閑話~王都のスラム~
常に薄暗く、空気は淀み、行き交う人もまばら、すれ違う者はいつも地面を見ており他人を認識しない。
自分が誰なのか?
何時からここに居るのか?
そもそも俺はなんだ?
いや・・・俺はどこかで生まれ、ここに捨てられたんだ・・それだけは知っている・・・近所のジジイがその話をしているところを見た覚えがある・・・
俺には名はない・・ただの捨て子だ。
セイクリット・ディス・カイア王国。
その王都には、中心部を囲む様に高い城壁が構えられていた。
城壁の内と外は完全に別世界だと聞く。
俺が根城にしている廃れた教会跡地は外のさらに外・・・難民、流民、種族を問わず入れ交じる一言で言うとスラムだ・・・城壁の中へ行けさえすれば一生安泰なのだろうが・・・如何せん中に入る手段がない。
俺は今、同じ身の上のガキどもを連れて、飯探しに来ている・・・
スラムとはよく言ったものだ、本当に無法地帯なのだ。
昨日挨拶した野郎が、今日の朝にはボロ雑巾に成り死んでいる・・
そしてその死体さえここの住人たちはお構いなしときている。
まぁ・・俺も似たようなもんさ・・
ガキどもが、腹をすかせ、俺にあの綺麗な目を向けて懇願するように飯をくれという・・・
流石に俺はこの中じゃ年長者だが・・飯探し中だ・・少しは我慢しろよ・・・
「しかし・・・お城の連中は美味いもんでも食ってんだろーな・・・・」
「にいちゃん!はらへったよー」
「にーちゃーん!」
・・・・分かってるさ・・・・俺も腹減ってんだ・・・配給の精度がちょっと前になくなった・・なんでも帝国と戦争するとかで、食料を全て兵士に与えるんだとさ・・・・俺等は見捨てられたんだ・・・チッ!やってらんねーや・・・・
「おい!ジャリ共・・・・今日は近場の森の入り口へ行くぞ・・・・束になりゃ少しは獲物もとれるだろうさ。」
「うん!・・お肉たべれるかなぁ〜?」
「ああ・・きっとな・・・」
俺の仲間は5人・・俺を筆頭に
背の高いが暗いヤツ・・・コイツは、ビルって名前だ。
世話焼きが得意で何時もうるさいヤツ・・・コイツは女だ、ティルナって呼ばれていたらしい。
何時も俺の後をついてくるヤツ・・・コイツは、元気いいがほっとけ無い、ヴィオ。
大人しく、何を考えてるのかわからないヤツ・・コイツは、よう判らん、ティアってやつだ。
まだ、稚すぎて、何もわからないヤツ・・コイツは一番最近入ってきたんだ、トム・・俺が付けた。
教会で、トムとティアの世話をティルナにまかせ、
森に狩りに来ている。
「なぁ、にいちゃん・・・オレ腹減ってうごけねーよ・・」
「なんだヴィオ・・・そんなんじゃ、俺みたいになれねーぞ?」
「わーってるよ!・・しっかし・・えものいねーな?」
「そうだな・・・」
「にいさん・・・彼処・・何か動いた」
「ビルは良くそういうことに気がつくな・・大したもんだ・・」
「にいちゃん!オレだってさがしてるぞ!」
「ああ・・期待してるさ・・ガンバレよw」
「ちぇっ・・にいちゃんたらいつもビルにいには頼るのに・・」
「なんだ?膨れたか?wwwww」
「ヴィオ・・たまたまだよ・・気を落とさないで」
「いいんだ!いいんだ!・・オレのノビシロはまだまだおおきいからな!・・・・・にいちゃん!彼処うごいたぜ!」
「ははw・・・張り切るのもいいが怪我はすんなよ?・・治療なんてできないんだからな?」
「へへーんwだいじょーぶー!・・・こんくらいどぉってことないさ!」
「ヴィオ!あんまり一人で先行かないで?・・ボク達全員一緒じゃないと危ないよ!」
「ビルにい!そんなこといったって、早く見つけないと、獲物が逃げちゃうじゃん!」
「そう・・だけどー・・・・」
「ヴィオ。そんなに一人でやりたいなら一掃のこと冒険者になればいい」
「冒険者かぁ・・いいね!」
「バカw一人で何かすると危ないっていうたとえだよ!・・・だから・・後ろだ!気おつけろ!」
「わあああああああああ!」
ヴィオの声と共にブッシュのなかから少し大きめのトカゲが出てきた。
「!・・これは!・・・・フォロックイーター!・・・お前ら!あれに噛まれるとしぬぞ!気おつけろ!」
「う・・うん!」
草むらから出てきた体長1.5mはあろう・・尻尾も入れれば、2mはあるトカゲがヴィオをターゲットにゆっくりとした足取りで迫ってくる中、俺は、ダガー片手にあいだへ割って入った。
「・・でけーな・・・」
「にいちゃん!にげて!」
「ヴィオ・・下がるんだ・・にいさんに任せよう!」
「う・・うん・・」
・・・っちっ!・・コイツ俺のこと眼中にねーじゃねーか!・・・ヴィオは渡さん!
