新しい夜②
サクリ
強盗だ、とか。
どうしてこんな人気のない森の家に、とか。
考える時間も与えられないままそのダガーナイフは自分の胸に刺さっていた。
「まだ目覚めるにはちと早いな坊主。眠ってな」
「そいつに構うな、高価そうなもん探してとっとと行くぞ」
じわり、胸が熱くなっていく。
生ぬるい感覚と鉄の匂い。
「あ…かは…っ」
混乱と激痛で耐えられなくなり壁に衝突しながら床に倒れた。
なんでこんな時に。
なんで今日なんだ…!
明日は大事な…試験なのに…
大事に握っていたチケットは血溜りに侵食されていた。
カツンッ
玄関ドアの方から足音が聞こえる。
軽い靴の音、女性の物か。
今度こそ母さんが帰って来たのかも。
掠れた視界に入ってきたのは白い髪の少女。
いや、中性的な格好をしていて少年か少女の見分けがつかない。
それでも今は…
「……げて」
来ちゃダメだ…殺されてしまう!
チラリとこちらを一瞬見たあとその子は強盗に向かって歩き出す。
「僕のものを…よくも」
幼いが芯の強い声。
それから銃声と男たちの悲鳴、骨の折れるような音と何かがちぎれたような音。それを最後にノエルの意識は途絶えた。
「ねぇ…起きて」
ペチベチと頬を叩かれている。
「ん…え?」
「あっ起きた」
白い髪に赤い瞳、陶器のような滑らかで白い肌。
まるでそれは…
「天使…?」
「はあ?」
ベシンッ
より一層強く頬を叩かれる。
「い、痛い痛いやめて!俺さっきナイフで刺された…ばっか…???」
胸のあたりを見ると確かに血まみれではあるが刺さっていたナイフが無い。
来ていたシャツを捲ると傷跡はあるものの出血は収まっている。
「君が助けてくれたの…?」
「そうだけど」
「誰だか知らないけどありがとう…!まだ子供なのに…_」
続けようとした言葉は出なかった。
この子の脚が傷口に振り下ろされる。
「誰だか知らない???まさか、忘れたわけ?」
「いっっっ、痛いっ!何!?」
忘れた?知らない。この子は誰?
「君が子供の頃、森で約束したのに」
「も、森?」
確かに子供の頃から家周辺の森に入り浸っていたけどたまに妖精と話すことくらいしかなかった。
まあだから友達もいないんだけど。
「人間は記憶力が悪いの?」
「ァガッ…ちょ…!傷口開いてる!」
子供は構わず膝を傷口に圧迫させる。
「15歳になったら僕と婚約するって言ってたのに」
「は……!?!?!婚約!?!?」
何もかも記憶にない。とにかく胸の傷口に膝をねじ込むのはやめて欲しい凄く痛いし血が出てる。
「選んで………」




