5日目
5日目、初めてカメラに触った日
『…………ん? 零華、何してるの? ……あ、カメラ、使ってるのか。じゃあ、5日目。今日は零華はカメラを使ってます。うちの子、優秀』(カメラが若干低い位置で揺れる)
『……カメラ使っただけで優秀かよ。クソ甘親父』(20代前半ほどの男性がため息をついている)
『でも、君もそう言われて嬉しかったでしょ、零華』(男性が20代前半ほどの男性の方を見る)
『どっちに対しても零華呼ぶな。……オレは零でいいわ』
『はいはい。その年になっても元気だねぇ。あ、ちなみに零華は今、13〜15歳くらいに成長したかな。もう教えられること、ないや』
『まだまだガキだろ、13歳とかって』
『2085年のこの国だと13ってまだ子ども扱いですが? ボクも子ども扱いするが? 零も零華も』
『オレもかよ!!』
『そうだよ。だって零も零華なんだから』
『…………クソ親父が。あ? 何だよ、ガキ。……仕方ねぇな』(カメラが20代前半ほどの男性の方に近づいていく。20代前半ほどの男性はカメラに近づく)
『……元気でいろよ、零華』
動画はそこで止まった。
最後、カメラに男が近づいてくる姿、その言葉。オレはどこかで聞いたことがある気がした。
それが少年に対しての言葉なのか、オレに対しての言葉なのか、分からない。でも、オレはその顔と言葉に覚えがあった。
苦しそうな、顔。優しい声。
「…………零、くん」
オレが花宮一に育てられとき。3年前の2085年のあのとき、聞いた声、言葉。
オレが研究所にいた最後の7日間、一緒にいてくれた『花宮零華』、零くんの声だった。
零くん。その名前は忘れられない名前。




