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断片7
仕事の傍ら、家族に会いに行く。いつも辛いのは別れ際。
夕陽が眩しい港で船を背にして、家族に別れを告げる。
妻と娘と・・・最近は口を聞いてくれなくなった息子。冴えない表情で家族と距離を置いて外方を向いている。
「次はいつ帰って来てくれるの?」
娘が私に尋ねる。
「来月のお前の誕生日には帰るさ」
「本当?」
そう聞き返す声のトーンは低い。
「あぁ。約束だ」
そう言って指切りをする。
以前もこんなことがあった。
運動会を見に行くと約束したが、結局仕事の都合で行くことはできなかった。
後ろめたく思う気持ちもあったが、どこかで楽観視していたのかもしれない。仕方がない、しょうがないと家族のことを二の次にしていた。
この件に関して、一切発言しない妻。仕事に関することと同様に、個人的な意見を言わない。その意図が良くわからなかった。
ともあれ、信頼を失っていることに変わりない。今度こそはと自分の中で言い聞かせて、今日の出発に臨んだ。
少しでも家族と関わろうと努力するが、疎遠にしていた分、関わり方が分からなくなってしまっている。
家族に歩み寄れないまま時間だけが過ぎてゆく現状に、歯がゆい思いをしながらも船に乗りこんだ。
「待っている人がいる」
使命感がそうさせるのだった。




