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ファインダー  作者: 福山直木
フィルム ~それぞれの活動報告~
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▲ついてないサラリーマンの苦悩7

家に帰り、写真集を見返していると見覚えのあった写真が載っていた。


その写真の発表は八年前だった。仕事の線で考えていたが、その可能性はなくなった。そもそも出版社が違ったのだ。

風景ではなく写真に見覚えがあるとするならば、当時の俺は中学生だ。当時を思い返してみたが思い出せない。モヤモヤして、気持ちが悪かった。


PCスクールの休憩時間にネットで調べた。二十年以上前から写真家として活動しているらしい。

例の写真の発表と同じ時期に賞を受賞していた。だが、それが何の写真だったのかまでは分からなかった。


何の期待もせずに、駄目元で妹に画像を送った。数分もしない内に電話が掛かってきた。

「私も見たことがあるような・・・・・」

やはり空振りだったかと諦めようとした瞬間、思い出したように彼女が声を上げた。


「これあれだよ!お父さんが写真を始めたきっかけの写真!」

それを聞いてもピンと来ない。

「そうなのか?」

「そうだよ!こんな巡り合わせあるんだね~」

興奮気味に答える。

「なんで俺、見たことがあるんだ・・・」

今度は悲しそうに答えた。その訳を知るよしもなかった。


「あれ、知らないんだっけ。写真なんて忘れちゃうか・・・。お兄ちゃんが最初にこの写真を出して来たんだよ。私やお母さんに毎日のように写真見せてきて、ちょっとうざかったよ。その後、家族で外食に行った時もそんな調子でお父さんが嫌いなことなんて忘れて、お父さんにすごいだろって自慢してたんだよ・・・自分の写真でもないのに」


話を聞いてやっと思い出したが、父のきっかけというのは初耳だった。当時の俺は居ないものだと考えるほど父を嫌っていた。父が写真を始めたことも気に留めなかったため、知らなくても無理はないのかもしれない。


話は続く。

「そのあと、すぐにお父さんはカメラを買った。理由を聞いても教えてくれなかったけど。そのころ、島でイベントを開こうって話があったから、広報用の写真でも撮るのかなとしか思っていなかった」


その頃の俺は写真なんて記憶から消え去り、部活に明け暮れた。部活が上手くいかなくなり、受験勉強も始まった。いろいろなことに追われた俺は、不満を抱いていた父のせいにし始めた。そこから、一切口を利かなくなった。


妹は話を続ける。

「お母さんにその事を聞いたら、笑って答えてたよ。シュウが興味を持ってくれるかもしれないから、写真家を目指すんだと言い張ってるって。写真に嫉妬してたんだろうね。父の偉大さを見せつけてやるんだって、無知なのに背伸びして高価な一眼カメラを買っちゃって私に使い方聞くのよなんて、楽しそうに話してた」

胸が締め付けられるようだった。


「あのときはちょっと家族の雰囲気が明るくなった気がしたなぁ」

その一言にとどめを刺された。涙が次々とこぼれた。

父の想いに気づけなかったこと。妹に悲しい思いをさせたこと。そして、何より家族の雰囲気を乱してしまったこと。後悔してもしきれないほどの過ちが明らかとなり、自分の未熟さを思い知った。


「お兄ちゃんは悪くないから・・・。大丈夫だから。知れて良かったね。本当のこと・・・私も忘れてたんだよ。先生に感謝しなきゃね」

妹はなだめるように電話越しで話を続けた。

「ありがとう・・・それと、ごめんな・・・」

電話の最後、泣きじゃくりながら精一杯伝えたいことを伝えた。


父に一切口を利かなくなった後、無事高校生になった俺は勉強もそこそこ頑張ったが、部活で故障してしまいグレていった。それと同じくして母は入院。さらにグレてしまいそうな時に、妹から手痛いビンタを食らった。妹の溜め込んでいたものをぶつけられたのだ。

それで改心した俺は、一生懸命勉強して現在に至る。


数日間は頭の整理をして、これからのことを真剣に考え始めた。仕事との兼ね合いも考えながら、どうするのがベストなのかを考え続けた。

迷いもあるし、不安もある。だが、心の奥底に根付いた感情が俺を突き動かすのだった。

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