〜手段は分かってるんです・・手段は・・w〜
俺と王次郎は、蜂妖精に文字を教えてもらった。
時の記憶から戻った際、蜂妖精に相談した結果、
そもそも接続できないなら文字を読んで、調べ物ができないと話しにならないという・・
初歩的なことに気付かされたからだ。
黄土様には悪いが・・・急がば回れ・・とも言うしな。
今日明日にお亡くなりになることもあるまい。
先に文字を勉強して、すぐに調べ物が出来るようにするほうが先だったわけだ。
数時間文字の勉強をした・・
と言っても床に砂をしいてそこに字を書いては消すの繰り返し。
内容的には、基本文字から接続詞なんかの使い方を踏まえての講義だった。
蜂の文字は、随分簡単な作りで内容的にはローマ字と似たようなものだ。
5個の母音が有り、15個の子音をつけると、50音に該当する物になる。
覚えることは楽だったから良いが、
開始早々王次郎が脱落して部屋の中を徘徊し始めたので、
途中、王次郎をあやす羽目に成った。
この分だと数日集中して勉強すれば、一通り読めるんじゃないかな?
ローマ字から早見表みたいなのを作れば、すぐに読み書きまでできるだろう・・
取り敢えず、毎日少しづつ勉強すれば、身につく。
コレで文字のめどが立った。
さて・・ちょっと気になる事が有るんで、
一度、黄土様の所に顔だそうかな・・
女王から話が言ってればいいが・・・・
あとは・・・黄土様にも側仕え居ないとな・・
体調やそこいらの確認とか、緊急に対応する時にも必要だろう・・・・・
出来るかどうか判らんが、自力でなんか一度作ってみようか?
成長魔法かなんか使えば、結構早く作れちゃいそうだしな・・・
まぁ、色々試し始めないとマズイんじゃないかと思ってる。
・・蜂同士の魔法を使った交配実験とか産卵するのか?など
確認も必要そうだしな・・・
・・・ってかさ、俺、何時からマッドサイエンティストみたいな事してるんだ?
まぁ、いいや。
取り敢えず、黄土様の所に顔出しに行こう・・・蜂妖精つれてかなきゃ。
俺は、蜂妖精に言って着いてきてもらう事にした。
・・・また・・・主様に王次郎を預けんのか・・・不安しか無い・・・
黄土様の部屋に着いた。
・・今日も臥せっていたりするのだろうか?
蜂妖精に先に中へ入り様子を見てきてもらうことにした。
蜂妖精に呼ばれるまで、ブラブラしている。
・・・呼ばれた・・・行くか。
俺が中へ入ると、相変わらず貧相な部屋だった・・・・が、
何処から持ってきたのか、椅子にちょこんと座る黄土様が蜂妖精の隣りにいた。
「先日お伺いしましたニックです。 黄土様、御加減はいかがでしょうか?」
俺の問いかけに、蜂妖精が通訳してくれる。
『本日はとても良い加減でございます。ニック様』
「それは、よかった。」
『ニック様、本日はどのようなご用件でしょうか?』
「本日はですね。 黄土様の承諾というか、まだ可能性程度のことなので、期待させるのもと、思うのですが、いざと成った時の為に前もってお話しておきたいことが有りましてね。 そのお伺いです。」
・・・黄土様が首をかしげて、「何の話だろう?」と言っているように見える。
・・こりゃ・・女王からまだ、話が来てないな・・・
「そうですね・・いくつか有るのですが・・。 まず、黄土様の側仕えなのですが、私に用意させてもらいたいのです。」
『?ニック様が・・ですか?』
「ええ」
『・・・ニック様は、人間の雄と聞いておりますが?産卵をなさるのでしょうか?』
「あ・・、産卵はできないのですが、少々特殊な事情がありましてね。」
「恐らくご用意出来ると思うのです。」
『はぁ・・。 でしたらご用意頂けると助かりますが・・・』
「では、ご用意いたしますね。」
『有難う御座います。』
黄土様はお礼を述べてくれた。
「それとですね。 側仕えをご用意する際に必要な卵の欠片なのですが、もう無いと思いますので失礼とは存じますが、そちらの羽の一部をいただきとうございます。・・・・・よろしいでしょうか?」
『・・・・・・・・・痛くしないで、頂けるのでしたら・・・』
・・・これで、側仕えの材料の一個がそろうな・・・
「それとですね・・・。重要なご質問になるのですが・・」
『何でしょうか?』
