新しい朝①
このごろの朝は肌寒い。
はずなのだが今日は暖かい気がする。
昨日はすごく疲れたのか身体が少し重く感じるし布団が気持ちよくて起きたくない。
「ん…眩し…」
寝室のカーテンを閉めた記憶がない…
そういえば_____
いつ眠ったっけ?
「ヴッッ…!」
身体に感じる温もりの正体を確認して反射的に
離れようとして頭をヘッドボードにぶつける。
「き、君…なんで」
「ん…」
「ていうか…なんかすごく生臭い…」
彼…あるいは彼女が眠そうに目を擦っている
手に乾いた血の痕 乾いた痕を見て確信する。
「ゆ、夢じゃない…!嘘だ…」
バッと自分の腹部を確認する。
ナイフで刺された上に膝で抉られてかなり激痛だった
のを覚えている…が
血が乾いた痕はあれど傷口はなく滑らかな肌が
空気に晒され寒いだけだった。
「やっぱり夢かも」
恐らくリビングでは地獄絵図ができあがっているであろうことへの現実逃避。
ノエルは渋々起き上がり昨夜悪魔と名乗った少女(?)を連れてリビングへ行く。
死体は自警団組織に引渡し、事情聴取を終えると最近魔女を狙った強盗が多発しているらしいことを聞いた。魔女はこの国では収入が最も多くそういった輩の標的になると。
「母さんが居ない間を狙ったのかも…」
シャワールームへ移動し、べっとり血がついていた服を脱いで血の匂いが落ちない肌を石鹸で擦りながら考える。
四方魔女ともなれば立派な豪邸に住んでいると思われがちだが西の魔女アリシアは富こそあれど、見習い時代から住んでいたこの森の中のこじんまりとした家に住んでいる。
見るからに高価なものは無さそうなのに強盗…希少価値のある素材や宝石を狙って来たのだろうか…
暖かいお湯を浴びると少し冷静になってきてキラリと光る薬指の指輪に気づく。
「俺…悪魔と契約しちゃったんだっけ」
そういえば忘れたの?とか言ってたような気がする。
全く覚えて居ない…幼少期は森で妖精と話したり薬草を取ったり魔女になることを夢見てた。
「人違いかもしれないけど助けてくれたしいい悪魔なのかな…」
刺された痕はすっかり消えているのは彼女の治癒魔法なのだろうか…不思議なことばかりだ。
気を失う前に契約のキスをしたことを思い出して
顔が熱くなる。
「いや…あれはノーカンで…」
「ノエル」
「ウェッッ!?」
何となく見られたくなくて前を隠す。一応、一応女の子だったらこっちが気まづいから。
自分も入るとばかりに前をはだけさせてパンツに手をかけたところでノエルが制止させる。
はだけた上半身から控えめな膨らみが見えた気がした…
「すぐ終わるから待ってて!絶対入って来ないで!」
「………僕は一緒でも構わないけど」
「俺が構うの…!ってなんでこっち来るんだ」
彼女はシャワーコックを捻りお湯を頭からかぶる。
白く美しい髪が肌にはりついていけないものを見ているような気がしてノエルは視線を逸らした。
するとシャワーを浴びたまま彼女はノエルに後ろから抱きつく。ベッドにいる時もこんな感じで抱きついていた気がする。
「君…何して…」
「ノエル…本当に覚えてないんだ」
「君のことは…知らない」
抱きしめる力が少しだけ強くなった。
彼女はシャツを着ているけど一部はだけたところは肌が密着している。
「ックシ」
ノエルはシャワーを止めてタオルで彼女をグルグル巻にした後自分もタオルを巻いて一緒に温風が出る魔道具で乾かした。
「君は…え…と名前は?」
「真名は軽率に口に出していいものじゃない」
「じゃあなんて呼べば」
「ヴェルでいい」
(ヴェルフェゴールだからヴェルか…)
「ヴェル…少し強引ではあったけど君が助けてくれてお礼も言えてなかったね…本当にありがとう」
「いいよ」
冷水で服の血汚れを落としながら何かを忘れているような気がしていた。
「あっ…!魔女見習いの試験!!」




