執事なネコ 侍従なワンコ その後
二人?が私の元に来てから、私のスローライフ生活は飛躍的に向上した。
アンバーには家の中の管理(主に掃除と倉庫管理、あと私のフォロー)を、スピネルには畑の(果樹園と庭も)管理を任せているのだけれど、清掃や野菜果物の収穫補充は指示がなくてもしてくれる。
犬と猫の姿でどうやって仕事をこなしているのか不思議だったのだが、生活魔法フル活用だった。
風の魔法で椅子を退かせて掃除しているアンバーにもビックリしたが、スピネルがジャガイモを土魔法で掘り上げて収穫し、風魔法で収穫袋に次々と入れてゆく。袋は引きずって行くのかと思いきや、手慣れた感じで背中に背負い鼻歌?を歌いながら地下室に向かう後ろ姿を見た時は、『本当に犬なの?』と疑ってしまう程だった。
他にもアンバーには食品加工(調味料とか、バターとか)を任せているのだけれど、まず私がアンバーに作って見せる。するとパッシブスキルのお陰で私の作品は高品質(Level5)で作製されるのだが、それを見て学習したアンバーが同じ物を作製すると高品質で出来上がった。
おそらく神域限定のチート加工なのだろうが、テンションが上がってしまう。
アンバーには一度見せれば次からは同じものが出来るので、大量生産も可能。思わず商店を開いてしまおうかと思うほどだった(材料はタダだし)。
ただアンバーの名誉のために言うと、アンバーが学習しないで作っても、そこそこの作品はできる(知らないものを作らせてるのに出来てしまう辺り、アンバーが優秀なのだろう)。
そんな二人のお陰で、私はゆっくり過ごすことが出来るようになった。
もちろん自分でも新しい種を植えたり収穫したりもしているのだが、それ以外はエンデワースに関わることができる。
大好きでこれだけはアンバーに譲っていない料理も、思う存分作る事が出来た。
アンバー・スピネルは、食事をしなくても身体に影響はないのだが味覚はある。なので、試しに私の料理を出してみた所大絶賛されてしまった。
それほど食べないと思っていたアンバーが健啖家だったのにはビックリである。もちろんスピネルも喜んでお代わりをしてくれたので、私も作り甲斐があった。
最初は一緒のテーブルで食事をする事を頑なに拒否されたのだが、私が一人での食事は寂しすぎると懇願したので今に至る。
やっぱり誰かと食事するのはいいな。
「二人が人だったらもっとお仕事も楽にできたんだろうけど、そうなら家畜の種から生まれてないもんね。むしろその姿で出来ちゃう方が凄いか」
私の言葉に目の前で夕食のオムレツを食べていたスピネルが、鼻先をトマトケチャップで赤くしたままキョトンと見つめる。
「ご主人様は人の姿が好きなの??」
「両手とか使えたほうが、収穫とか楽じゃない?アンバーだってお掃除しやすいだろうし」
「できるよ?」
スピネルが事も無げに言って、口の中のオムレツを飲み込む。
「・・・え?」
「アンバーも出来るよね?」
「最初にご主人様から贈られた魔力が動物のものでしたので私達はこの形をとっておりますが、スピネルが言う通り人の姿をとるのは可能です」
スピネルに振られたアンバーが、上品に口元をナプキンで拭きながら(二人は動物だが手先は器用)自分の体ほどもあるオムレツを既にたいらげ、肯定する。
「ええーー?! じゃ、じゃあどうしてならなかったの? さっきから言ってるけど、その方が便利じゃない?」
「ご主人様がその方がいいって言うのなら、なるよ」
私の言葉に、スピネルが嬉しそうに尻尾を振った。
「僕達はご主人様がこの姿を好きなんだって思ってたから」
「元は家畜の種からの出自ですので、人の姿は取れます。が、基本的には動物です」
それでもよろしいのでしたら、とアンバーが付け加えた。私は身を乗り出して頷く。
「勿論だよ!! 動物の姿でも人の姿でも全然OK。神域では二人とも家族のようなものだしね」
「家族だなどど、滅相もございません!!」
慌てて否定するアンバーの尻尾がゆらゆらと揺れている。それに気づいた私とスピネルが顔を見合わせて笑った。アンバーも尻尾は素直らしい。ツンデレだね♪
デザートに今日初収穫の冷やした網目メロン(日本ではアンデスメロンというもの)を、四つに切り分けてスプーンを添えて出す。
綺麗なエメラルドグリーンの柔らかそうな果肉は果汁をたっぷりと湛え、見ているだけでその甘さを想像出来て涎が出てきた。こんなに大きく切ったメロンを食べられるだなんて、神域様々だ。
しかし今はメロンも気になるが、人の姿になった二人の容姿も気になる。
ワクワクしながら見つめていると、居心地悪そうに苦笑いしながら二人の姿がポンっと変化した。
スピネルは黒髪だった。