「黄土様は、その・・・覚悟をお決めですので、今更どうこうと蒸し返すのは心苦しいのですが、もし私に黄土様の不全をどうにか治せる手立てが有った場合・・・・・どう思われますでしょうか?」
黄土様が、しばらく無言でコチラをジッと見つめている・・・・・ような気がする。
・・複眼の視線は見分けがつきづらいなぁ。
黄土様は、一度ため息をつくと
『そうですね。 もし、私のこの不全が治るようでしたら・・・姫としての義務を果たせるということになりますね。』
『・・・ですが、其のようなことは、出来ないと思われますが・・?』
「・・そうですね。糠喜びはさせたくないので、女王陛下もまだお話に成っていないのでしょう。」
「ですが、今現在、私が黄土様の不全に対しての対処を任されているようなものでして・・」
「先日、女王陛下より黄土様のお体を治す術についての手掛かりをご教授いただいた次第でございます。」
『・・・それでは・・この不全は治る可能性が有るのでしょうか?』
「結果から申し上げますと可能かと。 遥か昔に似たような状況の王子種が完治したそうです。」
「ですが其の方法が失伝しているため現在探しているところなのでございますが・・・」
「私の調べたところでは、”時の記憶”の部屋の機能を利用出来るように成れば、恐らく・・可能かと思われます。」
・・・・・黄土様が凄い衝撃を受けている・・・・・治らないと言われてきたのだろう・・・
・・・ここに来て、治ると言われたら・・覚悟も鈍ってしまうのかもしれない・・・でも・・
「大変、お心を乱してしまい申し訳ございません。」
「ですが、私が調べた其の方法は・・・・」
黄土様が一度うつむき、何やら考えているようだったが、
しばらくすると力に溢れた眼差しでコチラを見る。
・・・ような気がする・・・複眼ってマジでわからん。
『ニック様。其の方法とやらですが、何か言いづらい事が含まれているようですね・・?』
「・・・・・」
「ええ。 此の方法は恐らく、側仕えを産み出す方法を利用している物と思われます。」
「つまり、健康な素体と黄土様を融合させて、健康な体を再構築させるという荒業になります。」
・・・・・言ってる俺でさえこんな荒業ムリだとおもうけど・・・・
『・・・融合といいますと・・・私はどうなるのでしょうか?』
「・・・・・・・」
・・・いいずらいなぁ・・・これ・・融合する際に黄土様を一度溶かさないと行けないんだよなぁ・・
・・つまり、一度死んでしまうわけだが・・・どのように説明するか?
「言いづらい事で、躊躇してしまったのですが正直に申し上げますと」
「融合の際に一度黄土様を溶かさなければなりません。・・・・つまり、一度お亡くなりになります。」
・・・・・黄土様・・・凄い震えてるんだけど・・・・・怒ったのかなぁ?
・・・俺が、黄土様の立場なら速攻でドロップキックするけどな・・・
『・・一度、死ぬということですか?・・・・・ですが・・・』
『死んでしまうと、融合された私は私では無くなるのではありませんか?』
・・・そうだよなぁ・・・普通そうおもうよなぁ・・・
・・俺も最初はそう思った・・・が・・・・あの装置・・・アレは、恐らく知識だけではなく記憶や自我などの情報、つまりパーソナル(個人)も刷り込みないし上書きや書き換えまで出来るはずだ・・・
なぜなら、側仕えが幼虫や蛹で培っていたパーソナルの上に側仕えとしての知識や他にも色々と上書き出来ているからだ・・・・
「・・・黄土様。 黄土様は”時の記憶”と言う部屋はご存知ですよね?」
『ええ』
「姫として、羽化した際に接続を行いましたよね?」
『接続によって、知識の刷り込みを行いましたが?』
「では・・・・・・・産まれたばかりの時の記憶は・・お持ちですか?」
『・・・・・・・小さかったので・・・記憶は・・』
「幼生体の時の思い出は?・・・」
『とくに・・・・・・無いですね・・・』
「では、蛹の時の記憶はいかがですか?」
『・・・・・・・・あまり、はっきりはしません・・・・・なぜでしょう?』
「では、どのように”時の記憶”の部屋へ向かいましたか?」
『・・・・・えっ・・・・・・?・・・・・・・・記憶に・・・・有りません・・・・・・』
「恐らく、黄土様のパーソナルを”時の記憶”以前のパーソナルの上に移植・・いや、上書きされているはずです。」
『・・・・・・・・』
