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不思議なクリスマスカード  作者: 地野千塩


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許しなさい

「ごめん、可奈。ちょっと魔がさしただけだって」


 友達のリサ、いつもこう。鈍感で無神経な発言が多い。さっきも「可奈、その成績でやばくない? 頭悪くない?」とストレートに言われた。


 せっかくカフェでお茶を飲んでいたが、空気は最悪。一応リサは謝ってはいた。悪いと自覚はありそうだったが、微妙。モヤっとする。


「そう……」


 結局、可奈はこれ以上何も言わなかったが、家に帰るとモヤモヤする。家で飼っている猫のクリコに話しかけてみるが。黒猫で凛々しい猫だ。シュッとした顔だち。頭も良さそう。


「クリコ、私って頭悪いんかな?」

「みゃ?」


 当然、答えなどなくため息が出てくる。可奈は自分でもなめられやすい自覚があった。リサ以外にもナチュラルに悪口を言われているし、そのことを考えると余計にスッキリしない。ずっと悪いことを考えてしまう。


 動画サイトではスカッと系のコンテンツも人気だ。いじめっ子やボスキャラのママ友がスカッと因果応報にあっているが、現実はそんなことはない。リサも毎日幸せそう。


「なんなの、もう……」


 一人で家のリビングにいるのもしんどくなった時だ。猫のクリコが何か咥えていた。


「クリコ、ダメだよ。変なものを食べたら」


 急いでクリコの口から変なものを引き離す。ペットの誤飲はとても多いと獣医さんから注意されていた。


「みゃ?」


 しかし、クリコはどこかへ行ってしまった。カ可奈の手には、クリコが咥えていたものだけが残る。


「何これ?」


 それはクリスマスカードだった。ツリーやリースがデザインされている。今の時期にぴったりなものだが、送り主の名前がない。しかも妙なメッセージつき。


 マタイ 6章14–15節より

 もし人の過ちを許すなら、あなたがたの天の父もあなたがたを許してくださる。

 しかし人を許さないなら、あなたがたの父もあなたがたの過ちをお許しにはならない。


「って何?」


 わからない。思わず天井や壁を見つめる。「誰か」に見られているような気がしたから。


 この言葉の意味はわからないが、許しについて語っていることはわかる。まるで、リサを許せずモヤモヤしている自分を見られているよう。


 ネットで調べると聖書の言葉らしいが、すぐに否定もできない。何かこのクリスマスカードにが気になって仕方ない。


「クリコ、これ、どう思う? 私、リサを許した方がいいの?」

「ミャー」


 心なしかクリコの鳴き声が寂しく響いた時だった。


 急に意識が途切れ、夢の世界にいた。夢の中ではなぜか元カレとデート中だった。マッチングアプリで知り合った年上の彼氏だったが、デート中、就活が上手くいかないことを相談されていた。


「でもさ、そのぐらいのレベルの中小企業に落ちるのって、努力不足じゃない?」


 つい口が滑っていた。失言だ。でも、元カレは笑顔でスルーしているだけ。


 急に心臓が波打ち、冷や汗も出てきた。夢の中だというのに、良心が刺激されてしまう。


「私、まさかリサと同じようなこと、してた?」


 そう、つぶやいた時、夢が終わった。いつもの家のリビングだ。隣にはクリコもいる。


「ミャー!」


 まるで「おかえり」とでも言っているような元気な声だ。


 夢の中みたいに心臓は波打っていない。冷や汗もとまっていたが、もう一度、クリスマスカードを見つめた。


「そっか……」


 自分も似たようなことをしていたんだ。決して自分も正しくも完璧でもなかったみたい。リサを許せない理由、消えてしまう。


 そういえば今はリサも私も彼氏がいない。今年のクリスマス、二人で女子会でも開こうか。さっそくリサに連絡をとり、クリスマスの計画を話していた。


「ミャー!」


 またクリコが鳴く。さっきよりもっと元気がいい声だった。

 

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