手に持ったダガーを腰に溜め、走り遠のくヴィオへと顔を向けた時、「いまだ!」と喉元目掛け体ごと突進してやった。
・・・殺ったか?・・・
「にいさん!危ない!」
・・ん?・・・・
俺が突撃を仕掛けることを見越していたのだろうか?
突撃で、身体のバランスが取れない!・・・くるっ!
フォロックイーターの長い尻尾が横薙ぎに俺を襲う・・・
「がはぁっ!」
「にいちゃん!」
「にいさん!」
凄い衝撃だった・・尻尾が特大のムチのように飛んできたのだ。
俺の身体は、跳ね飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「いててててっ・・。 大丈夫だ!・・ソレより気おつけろ!・・尻尾も武器だぞ!間合いにはいるな!」
「うん!」
「はい!」
クッソ!やってくれたな!・・・反撃だ!
俺は距離を取り、
今度は全力で跳ね、トカゲの頭へ飛びつく。
一抱えもある首にしがみつくと、トカゲが大暴れを始めた。
・・・・くっ!・・振り落とされてたまるか!・・・
「にいちゃん!」
「にいさん!」
「ビルにい!・・・・」
「う・・うん!」
!・・だめだ!・・近づいちゃ!
「来るな!・・・・はなれてろ!」
「そんなこといったって!にいちゃん!」
「にいさん!・・逃げよう!」
「ビル!ヴィオをまもってくれ!・・・コイツはおれがなんとかする!」
・・・くっそ!・・・・
「おおおおおおおお!りゃああああああ!」
手に持ったダガーをトカゲの頭と首の付け根の辺に叩き込んだ!
一瞬、動きが止まった・・が次の瞬間物凄い力で俺は跳ね飛ばされ、近くの木に叩きつけられた。
背中をもろにぶつけ・・息ができない・・・
「げほっ!・・・くっそ!・・・・・・」
「にいちゃん!だいじょうぶか!」
「にいさん!・・早くにげて!」
俺が起き上がり、トカゲを見ると、トカゲは俺をにらみ・・突進してくる!
・・ヤバイ!・・・・・・やられる!・・・
俺が死を覚悟した時、何処からとも無く、風を切る音がした・・すると、トカゲは力を失ったのか・・・勢いのまま俺の足元まで滑り地に伏す・・・
「はぁはぁはぁ・・・・・だれだっ!?」
「おーう・・坊主ども大丈夫か?」
・・頭の禿げ上がったいい年のジジイが・・・・・いや・・ありゃ冒険者だ・・なんでこんなとこに?
