大蛇との前戦
「おい、ロレイス!」
敵兵から逃げつつ、アファイスを手渡す。
後ろを振り向けば敵兵の軍隊がずらずらと並んでいやがる。
「和の国の者の様だな…」
敵兵の一人が、スフィアが言っていた台詞とまったく同じ様なことを呟く。
また、抜く。刀を。
「うぉぉぉぉぉお!抜刀宴舞!」
刀は舞い、敵の首や腕を貫き、血まみれになっても手元に帰る。
生きていて、生きていない…刀。
太陽が沈み、月が出る。
そんな上空に輝くのは刀の反射光。
「一人一人が弱い。もっと強い奴はいないのか。退屈すぎる。」
ふと呟くと意外な所から返答がきた。
「じゃあなんで、アファイスとあんたの友人が後ろで治療を受けているのかしら?」
「スフィア…」
後ろを振り向けば承太郎が倒れていた。
「なん、だと…」
言葉が出ない。
驚きと混乱が頭を包み込む。
もし、死んだら死んだら死んだら死ん…
頭の中の思考が停止。
そして、視界は真っ暗に、なるはずだった。
だけど…思考は停止させない。
信じる、願う。ロレイス達を。
「全軍かかってこい!うぉぉぉぉぉお!」
走り出す。塞ぐものは首を切り落とす。
返り血が目についても気にしない。
気にも留めない。気にも留めれない。
たった一つ…スフィアを止める。
たったそれだけに動いている。
その時だった。
「待って!まだ生きていたの!」
スフィアの叫び声と共に指差す方向を見れば亡霊たちがまた復活していた。
だけど亡霊は知らない。
自分の宿命、運命に逆らってまでも果たしていく。それが宿命。
運命と似て非なるものを目指す。
たったそれだけに刀は動く。
一心同体となって血が街に舞う。
「うぉぉぉぉぉお!」
ふと、飛んでいた。
あそこに見えるスフィアを目指すために。
少しづつ近く。
だが。
「エルピクス・グロエセス!」
スフィアが魔法を唱えた。
瞬間、自分の足元から黒い光が生まれ、自らに直撃する。
「ぐあっ!」
自分を動かす神経は言うことを聞かず、建物の上に墜落。
墜落の衝撃で放物線を描いたレンガが体にあたり、別の痛みが感覚を襲う。
「ぐはっ!」
その時だった。
あれは…
スフィアだろうか…
三つ巴か…
面白そうだ…
人に化けようでないか…
声の元は大蛇であることは直感で分かる。
だが、どこに。
見回してみたが、奴の姿は見えない。
「くっ…」
力強く煉瓦を叩く。
視線を上げれば…
「よう。殺しにきたぞ。」
人がいた。
間違いなく大蛇だろう。
「ボルケーボンバーの強さとしては3分くらい魔力をこめないといけないけど一発で半径15メートル…」
記憶の断片がよぎる。
「お前があれを貯める3分までに木っ端微塵に殺してやろうか。」
喧嘩を売ってやった。
「正々堂々と戦いたいのか。なら、ゴーストビレクトスは使わずにやってやる。」
向こうも喧嘩で返す。
「では、いくぞ。大蛇。」
刀を構える。
「三分間の間で倒してみるがよい!」
奴は後ろに飛ぶ。
すかさず追う。
「なかなかの…速さだな。」
大蛇も人を認める目は持っているのか。
正々堂々といえば正々堂々か。
「うぉぉりゃ!」
刀を回す。
ほんの少しかすれた。
残り百六十秒。
擦れ傷九発…無理か…
「ジョウタロウにアファイスも倒れるなんて、なかなか相手もやるわね。エシュク、アファイスの調子はどう?」
そうぼやきつつ、ジョウタロウの腕に回復魔法…ヒーリングを唱える。
だいぶ、穴も小さくなってきた。
「なかなか…ですね。死んでることは無いようですが、時間がかかりそうですね。敵軍が亡霊たちに気を取られているだけ良いところでしょうか。」
アファイスくん…
「しかし、ツバサくんは、なかなかの戦果を上げてるね。まあ、ロベルトには到底敵わないけどね。」
「ま、まあ…あ、アファイスが意識を覚ましましたよ。やりましたね。」
「うっ…。ここは…。」
アファイスがぼんやりとした目で回りを見つめている。
ふう、無事みたいね。
ジョウタロウくんを救わないと…早く。
遠くに建物の屋上を飛ぶ影が二つ。
あれは、いったい…
「さあ、あと百二十秒だぞ。間に合うのかな。間〜に〜合〜う〜の〜か〜な〜」
大蛇が挑発をしてくる。
だが、焦ってはいけない。
自分なりの調子を維持しねば。
「うぉぉぉぉぉお!」
煉瓦を蹴っ飛ばす。
大蛇が左にかわした隙を見逃さない。
「抜刀宴舞!」
今度はしっかり当たった。
腕に刀がめり込む。
「ぐっはぁ!?」
口から血を吐き出す大蛇。
主客転倒、形勢逆転。
「うぉぉぉぉぉお!」
身動きすらできなくなった大蛇は俺の攻撃を幾度となくくらい続ける。
「あと…七十秒たえる…」
ほう。七十秒か。
「七十秒とは簡単だな。くらい続けろぉ!」
ガシガシと血が吐き出る。
しかし、隙を作ってしまった。
「ツメが甘いわ!」
次の瞬間、大蛇は敵軍の兵士たちのいる下へ降りてしまった。
なぜだ。敵にはスフィアがいるはず。
大蛇…人…。
ちっ、そういうことか。
自分も下に飛び降りた。




