表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファインダー  作者: 福山直木
フィルム ~それぞれの活動報告~
31/74

▲ついてないサラリーマンの苦悩6

妹の一件以来、ずっと頭の中で考え続けていた。

今の生活を続けたい思いもある。今の仕事が嫌いではないし、徐々に面白く感じ始めている。とはいえ、父の診療所を継がないわけにもいかない。

いろいろ不満はあるものの、父が家庭を支えていたことに変わりない。嫌悪感ばかりが先行して、今まで親孝行をしてこなかった自分を悔いている部分もある。

常に考えているが、同じような自問自答が繰り返されている。


妹からもらったチケットを無駄にしてはいけないと思い、写真展に行くことにした。


美術館なんて何年振りだろう。電車で一時間ほど掛かる郊外に目的地がある。


≪大石達也 写真展≫

という立て看板が立てられている。まったく見たことも聞いたこともない。しかし、多くの来場者で賑わっていた。


展示室に入るなり、桜の大樹が迎えた。

写真というものを芸術作品として見たことがなかった俺には、様々な形で切り取られた風景がまるで絵画のように思えた。

その中にひとつ、見覚えのある景色があった。しかし、どこの景色なのか思い出せなかった。

思いを巡らせていたため、不注意で女性とぶつかってしまった。若い女性だった。

「すみません・・・考え事してて周りをよく見ずに歩いてました・・・本当にすみません」

「いえ・・・私も考え事していましたから」

女性はびっくりした表情をしながら、自らも謝った。


それ以上言葉は交わさずに、それぞれが付かず離れずの距離感で順路を進んだ。

俺が先行なら写真に見入っているふりをして追い抜いてもらおうとしたのだが、俺の前には彼女がいる。足早に去ることも立ち止まることもないため、追い抜こうにも抜けない。

結局最後まで、集中して展示を見ることは出来なかった。先に見終わったあの女性は帰っていった。


ブースの外に物販スペースが設けられていた。興味本位で売り物を眺めているとポストカードに目が止まった。。こんなものが売れるのかと思っている俺の目の前で次々と売れていく。

人は結構いるが、手ぶらで物販スペースを去る人は皆無。なにか買わないといけない空気が流れているため、辺りを見回すと写真集があった。仕事柄、内容を問わず出版物に敏感に反応する。

今後の仕事の参考になるかもと、根拠のない動機で様々な本を買うようになってしまった。

無駄遣いと思いながらも選択肢はない。迷いなく購入して美術館を後にした。


無趣味には変わりないが、写真の魅力を感じられたような気がした。だが、父の件を決めきれるほどの心の整理は出来なかった。

この写真展を考えるきっかけにしようとしていたのだが、そう簡単にはいかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