・・・・・黙っちゃったか・・・・そうだよなぁ・・・あの装置一見、凄いとは思うけど・・・・
・・良い言い方をすると、早期学習装置なのだが・・悪く捉えると・・洗脳装置だよなぁ・・・
・・だって、書き換える前のパーソナル・・・ほとんど上書きされる・・・意外にヤバイよな・・・
恐らく、側仕えが主の卵の欠片を元にするのも主と似た思考を持った個体にするためで、パーソナルの上書きをスムーズにさせるためなのだと思う。
『で・・では、以前の私は・・・?』
「恐らく上書きがどの程度の範囲でされたかによって、変質している部分や意味消失しているところが入り混じった状態になっているはずです。」
「つまり、以前の自分を自分と認識出来ない状態のはずです。」
『・・・・・・では・・・・・・・・今回の件で・・・もし、私が新しい体になった場合・・・今の私ではなくなると? ニック様はそうおっしゃっているのですか?』
「私は、それを防ぎたい一心で”時の記憶”にある装置を使いこなそうと思っているのです。」
「恐らくですが、あの書庫に有る記録ですが・・あれは・・誰かの・・いや、王子や姫など沢山のパーソナルを収めた場所なのだと思います。」
「つまり、あそこに有る記録に黄土様のパーソナルを保存出来るのでしたら・・・・・・・・・」
「新しい体を手に入れても黄土様ということになるのでしょう・・・・・」
・・・・主様が言っていた・・望む形にはならないが助かるとは此の事だろう・・・
『・・・でも・・それでも・・上書きで私と同じというのは・・・別の私なのでは・・?』
『・・・すみません。思考が混乱しています・・・私が私・・・・』
・・・・あー・・・それは、哲学なやつだから・・考えても無駄なんだよなぁ・・・
『ニック様・・私は・・・・私は私なのでしょうか?・・・・私は・・・・』
・・・あちゃ・・・混乱しちゃったわ・・・どうしようか・・・
・・・やっぱ、あれかな?・・・
「黄土様、落ち着いてくださいませ。」
『でも・・でも・・、今の私も以前の私ではなく・・・・もし新しい体になったとしても・・私では・・・』
「黄土様・・・・・・一つ、私が知り得る知恵がございます。」
『・・・・・・・・・』
『どのような?・・・・』
「私の知る国に、こんな言葉が有ります。」
Cogito ergo sum
『??コ・・・コギ・・?』
「ええ。 訳すと”我思う、故に我在り”となるのですが、今、黄土様が考えているような事を指します。」
「これは、自分が自分であると証明をする時に考えられた言葉なのですが」
「存在を証明出来ないものを順位消していくと、最終的に自分の存在も無くなってしまう事になるのです。 其の中で、自分を否定する事を思考しているのは紛れもなく自分であるので、自分は存在する。 と言う話しなのです。」
「ですので、自分が自分であると思う限り自分は居る・・と捉えてもらえると・・黄土様も気が安らぐのではないでしょうか?」
『・・・・・私は・・自分が自分であると思えば・・自分である・・・ですか・・・』
「そうです。」
「もし、亡くなる直前のパーソナルを記録できれば、新しい体へ書き込みをされた際、パーソナルを取り戻すわけですから亡くなったとは言えないのかもしれないですね。」
「すこし、強引な話で申し訳ないのですが・・・」
『・・・』
『ニック様。 其の話は、今すぐの事なのでしょうか?』
「いいえ。 私の方もまだパーソナルの記録が出来る事を証明していないため、不確定なのです。」
「ですので、黄土様がお元気で居る内に何とか技術を解明して使えるようになりますので、其の際にはお覚悟が必要です。という話だったのですが・・」
「少々、難しい話になってしまって申し訳ないです。」
『わかりました。 もう一度私自身で十分に考えてみます。』
「そうですか。 それでは、私はコレで、失礼いたします。」
「ご自愛くださいませ」
そう言って、俺は蜂妖精と部屋をでた。
・・・ってかさ・・蜂妖精さん・・・すごい通訳能力だな・・・・・・・
完全に黄土ちゃんの心情まで表現してた気がする・・・・・やるなぁ・・・
・・・あれ?・・・・・蜂妖精さん?・・・・・考え事ですか?
俺達が部屋へ向かうまで・・・ずっと、蜂妖精さんは考え事をしていた。




