二つの銃声
刀を手に構えて向こうを待つ。
ドーンと向こうの大砲がなった。
瞬時、軍が一斉に攻めてくる。
「ルファイ、ファムル、スファル!」
スフィアが敵軍に指示をする。
あいつが総指揮官というわけか。
「こちらは軍を散らすぞ!」
ロベルトが総指揮をとる。
瞬時、前方に駆け抜ける。
その時、敵の変化に気づいた。
敵が一瞬だけであるが後ろに引いた。
確実に引いた。
恐れをなしているのか。
コイツか俺か。
どっちにしろ、勝てば問題ない。
「ウォォォ!抜刀宴舞!」
掛け声と共に刀を一回りして上に上げる。落ちてきたものを着実に掴む。
グァッ!
ギャア!
今ので十五ほど削れたか。
横目ではロレイスとエシュクが魔法で敵の進軍を抑えて、ロベルトとアファイスが力技で突破している。承太郎も隣について敵の戦力を削っていく。
青年団は分かれ逃げ道をふさぐ。
「あの男…和の国?侍?」
遠くでスフィアが呟いたのを聞き逃さなかった。聞き逃ししたくなかった。
和の国。
どういう意味だ。
侍は分かる。
後で首を捉えてやる。
戦場が二つの赤に染まり光が出始めたころ、大分スフィアに近づいた。
周りを見渡してみる。
承太郎は右腕に細長い怪我をしているが、気に留めていない。
ロレイスは青年団の一人を治療。
エシュクは治療中に敵が来ないよう足止めしている。
ロベルトと承太郎、青年団の一部は地下図書館を守っているらしい。
アファイスと俺がこの道で戦っている。
武装した敵の中に魔法を使うものはほとんどおらず、手に持った刀のような形をしたもので戦っている。
あれは剣だろう。
ロベルトが一時間ほど前に言っていたのが脳裏に浮かんでいる。
「アファイス。」
返り血によって血だらけのアファイスに言いたいことがあった。
「どうした。」
敵の首を落としながら返答する。
こっちも血だらけだろうな。
俺が愛用する刀を血の池に入れてやったのはいつぶりだろうか。
「ロベルトと承太郎…大丈夫か。」
そう。これが言いたかった。
「さあ。俺には分からん。まあ、でもしっかりやってると思うぞ。ロベルト兄貴ィもいることだし。」
なら、大丈夫か。
バン!
近くで銃声がなった。
まさか…
横を少しだが見ると、アファイスの胸から血が垂れていた。
「ぐっ…うっ。」
アファイス。
ロレイスなら治療できるか…
意識が僅かにあるかもしれないアファイスを肩に担いでロレイスの元に向かう。
くそ。間に合え!
「敵が多いっすね。ロベルトさん。」
ちょうど、近くに敵がいなくなったところで話しかける。
「ああ。青年団がいなかったらこんな会話できないかもな。ジョウタロウ!しかし、かなり敵は削れたかもな。」
剣をしまいながら言葉を返すロベルト。
「でも空がね…。」
ふと、見上げれば赤く染まっていた。
「それを言ったらお終いだろ。三つ巴の戦いになるのかな。」
返答しにくい。
「青年団。ここは二人でやる。別の場所に移動しておいてくれ!」
すぐそばにいる青年団に指示を出す。
あれ…指示が違ってない?
あいつは傷を癒してくれたはず…
「なあ、ロベルト。指示、間違ってないか?回復要員がいなくなっちゃぁ危ないぞ。」
勘違いを指摘してみる。
もちろん普通の声だが。
「それか?ああ、別に二人でも守れるくらい数を減らしただろ?」
周りを見渡してみれば敵の首…大量の流れ血や、斬られてうめき苦しむ敵の声…もう兵は六千ほどに減ったか。
「ああ。しかし、さっきの音はなんだったんだろうな。銃声…じゃないといいけど。」
「銃声…じゃないか。たぶん。そうだと願いたくないけど、願ったところで運命は変わらねえ。願う必要なんてないんだよ。」
理屈には合っているが…。
なぜだろう。
ここにきてから…ロレイスと会ってから…心が揺れ動いている気がする。
「承太郎!危ない!」
我に返った時には銃弾が迫っていた。
刀を抜く。
すぐに。間を置かない。
銃弾…捉えた…斬る。
刀が向かう。
その時、微妙だが確かな風が吹いた。
銃弾が横に行く。
刀との食い違いが生じる。
右にずれる。
だが。僅か、届かなかった。
左腕に食い込んでいく。
その分の痛み、血が出てくる。
ふと、意識が飛ぶ。
意識を保つ。
だが、負けてしまう。
運命には逆らえない。
もう、願わない。
「承太郎!承太郎!」
遠い夢の彼方。
かすかにロベルトの声が聞こえる。
願いたい。
だが願わない。
誓い、運命の揺らぎ。




