■不明瞭な男の動機1
僕は考えていた。
あの少女に尋ねられてから幾つかの時間が経った。
写真サークルは相変わらず、のんびりとした活動を行う。
僕は一体、何をしたいのだろう。何の目的もなく、この場所に居ていいのだろうか。
モヤモヤした気持ちを抱えたまま、秋の連休へと突入した。
連休中、故郷に帰ることになっていた。
どこにでもある山間地域の小さな街。
小さいといっても、24時間営業のコンビニ、チェーン店のスーパーや衣料品店もある。
実家からだと少し遠いが、学校も高校まで揃う。
一生忘れないであろう過酷な日々を過ごした中学校のグラウンドも、一生忘れないであろう失態を経験した高校の体育館も、すべてこの街の風景だ。
そんな思い出がいっぱい詰まった、この街の土を踏むのは大学入学前以来だ。
「そういえば、大学はどう?」
地元の幼なじみが様子を見にきた。この街で就職し働いている。
「まぁ、なんとかやってる」
「あっ、カメラを始めたんだ?」
首から下げたカメラを覗きながら言う。
「おぅ…」
「へぇ~。あのタイチがカメラなんて意外」
「別に好きでやってるわけじゃ…」
決意を新たにした矢先、ついそんな本音が出てしまう。
もちろん本音を言えば、好きでもなく興味があるわけでもない。しかし、カメラというものを通して何かを見いだそうとしている自分がいる。複雑な心境に正直、戸惑っている。
「じゃあ、なんでやってるの?」
その質問とあの少女の質問が重なり、戸惑ってしまう。
「さ、さぁな……」と濁した。
その言い方が誤解を招いたらしい。
「はっ、もしかして……彼女ができたとか!?」
「で、できるわけないだろ!」と全力で否定する。
「ま、〈サヤちゃんとケッコンするの~〉とか言ってたくらいだから、浮気なんてしないよね~」
子供の頃の話を突然掘り返す。サヤちゃんというのは、ずっと近所に住んでいる“友達”だ。
小学生の頃から、この幼なじみと共によく遊んでいた。
「いつの話だよ…小学生低学年の頃の話だろ」
「サヤちゃん悲しむよ~そんなこと言ったら」
「そんなのもう忘れてるだろ。というか、ただの友達だし」
恋という言葉すら知らなかった頃の話。今となっては、本当にただの友達なのだ。
「一途に待ってたらどうすんのよ。ほら、行ってあげなって。この間、話した時は寂しがってたよ~」と、背中を強引に押される。
通い慣れた裏道を早歩きで通り抜け、彼女の家へと向かう。
今はこの街で画家として活動している。美大を中退し戻ってきた。バイトをしながら、美術展などに出品し続けている。
その活動の傍ら、非常勤ではあるが美術の先生をしている。この街の小中学校の美術教師をするほか、中学、高校の美術部の副顧問もしている。
インターホンを何の躊躇いもなく押すと、彼女の母親が迎えてくれた。小さい頃からお世話になっているため、まるで我が子が帰省したかのような歓迎を受けた。
本題を切り出す前に、居間へ通されそうになった。それを拒んだものの、せめて縁側でと譲歩され、最終的には僕の方から折れる形になった。
生ぬるい風が通り抜ける縁側。とても気持ちが良い。
お茶を頂きながら、早速彼女の話題になる。
彼女はアトリエとして使っているガレージに居るらしい。
適当に話を切り上げて、彼女と話がしたいと伝えて、その場を離れた。




