新しい朝②
「魔女の見習い試験…今日だ…!」
寝室の机に投げおかれたバッグの中を探す。
試験番号を確認し、午後からだったため急いで準備する。
「家から試験会場まで遠いの?」
「ほうきに乗っても30分はかかる…」
だから魔道具を使う。魔道具の取り扱いには免許が必要だけど…家の敷地内は法の範囲外だ。
ノエルはガラスの靴を履き、踵を鳴らして魔道具を発動する。
「僕も行く」
ヴェルはノエルの腕にしがみつき、そのまま一緒に魔道具による転移魔法で試験会場である街に飛んだ。
念の為人気の少ない路地裏に着地した。
「あ、悪魔がこんな街中に来て大丈夫なの?」
「着替えたしそんなに目立たないだろ」
悪魔というよりは陶器のような滑らかな肌に
絹のような白い髪は天使を連想させる。
なんとなくだが多分何もしなければ誰も悪魔
とは気づかないのではないか。
「時間もないし行こう…!絶対に変なことしないでよ…!大人しくしててね!」
ヴェルはこくこくと頷きノエルが来ているローブの端を掴んでついてくる。
ヴェルは契約こそ強引だったが他の行動に関しては基本的には大人しい。
後でヴェルフェゴールという悪魔について調べよう。
魔女の国エメラルドの中央に位置するセントラルシティ、闘技場にて試験は行われる。
「実技試験受付はこちらです」
係員に従い必要事項を記入していく。
「まあ、あなた若いのに婚約しているの?頑張ってね」
「えっ」
係員の女性はキラリと光る左手の薬指のソレを見ながらにこやかに話しかけてきた。
「あっいやこれは…ッヌヌ取れない」
(指輪ってこんなにピッタリハマって抜けないものなのか!? )
「いっった」
不機嫌な顔をしながらヴェルが腕をつねっている。
「いだだだ!わかった!外さないから!」
フンッとそっぽを向いてしまった。
婚約者の目の前で指輪を取ろうとする行為が気に食わなかったらしい。
(まだ15歳なのに婚約指輪をしているなんて恥ずかしいから仕方ないじゃないか…)
一連の動きを見ていた係員の女性に怪しまれたので適当に笑って誤魔化す。
(今は試験に集中しないと)
「お連れの方は試験会場には入れないので見学される場合は観覧席へお願いいたします」
「わかりました」
「ヴェルは観覧席で待ってて」
「やだ、一緒にいく」
「え…と、君のおかげでここまでこれたからすごく感謝してるけどこれは大事な試験なんだ」
じっ…とヴェルはノエルの顔を見つめる。
ちょっと拗ねてるかも。
「帰ったら何でも言うこと聞くから…ね?」
「本当に?」
「ああ本当さ」
あ…機嫌が直りそう。
「じゃあノエルからキスして」
「なッッッ!?」
女性の係員がきゃーっと顔を赤くしながらこちらを見ている。他の受験者もざわつき始めた。
「ノエル、返事は?」
「わかった…わかったから早く行こう」
頬にキスくらいならいいか…
というかファーストキスも血の味じゃなければ良かったんだけど
「いや、あれはノーカンだ…」
「何?」
「なんでもない…!行こう」
係員の女性がニコリと手を振っていた。
他人事だと思って…
試験会場に入る扉の前では試験官である1級魔女から説明がある。
今回の実技試験は魔法、もしくは魔道具を用いた戦闘になる。
野生の魔獣と闘い、戦闘不能にすれば合格だ。
「確認したら同意書にサインと誓いを」
試験は現役の魔女たちが見張っているとはいえ完全に安全とはいえない為死亡事故などもある。
そのための同意書が用意されている。
「エメラルドの主に忠誠を誓います」
「よろしい、では魔女になる覚悟ができたらドアを開きなさい」
「じゃあヴェル、後でね」
「ああ…待ってノエル」
くいっとヴェルがノエルの襟元を掴み屈ませる。
数秒触れるだけのキスをして離れた。
「ん…?ええ?」
「じゃあね」
何事もなかったようにヴェルは観覧席へ向かう。
これは流石にノーカンにはできないだろう。
「し、集中しろ…!」
両頬を叩いてドアを開ける。
顔は熱いしなんだか胸が暖かい気がした。




