◆小さな写真部の復興3
いろんな意味で胸を高鳴らせながら、部室のある階へ急ぐ。
そして、その階の廊下へとたどり着く。
しかし、そこに誰の姿も無かった。
もしかしたら部室の中に居るかもしれないと思い、思い切りドアを開こうとするが鍵が掛かっていた。
「鍵取ってくるの忘れた……」
ため息をつき、再び職員室へと向かった。
職員室に戻り、鍵を借りてから部室へ行く。
階段を上った時、気配を感じた。
誰の気配かも分からないのに、待ち望んでいたものがそこにあるかのように惹きつけられ、思わず、部室へと続く廊下を見渡した。
先ほどより胸が高鳴る。
「よう……久しぶり……だな」
振り返ると、見知った顔がある。心臓が止まりそうなほど驚いた。
「木次川くん!」
思わず、抱きついてしまう。嬉しさ半分、逃げないようにするためでもある。
しかし、すぐに引き剥がされ、向かい合った状態で話を続けた。
「ごめん、俺のせいで……」
「いいよ……いいよ……全然、いいんだよ」
何を言ったらいいのか、思い浮かばなくて、変な感じになってしまった。
そんな私の反応を気にする様子もなく、
「あいつらまで巻き込んで……本当に悪かった……」と深々と頭を下げた。
「だから、いいって!」と相変わらず、掛けるべき言葉が出てこない私は同じような返事を繰り返す。
「それじゃ……それだけ、だから……」
そう言って、立ち去ろうとする彼。
その様子にかなり戸惑ったが、反射的に腕を掴み、引き止めていた。
「待って」
私のほうは見ずに、本音を話すかのようにはっきりとした口調で
「俺はもう辞めた。お前と話す義理もない。謝りに来ただけだから、勘違いすんな」と一息で言い切って、乱暴に手を振りほどかれた。
その言葉が信じられなくて、私は遠ざかる背中に語り掛けた。
「ねぇ、辞めたくなかったんじゃないの?退学を避けるために渋々そうしてるんじゃないの?」
それを聞いた彼は足を止め、こちらを鋭い眼差しで睨んで
「はぁ?なわけないだろ。つまんねぇんだよ。部活なんて」と伝える。
「でも、楽しそうにしてたじゃん!」
「楽しもうとはした。でも、楽しくはなかったんだよ。ちょうどいい機会だから辞めた。それだけだ」と冷たく私を突き放した彼は、また歩きだしてしまう。
「……」
返す言葉など、出てこなかった。
きっと、それは彼の本心ではない。
そんな気がするのだ。
でも、今の私ではどうすることもできない。
遠ざかる背中を、やきもきしながらも見つめることしかできなかった。
寂しくなった部室で一人、何をするでもなく一点を見つめていたが、ふと視界に入った部の勧誘ポスターが目に入る。
部員を集めなければ。
まるで使命のように腰を上げて、ポスター紙とペンを取り出した。
こんなことをしたって、きっと誰も来ない。
私は元のメンバーでまたやりたい。
そんなことばかり、頭に浮かんでしまって、筆が進まない。
「あぁ!もう!」
隣の美術部の部員が様子を見に来そうなくらいの声だったと思う。でも、校内やグラウンドの雑踏に紛れたようで、何事も無かったように孤独な時間が続いた。
大きな声を出して、少しすっきりした。
ぐしゃぐしゃにした髪を掻き上げ、ポスターを作り始める。
きゅっきゅっとペン先を鳴らしながら、筆を走らせる。
無我夢中で書き続けた結果、十五枚も作ってしまっていた。
十枚あれば十分なのに。
はぁ……
荷物を持ち、鍵を握り締め、扉を開き、無意識に振り返る。
残像みたいに残る思い出を振り払うように前を向いて、部屋扉を施錠する。
「部員を集める」
自分に暗示を掛けるように繰り返し呟いて職員室へ向かうのだった。