少し長めの癖のある黒髪を肩過ぎまで伸ばしている。ウルフカットっていうのかな?シャギーが効いて雑に見えるけれど、それがよく似合ってる。
感情がよく現れる翡翠色の眼が嬉しそうに見つめていた。身長はとても高くて、五歳の私の視線ではまさに見上げるような青年なのだが、そばにある食器棚と比べるとおそらく190cmぐらいだと思う。がっちりした体つきだがいわゆるマッチョでもなく、なかなかに良い仕事をしそうな男性だった。
アンバーは金に近いような茶色の髪をしていた。
短めの髪だがスピネルよりも癖が強く、頬の横で柔らかなカールを見せている。
見慣れない浅黒い肌の色が、瑠璃色の知的な眼ととても良く合っていた。身長はスピネルよりも低いけれどそれでも食器棚より少し低いくらい。175cmくらいかな? 身体はスラッとしていて現代にでもいそうな青年のスリムな体つきだった。
そして二人?はわざわざ言うまでもないが、それぞれタイプの違う美形である。
スピネルは人懐っこい感じの体育会系好青年タイプで、アンバーが人を選ぶ感じの頭脳派美青年タイプ。
私も女神様のお陰で超絶美幼女なのだがいつも鏡を見ているわけでもないので、目の前に美形が二人も登場してくれるのはなかなかに眼福だった。さらにテンションが上がる。
「凄い!!二人共かっこいい~♪」
「・・・カッコイイ? それはこの姿を褒めていただいているのでしょうか?」
「よく解んないけど、ご主人様が喜んでくれてるなら僕も嬉しい♪ 良かったね、アンバー」
複雑な表情で自分の姿を見詰めるアンバーと、見えない(人の姿になった途端に消えた)尻尾を思いっきり振っているように見える嬉しそうなスピネル。
分かりやすい二人の性格に声をあげて笑ってしまった。
姿は立派な大人なのに、中身は小学生みたいに見えるのは、私の気のせいかな?それとも、元々動物なせい?
「あ、でもその姿だと使える空き部屋が一つしかないからどうしよう・・・。私の部屋くる?ベッド広いし」
「いえ、私達は睡眠を必要としませんので、お気遣いは無用でございます。御用がなければ廊下で控えておりますし、お気になられるようでしたら元の姿に戻ります」
「僕も基本的には外にいるかな?、牛たちと一緒に寝てもいいしね」
どうしても部屋は使わないというので、渋々納得する。使用人?としてのプライドが許さないらしい。砕けた感じのスピネルにまで言われたので、仕方ない諦めよう。だけど牛と一緒に外で寝るのは止めてね・・・。
人の姿でテーブルについた二人は、早速メロンを食べ始める。スプーンをメロンに差し入れると、果汁と共にエメラルドグリーンの果肉がスっと掬われた。口の中に甘い香りとほんの少しだけ舌が痺れるような感覚とジューシーな甘さ。冷たさもいい感じで、思わず頬が緩む。
「美味しいですね♪ メランは元々甘いウリ科の品種だけど、こんなにジューシーで甘いなんて♪ 」
満面の笑みで食べるスピネルと、無表情のまま既に完食しているアンバー。
無言だけれど、気に入った様子だねアンバー。そんなに固い皮のギリギリまで食べなくても・・・。
楽しい夕食を終え、私は二階の部屋に戻る。
二人はそれぞれ仕事の続きをするとの事だった。休むのならリビングを使っていいと言い聞かせたけれど、果たして使うかどうか。
二人も人外なんだね・・・。
部屋着に着替えてから、いつものようにテーブルに座る。そしてインベントリーの中からタブレットを取り出してパソコン型にして立ち上げた。頭の中?でも使うことはできるのだけれど、なんとなく手で打ち込んだ方が落ち着くのだ。
女神様に今日の報告をする。家畜の種の事、アンバーとスピネルの事、今日作った料理の事。エンデワースは徐々に街を広げつつあった。もう少ししたらちょっとした都市になりそうなので、一度降りてみたいなと思う。その前に薬草を探して栽培し、ポーションを作るべきか・・・。
ピロロン♪ という音と共にメールが送信される。タブレットをしまうと、立ち上がって窓際に寄りガラス越しに空を見上げた。今日もキラキラと星が瞬いている。
女神様、今日も一日ありがとうございました。そして二人を遣わして下さって本当にありがとうございます。女神様の期待に添えるよう、明日も頑張りますね。
手を組んで目を閉じると、習慣のように祈る。メールもしてるけれど、こうした想いも届いてるといいな。いつか直接お話できると良いのだけれど。
目を開けてベッドに向かう。フカフカに整えられたベッドに入ると、あっという間に睡魔に襲われていた。
おやすみなさい、アンバー、スピネル。明日も、よろしく、ね・・・。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
二人?は雄ですが、逆ハーレムにはなりません(念のため)。




