新しい夜①
鏡を3回金色のスプーンでノックする。
鏡にスーッと現れる人影。
「会いたかったわよノエル!最近呼んでくれないから寂しかったわよ!」
黒い大きな帽子を被る女性は長い金髪を揺らしながら大袈裟にポーズをとって話す。
「ごめんね母さん。勉強と特訓で忙しかったんだ」
両手を合わせてそれっぽく謝る。母さんはちょっと大袈裟なリアクションをした方が機嫌が取りやすい。
「魔女見習いの試験が近いのね…!あっそれと森の妖精と遊ぶのはいいけど家に入れちゃダメよ?戸棚に隠してたスナックを全部盗られちゃうんだから」
「はいはい。試験は明日なんだ、受かるかわかんないけど終わったらまた連絡するね」
「ああっちょっと!」
スプーンで鏡を1回ノックすると母の影が消える。
盛大にため息をつきながら家から出て森の空気をいっぱいに吸い込む。
5人の魔女が支配する国、エメラルド。
魔女王と四方を治める優秀な魔女のお陰で安寧と秩序が保たれている。
母親は東の森を治める四大魔女の1人だ。
彼女は優れた魔力量と治癒魔法により国に大きく貢献した。最年少で四大魔女になったと言われている程優秀なのだ。
そのため忙しく飛び回っていて家に帰ってくることは月に1回くらいだ。
「せめて少しだけでも魔法が使えたらな…」
近くに置いていた箒に向かって手を向ける。
「来い…箒よ!」
…………………
…………………
そう、目下の問題はその四大魔女の息子である俺が全く魔法が使えないこと。
魔力量は微力ながらあるようだけどほぼ一般人と変わりない。
そして明日は魔女見習いになる為の試験がある。
受かる気はしないが何もしないで諦める訳にはいかない。
街に買い物へ行く時に空を飛んでいく魔女たちをいつも羨ましいと思っていた。漆黒のローブに大きな帽子、この国を守る魔女の象徴。
そんな誰もが憧れる英雄のような存在、それが魔女。
忘れもしない、5歳の頃初めて母親の箒に一緒に乗って見た景色を。自分の力で空を飛んで国を景色を見る、そんなことを夢見ずにはいられなかった。
魔法が使えなくても魔道具は使える。試験には魔道具の禁止はされていない。諦める前にできることはやる、筆記試験はギリギリだったがなんとか明日の実技試験を受けられるのだ。試験参加資格チケットを胸に抱いて眠る。
ギギ…ッ
緊張で眠りが浅かったのかドアの開く音で目が覚めてしまった。だけど寝室のドアは空いていない。
「母さん…?」
足音が2つ。
「おっとすまねぇ…起きちまったか?」
武装した男が2人。ダガーナイフを片手にリビングに立っていた。
「え…」
誤字脱字はそっと目を瞑ってください…