「おい!大丈夫かときいとるんだ!」
「ああ・・大丈夫だ・・くっ!げほっ!・・・」
「にいちゃん!」
「にいさん!」
「なんだ!大丈夫じゃねーじゃねーか・・ったく・・フォロックイーターはまだお前らには早い・・なんでこんなとこにガキがくるんだ?」
「へっ・・・・食うためにゃ・・命はらなきゃな・・・・生きていけねーんだよ・・」
「ほう・・そうか・・食うためか・・・・なら少し俺に付き合わねーか?飯も食わせてやるし、治療もしてやる・・どうだ?」
「・・・・俺等はここに居る三人だけじゃねーんだ・・教会に・・まだ仲間が居る・・」
「ならそいつらも連れてこい・・好きなだけ食わしてやる」
「・・・おっさん・・なにが狙いだ?」
「おいおい!人の親切は素直に受け取るものだぞ?」
「にいちゃん!・・そんなことより・・早く治療しなきゃ!」
「そうだよ!にいさん!・・・背中がひどいことに成ってる!」
「くっ!・・・」
「ほら見ろ・・直ぐに治療してやる・・だから今日は俺に付き合え・・な?悪いようにはしねーから」
・・俺は、今にも泣き出しそうなジャリ共をみて、諦めた・・しかたねぇ・・このおっさんについてくか・・
「わかった・・ついて行く。」
「そうか!・・じゃぁ・・背中こっちに向けろ・・応急処置をしたら直ぐに街で治療してやる。」
「街!?だと・・・・」
「ああ、そうだ!街だよ」
「・・・・・・・しかたねぇ・・・ビル・・他の仲間も連れてきてくれ・・・」
「にいさん・・・わかったよ!」
そういってビルが駆け出す・・・
「ヴィオ・・少し肩かしてくれ・・・」
「うん!」
ヴィオに肩をかり、おっさんに背中を見てもらった。
「ありゃー・・こりゃひどい・・お前一人で今立てないわけだな・・おし・・これを飲んどけ」
「・・なんだこれ?・・・」
「ポーションだ・・安物だけどなw」
「へー・・これがポーションか・・・・・・・ングっ!・・まじぃ・・・・何だこの味・・」
「はははwまずいか!そうかそうかw」
「なに笑ってんだよ・・」
「いやー・・俺も始めはそんな顔をしたのかなとなw・・懐かしいわ・・」
「へっ・・そうかい・・・・・・・・ん?・・・・なんか痛みが和らいだぞ?」
「にいちゃん!」
「ヨシヨシ・・効いてきたな・・これなら街までは持つだろう。」
「・・ありがとな・・おっさん・・・」
「どーってことねーよw」
「にいさーん!・・連れてきたよ―!」
「こっちだー!・・・」
「ほう・・結構居るな・・」
「なんだ?飯が足りなくなるか?」
「いやいや・・ここいらで有名なガキってなお前のことだったのか・・そうか・・・」
「なんだその有名ってな?」
「ん?慈善家みたいな事をしているガキの集団がいるってな・・もっぱら噂さ・・」
「へー・・そーだったのか・・」
「にいさん!もう歩けるの?」
「おにいちゃん!・・・怪我大丈夫?」
「にーにー・・」
「だぅー」
「おし!・・揃ったか?」
「ああ・・・」
「これから街の俺の家に連れてく・・治療もそこでやる・・飯もなwたらふく食っていいぞ!」
「ほんと!?お兄ちゃん」
「にーにー?」
「ばぁ・・」
「ああ・・このおっさんに助けられてな・・・応急処置もしてもらった・・・悪いやつではなさそうだ・・」
「そう・・なら行く!」
「オレもいく!」
「ボ・・ボクも・・」
「うんうん」
「ゔぁー?」
「話しは決まったか?・・・じゃぁ・・行くぞ?・・そうだ・・お前らの名前聞いてなかったな」
「ボクはビル・・・」
「オレはヴィオ」
「あたしはティルナです」
「ティア・・・・この子はトム」
「だぁー!」
「そうか・・ビルにヴィオ、ティルナにティアにトムか・・・お前は?」
「・・・俺には名がないんだ・・・適当に付けてくれて構わない」
「ほう・・じゃぁ・・ニルス・・ニルスでどうだ?」
「ニスル・・か・・いいよソレで。」
「じゃぁニルス・・街に入るぞ」
「ああ・・」




