰には蜜蜂の巣があります。どうされますか?」

「蜜蜂の巣?!」


 思わず顔を上げて、アンバーを見つめる。

 アンバーは私を危惧して教えてくれたのだろうが、蜜蜂はもともと攻撃しなければ襲っては来ない。針を刺すのも命懸けだしね。小さいのに健気だし、あのフワフワの襟巻き姿も可愛いと思う。

 家の敷地に引っ越してくれないかな? そうすれば受粉(必要ないかもしれないけど)もしてくれる上に蜂蜜が手に入る。蜜を採った後には蜜蝋が残るから、錬金の際に軟膏とかも作れてしまうかも。


 錬金術のアプリを調べてみていて思ったのだけれど、体力回復剤も魔力回復剤もファンタジーだと水薬(ポーション)が一般的である。だけど同じ回復剤なら水薬(ポーション)だけではなくて錠剤(タブレット)や軟膏があってもいいんじゃないかと考えていたのだ。

 用途は固定されるかもしれないが、水薬よりは錠剤や軟膏の方が持ち運びは断然良いはずである。生活魔法が自由にアレンジできるのなら錬金術も私の想像でアレンジできるのかもしれないので、挑戦してみる価値はありそうである。


「蜜蜂連れてこられるかな?」

「危険なのでは?!」

「大丈夫だよ、攻撃しなきゃ刺さないし」

「・・・では直接交渉してみてはいかがですか?」


 アンバーの言葉に、目をパチクリさせる。


「交渉って、蜜蜂と?」

「はい、蜜蜂と、です」

「蜜蜂話せるの?!」


 驚く私に、薬草を丁寧に採取し終えたスピネルが見つめてきた。

「会話は無理かな? 家畜の種から創り出された僕達とは違って、エンデワースの生き物だからね。でもエンデワースの生きとし生ける物はご主人様(マイ・ロード)が基から創られたんだから、意思の疎通というか感情の交換ぐらいは出来るんじゃないかな?」

「感情の交換・・・」

「こちらが厚意を持てば、あちらにも伝わりやすいということです。もちろんご主人様(マイ・ロード)がなさることが前提ですが」


 来て欲しいって思えば、来てくれるかな? 今の所敷地から採取される甘味調味料は、砂糖とメイプルシロップ。アンバーの食材加工はスキップできないから発酵や熟成には時間かかるけど、私が試しに作ってみた味噌や醤油、チーズやお酒やワイン、お酢や味醂なんかもある。これに蜂蜜が加われば料理のレパートリーも更に広がるのだ。


「アンバー、スピネル、蜜蜂が来れば蜂蜜が取れて、スイーツにも活用し放題よ! 私はパンケーキにかけるのが好きだな~」


 スイーツという言葉に、アンバーの耳がぴくりと反応する。見つめる瞳がキラキラしてきた。


「こほん、ご主人様(マイ・ロード)、微力ながらこのアンバー助力させていただきます!」

「パンケーキってなに? パンのケーキ?? なんだか美味しそうだね♪」


 スピネルの見えない尻尾が全開で揺れている。メンバーの全会一致で『蜜蜂さん引越し計画』が発動したのであった。



 計画といっても、簡単なものである。三人でこっそり蜜蜂の巣に近づき、よく分からないまま警戒して出てきた一匹の働き蜂を見つめて念を送ってみたのだ。


 怖くないんだよ? ここより住み心地いいし花もたくさんあるから、うちに来ない? 家賃は出来高の半分の蜜と蜜蝋でどうかな? うちに来ると、効率良くなるよ?


 なんの交渉だか感情の交換だか分からなくなってきたけどそんな念を送っていると、滞空していた働き蜂がスっと巣穴に戻っていった。待つことしばし。

 ダメだったのかと半分諦めていると、巣からなにやらスゴイ羽音がし始めて、グニャグニャと形を変える黒い塊が飛んできた。よく見ると蜜蜂の団体様?!


「上手くいったようですね」

「ちょうど巣分けの時期だったのかな? 良かった」


 黒い蜜蜂の塊は私の目の前で一旦停止すると、中から重そうな身体を一生懸命に浮かせたふたまわりも大きな女王蜂が出てくる。

 思わず両手を差し出すと、その上にちょこんと転がるように着地した。そして動きを止めて私を見つめている(ような気がする)。


「よ、よろしく?」


 ぺこりと頭を下げると、気のせいか女王蜂もお辞儀をしたような気がした。スピネルに向かって振り返る。


「ねえ、連れて帰っていいのかな??」

「女王自ら挨拶に来たんだから、大丈夫だよ。僕の苗のこともあるし、一旦戻ろっか」


 スピネルが手に持っていた薬草の束を掲げる。

 せっかくお弁当作ったけど・・・、いっか。


 こうして、私の初めてのお出かけはお昼前で終了したのであった。







最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

少し産みの苦しみが出てまいりましたが、ここを乗り越えるとまた波に乗れそうなのでマイペースで頑張りたいと思います。

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