十五年の裏切り
「ごっつい船に大砲仕掛けられ、船は壊れるは、魚は逃げるは、こっちは痛いは、散々あってこうなったの!つーかよ、あんたら二人組誰だよ!」
こいつがロベルトか。
屈強そうな夫じゃないかよ。
「俺は桐生翼。こっちは小泉承太郎だ。気づいたらこの島に漂着してくれて、しばらく住ませてもらってる。悪いな。」
ロベルトが目線を下に向ける。
「別に住みたけりゃ住めばいい。んの代わり、そこにあるソードで敵を倒してもらえるならばの話だがな。」
「ロベルト兄貴ィ。そんなこと言っていいんすか?二人増えるっすよ。」
隣の男が話しかける。
「エシュクは分からんのか。それにアファイスも。こっちの戦力が増えればいいんだよ。別にな。」
「俺と承太郎が敵をぶっ殺すわけだな。」
「そういうことだ。外に出ろ。船が近づいているぞ。」
外に出てみると、軍隊がずらっと列を組んで並んでいた。
「あら、お久しぶりですね。ロレイス。まさか、こんな形で再開するとは思ってもいませんでしたよ。」
前方にいた黒服の女がロレイスに向かって第一声を発する。
前方、黒服。かなり偉い人か。
しかし、なぜロレイスのことを知っているのだろうか。
張本人のロレイス、ロベルトは驚きを隠せない表情を浮かべている。
「おい。お前、誰だ。」
自然と言葉が口から吐き出される。
「あら、私ですか?私の名前はスフィア・アレクシード。ここに住む人間を消しに来ました。だから名前なんて覚える必…」
「勝手に俺の力をなめないでくれないか。スフィア。俺はあの時にみたいに弱虫じゃない。強くなったんだよ。人間として、心として、強さとして。」
一つ一つ、噛み締めながらロベルトが反論していく。
ロベルト…
人は強くなり成長する…いや。
成長して強くなるのかもしれないな。
「一つ聞いていい?」
ロレイスが優しい口調で問いかける。
「ロレイスじゃない。どうしたの?早く言いなさい。」
なかなか偉口を叩くものだ。
武士の精神にはいっぱしというとこか。
「なんで…なんで!あなたは私たちを裏切ったの!」
さっきとは打って変わって感情を一つ一つ入込みながら怒り、呼びかけている。
ロレイス…
「私が旅に出る前に行ったことを覚えているの?私は、自分がどうなるか分からないけど、広い世界を見てみたいと、言ったはず。どうして、過去の私に愚痴をつけれるの?私にはさっぱり分からないわ。」
高い矜持をお持ちのようだ。
「でもよ、あんたは誰かに従われてここに来たんだろ?ここで戦うことに反論すら出来なかったのか。弱虫め。」
何か言いたい毒の気持ちが不可抗力となり言葉となり吐き出てスフィアに直撃する。
「あら、面白いわね。私は自分から望んでこの軍に入ったの。その中で力があっただけ。 反論したら追い出されてしまう。たったそれだけよ。何が弱虫なの?」
反論するがこちらからの眼にすると盲点を突かれたような感情を隠している。
「でもおまいさん、そんなんで弱虫と言わないのはただの矜持が高いだけじゃない?」
承太郎も俺の手助けをする。
「スフィア。親友だから言いにくい。いや、言いやすいのかもしれないけど…あなた弱虫じゃないと言い張る資格ないわよ。広い世界を見るためにはそのぐらい必要でしょ。それとも、十五年も経って忘れたの?」
十五年。
十五年もあれば人の性格というものは変わることはありえる。
「俺もロレイスに賛成だ。アファイスとエシュクもそう思うだろう。」
後ろの二人も頷く。
さすが三人組だ。
以心伝心。
「ロベルトと後ろの二人の三人組。ちょうど気づいたけど、私たちの大砲に撃たれたのね。無様な格好ね。」
鼻であしらいながらスフィアが告げる。
なんて、しゃくにさわるやつだ。
「おい、一つ言いたいことがある。お前は十五年の時を経て俺たちの正義とお前の正義は食い違ってしまったようだな!」
言いたいことを言えた。
もう言いたいことはない。
「あら。いい気味じゃない。なら、私たちとあなたたち。戦って決着をつけましょう。文句無いわよね?」
負けじと食いかかってくる。
「後悔しても知らんぞ。」
ロベルトが少しの怒りを込めて食いかかっていく。強くなった、か。
「エセツフム、タヌムヤリァム、ヌフツルヤフアイス。」
そんな話を無視してスフィアは黒服のお隣さんに話しかけていた。
こっちの言葉じゃないな。
向こうの言葉か。
「わかったわ。では戦いましょう。こちらの軍勢は一万五千。対してあなたたちはせいぜい十いていいところかしら?」
あえて高くなったであろう声が耳の鼓膜をツンツンと刺激する。
「いくぞ!ロレイス!ジョウタロウ!ツバサ!エシュク!アファイス!そして青年団!開戦だ!」
刀を構える。
さて、刀に血を浴びさせてあげようか。




