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新しい夜③
「え…?」
「選んで。今、ここで死ぬか」
「僕と婚約するか」
児童絵本に登場するお姫様に渡される指輪のシーン。
ロマンチックなシチュエーションとは行かずこれは…脅迫だ。
「婚約って…ゥアッ…」
話してる間もタイムリミットは迫っているらしい。
容赦なく膝が傷口にめり込んでいく。
明日は大事な試験だ。死ぬわけにはいかない。
「名前…君は誰なの…教えて」
赤い瞳を見つめる。揺らぎない真っ直ぐな視線。
「知らない人と婚約するわけにもいかないでしょ…だから」
口に添えられる人差し指に声は遮られる。
自分が話すから黙れとでも言いたそうだ。
小柄なのに傲慢な態度は見た目とのギャップがある。
「我が真名は番にのみ、君は婚約を誓えるか?」
死ぬか婚約するかの二択なら答えは簡単だ。
「……誓うよ」
「悪魔ヴェルフェゴール、君と共にあることを誓う」
「ちょっ…」
今度こそ完全に声が遮られる。
あ、悪魔だって!?今悪魔って言ったか??
死に際だったらせめて天使とかじゃないのか?
長いまつ毛に綺麗な瞳は閉じられ乱暴に
傷口を抉る様とは裏腹に存外優しいキス。
初めてのキスは麻酔のように心地よく曖昧な意識の中で満足気な子供が俺の左手の薬指に指輪を通していた。
続く




